ネズミの陰
密輸事件の翌日。仕事が終わり灯台へと戻った俺は強引に酒場へと連れ出された。もちろんその犯人はレナだ。
「太平にゃんって思いのほか頭がいいのにゃ。これで少しにゃあの面目もたつのにゃ。」
すでに酔っぱらっているレナは思いのほか口が軽い。というより本当はおしゃべりなのを無理に我慢しているのだろうか。店の男は昔、王国のお金を管理する立場にあったらしい。しかしそのお金を横領し失職、いまはこの国にいるマフィアの資金管理などをしているのだという。
「こんなところでもマフィアなんているんだなぁ。」
「もちろんいるのにゃ。今回の事件にも絡んでいるのにゃ。」
酒に飲まれた猫から聞いた話をまとめると、どうやらこの街には「ネズミ団」といわれるマフィアがいるのだという。ネズミの獣人、通称ネズ公が取り仕切っており、密輸や禁制品の売買など様々な犯罪にかかわっているいて、あの魔草はその一環だったのだろうという。
しばらくして、レナのほうは完全に寝落ちしていた。なんともいえない目でレナを見てやるが、気持ちよさそうに眠ったままだ。そんな寝顔を見ていると、ポンとレナの頭に手が置かれた。
「ん?」
その手の先にはレナと瓜二つのレイが立っていた。
「私もかまわないか。」
「ええ、大丈夫です。」
レナを挟んで俺はレイと話し合う。こう言ってしまってはあれだが、レイはレナと違って無口だ。
「お前は酒を飲まないのか。」
「ええ、飲まないですね。」
「そうか。」
それからしばらく、お互い沈黙したままだった。これだけの時間をかけて俺は水が一杯とおつまみのチーズぐらいだが、店員も来るわけでもなくただ沈黙した時間を過ごした。
店を出た俺は灯台に続く道を歩いていた。レナは私が連れて帰るから帰ってもいいといわれ、店の支払いもレイが持ってくれることになったのだ。それにしても夜の繁華街を歩くのは初めてだ。種族、性別問わずにそれぞれが酒を楽しんでいる。そういえば、今日は十日ごとの海事組合の給料日であり、聞いたことのある声が大声で歌を歌っているのも聞こえる。俺も一応給料はもらってはいるが、特に使うようなこともなく部屋にそのまま置いたままになっている。
「おわっ!」
それはいきなりのことだった。俺は建物と建物の間に引きずり込まれ、そのまま地面に引きずり倒された。見上げると、そこにはフードの人型が二ついて俺の耳元にささやくように問いかけてきた。
「魔草60箱。どこであの情報を手に入れたんだ。」
「はあ?」
俺は間抜けな声を上げる。いまいち状況ができない。酔っぱらっているわけではなさそうだ。俺が相手の真意を理解できずにいると奴らは腹に蹴りを食らわしてきた。
「うぐっ!」
「あの情報は、いったいどこで手に入れたんだ。」
「・・・。」
俺には何も答えることができない。そもそもわけがわからないのだ。
その後、俺はその二人組にぼこぼこにされた。一人の足にしがみつけば背中を蹴られる。こっちが蹴れば馬乗りになって殴られる。俺の意識がなくなるまでこの暴行は続いた。




