命名迷宮子
救急救命士という職業柄、命の尊さに、人一倍浸ってきた。
人の名前というものは、その人の土台や基礎を作り、印象の一部にもなる。
結婚して10年、僕たちの間にも、ようやく新しい命が舞い降りた。
人生のなかで、人のために何かをして、少しでも助けになる。
その面では、救命も命名も神経が擦りきれてもいいほど重要なものだ。
第一子に名付けるという、今までにない状況に、プレッシャーはかなりのものがある。
この五文字にも満たない言葉で、人生の一部分が決まってしまうのだから。
僕は人生で一番考え、一番悩んだ。
そして、娘に[ライ]と名付けた。
命という意味のライフから取って[ライ]。
僕はこの名前が、とても気に入っている。