交響曲第5番「運命」 序章〜ひょんなことから転生してしまった〜
初めまして黒雹です。
誤字脱字や、感想を聞かせていただけると幸いです。
西暦2040年20時半池袋駅前にて
池袋の人々の喧騒の中俺こと立花瑠衣はひっそりとピアノを奏でていた。人々は俺のことなど眼中になく、辿々しい音楽を哀れに思った人が100円を入れてくれる。俺は一生懸命に演奏するが帰ってくるのは嘲笑する声とお金を受け取るために申し訳程度に作られた箱に入れられる、極少量の硬貨と大量のごみ。
そう。俺は売れない音楽家だ。親に見栄張って周りの人から笑われる人間社会のゴミの様な存在だ。俺はただ帰るあてもなく闇に紛れる様にしてまた今日も一日生き延びることが出来た。あと何回これを繰り返せばこの生活から抜けられるのだろうか。そんなことを逃避気味に考えつつ俺は泥の様に深く眠った。
…鳥が鳴いている。朝だ。また憂鬱な1日が始まる。俺の寝床のそばを登校、又は通勤する人々が通っていく。その度に哀れな目と汚物をみた様な、いや、みた目で見られる。
ちょうど8時ぐらいだろうか。小学生が登校しているのが目の端に映った。全く注意せずに赤信号を渡っている。学校に遅刻してしまうのだろうか。しかし、焦っているのは子供だけではなかった。大型トラックが猛スピードで道路を走っている。この先の展開は想像できる。小学生は撥ねられて命を落とすだろう
哀れだと思い見過ごそうとすると、不意に俺の今までの人生が思い出された。
俺は幼少期からピアノを習っていた。
当時はコンクールなどでも優勝し、プロは間違いないだろうと言われるほどの神童だった(自分で言うのもなんだが)。しかし中学でいじめられて引きこもりになる。ピアノは続けていたが人と関わらないことで表現力が乏しくなり、勉強もしてなかったため、人生は転落
に向かって行った。そんな俺よりもあの未来ある子供助けた方がいいのではないか。
そこからの行動は早かった。自分の体が勝手動き、普段の体の動きとは比べものにならない速さで小学生を突き飛ばした。そのまま走り抜けようとしたが、俺は運悪く小石に躓き地面に這いつくばってしまう。その時にはトラックは目の前に来ていて…
視界が真っ暗になった。
どうやら俺は死んだらしい。そのまま意識が遥か彼方へと飛んでいった。
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目が覚めるとそこはベッドの上だった。
しかも周りには赤ちゃんをあやす道具みたいなものが付いている。思わず、声を出そうとする。
「あーぁあ〜あ。」
としか声が出なかった。しかもいつもよりだいぶ高い
どうやら脊髄を折って声が出せなくなった様だ。
いや、それにしては声が高すぎるし、そもそも赤ちゃん用の玩具なんで置いてない。と言うことは考えられることはただ一つ。
俺は転生した。
主人公の命運はいかに。転生先はどんな世界でしょう。