小悪魔の様子がおかしい
ミ-ンミ-ン ミ-ンミ-ン
蝉の鳴き声が反響する。夏の日差しはアスファルトを燃えるような高熱にさせる。この2つの相性の悪さといえば最悪だ。
30分だけの通学だが、学校に着く頃には額には汗が光っていた。しかしこの暑さもまだまだ序の口、気温はこれからもっと上昇する。それを考えるとゲンナリした。
ガラガラ
「よう佐藤、おっすー!」
「おお。おはよう、田中。白石さんは…今日も来てないの?」
春先は毎日登校していた小悪魔だったが、ここのところはなぜか欠席が目立っている。本人は夏バテとのことだが…
「たぶんそうじゃね?あの子来る時はいつも早いし。あーあ、せっかく白石ちゃんと隣になれたのになー」
最近席替えが行われたんだが、
俺と小悪魔はまた隣同士になった。と言っても、通路を挟んでだが…。
「お前も白石ちゃんがあんな感じじゃ心配だろ?仲良いし」
「え?いやまあ心配っちゃ心配だけど…。別に仲良いってほどじゃ…」
「そうなのか?お前と白石ちゃんがよく一緒に帰ってるって話聞くぜ?しかも付き合ってるんじゃないかって」
「…!付き合ってるって…そんなわけないよ。第一俺は彼女に興味なんて…ないよ」
そうだ、俺は別に小悪魔のことなんて…。第一彼女もそんなこと思ってもいないだろう。
「ふーん…まあいいけど。お、佐藤。先生来たぜ」
そうこう考えている内に一時間目の授業が始まる。今日も長い一日のスタートだ。
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ようやく4時間目の授業が終わり昼休みの時間だ。俺は食堂で田中と昼飯を食っていた。
「そういや、佐藤。もうすぐ体育祭だな」
「ああ…昨日先生が言ってたな」
「お前、種目なにすんの?」
「うーん…決めてないけど、まあ何でもいいかな。走るのは苦手じゃないし」
「俺も。部活で目一杯鍛えられてるからなー」
体育祭か。高校に入ってはじめてのイベントだ。しかし小悪魔は何の種目に参加するんだろうか…。今日の夜にでも聞いてみるか。
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はぁ〜今日も疲れたな。数学、本当にわからないけどやばいよな…。
あ、そうだ。小悪魔に連絡するんだった。…そういや俺から連絡することって初めてかもしれないな。
えーと…なんて送ろうかな。
『おっすー。元気〜?』
…ちょっと適当過ぎるか…。
『お疲れ様です。体調が悪いそうですが、いかがお過ごしでしょうか?』
…流石に堅いな。
『こんばんは、体調は大丈夫ですか?』
こんな感じでいいか…。よし、送信っと…。
メールを送信して2、3分後、彼女から返信が来た。
早いな…。
「『やっほー!佐藤君から連絡してくるなんて珍しいね!体調は大丈夫だよ〜明日は行くつもりだよ。もしかして寂しかった?』」
…そんな訳ないだろ。
「『まあうるさい人が2日続けて休んだらそりゃ寂しくも感じるよ。』」
「『えー!何その言い方〜。酷くない?』」
こんな感じでメールのやり取りをしていると、彼女からこんな返信がきた。
「『あ、そういや今って時間ある?良かったら電話で話さない?』」
…電話のお誘いだ。うーん…実は俺女の子と電話したことないんだよな……どうしようかと考えてるうちに、
ブ-ブ-ブ-ブ-
電話がかかってきた。…いや、こっちの都合は無視かよ! まあかかってきたのは仕方ない。俺は電話に出ることにした。
「もしもし〜、聞こえる?」
「うん、聞こえるよ」
「佐藤君と電話するのって初めてだよね〜何か緊張しちゃうな」
また思ってもないことを…
「体調はもう大丈夫なんだね」
「…うん、まあ…大丈夫だよ。夏にちょっと弱くてさ、あー全く、嫌になっちゃうよね〜」
「そんな状態で体育祭は大丈夫?来月開催らしいけど」
「あ、そうか!もう体育祭か〜!うん、なんとか頑張るよ!走りには自信があるんだから」
「この僕を捕まえる脚力を持ってるんだから、頑張って貰わないとね」
「でしょ〜?佐藤君もなかなかだったけどねw お互い一位目指そうね!」
「うん、そうだね」
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そんなこんなで話してる内に数時間が経過した。
「それでね〜……あ、もうこんな時間。そろそろ寝なくちゃ…」
既に日付は変わっていた。
「ほんとだ、そろそろ寝ようか」
「うん、それにしても佐藤君と話してるとすぐに時間過ぎちゃうな〜。今日は楽しかった。また電話しようね」
「うん、またしよう。それじゃあ、おやすみ」
「うん…」
俺が電話を切ろうとした時、
「あの、佐藤君!」
小悪魔が呼び止めた。
「え…どうしたの?」
「……いや、なんでもないや。ごめん、明日は遅刻しないようにね?」
「それは白石さんもだよ。それじゃあ、本当におやすみ」
「…うん、おやすみ」
…最後は何か様子がおかしかったな。まあ、大したことじゃないだろう。思った以上に元気そうで良かったな。さて、俺も寝るか。
小悪魔の異変に気付けなかった俺は、そのまま眠りについた。