2
カーテンが開かれ、眩しさで意識が現実へと戻されていく。
「おはようございます、お嬢様。」
小さい頃から機械のようなメイドは、今朝も変わらず淡々と仕事を行う。
大変目覚めの悪い朝である。
なんでこんな夢見たんだか。
あの日の続きは知っている。いつものように両親は帰ってこず、ひとりベットで泣いた。次の日から私は、両親に期待することもやめ、演じることもやめた。
どうせ何をやっても変わらないなら、何もしなければいい。
期待を裏切られるよりも自分の殻に閉じこもるほうが傷つかなくてすむのだから。
そんなこんなでいまの引きこもりで堕落したお嬢様の出来上がりである。
「朝食はいかがなさいますか。」
「・・・いつものように部屋で食べるわ。」
メイドは私を簡素なドレスに着替えさせると朝食の準備を行うため部屋を出ていった。
「うーん・・・今日は何の本を読もうかしら。」
昨日から読み始めた冒険記もなかなかに面白いではあったが、今の彼女の気分ではなかった。
夢のせいで憂鬱になった気分を変えられるような本が読みたい。
「・・・そうだ。最近街で人気の恋愛小説でも読んでみようかしら。」
そうだ、そうしよう。恋愛はしたことはないけれど、女の理想が詰め込まれたような小説はやはり楽しいに違いない、よし、朝食を食べたら書庫を探してみよう。
なかったら、街に降りて探しに行こう。
とりあえず、今日の予定が決まってすこし気分がよくなった私の耳に高い声が入ってきた。
「お父様!今日は一緒に馬に乗って出かける約束でした!」
「ははっ。そうだったな、朝食を済ませたら準備をして近くの湖まで出かけよう。」
部屋の外からは六年前に生まれた弟の声が聞こえてくる。