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25.包囲網、突破


「なにが近づいてるって?」

 全員、ぷっとタバコを吹いて踏み消します。

「クマか?!」

 みんな、銃に装填。

「先生! みんなこっち来て!」

「そっちが来てくれ! ヘビ守って」

「クマかよ!」

 猟協会全員で沢に飛び込み、ヒドラの死体に駆け寄ります。

 沢に流れて行った血の匂いを嗅ぎつけてヒグマが接近してるのかもしれません。

 ヘリコプターが高度を上げます。

 僕もM870に薬室一発、弾倉二発のスラッグをフル装填して銃口を上に向けて気配をうかがいます。暴発防止にアクションロックバーを押してフォアエンドを数センチほど手前に引いてあり、撃つときは前に押し出して構えることになります。


 ざざっ。

 岸の草むらからなにか顔を出しました。

 キチキチキチキチキチキチ……。


「クモ……?」

 蜘蛛です! 巨大です! 紫色です!

 全長70センチはありますか?!

 こんなでかいクモ見たことがありません!

 二匹、三匹、六匹……。取り囲まれました。十匹以上いるのかも!

 口の前の横に広がった牙みたいなものをクワガタみたいに閉じたり開いたりしてキチキチキチキチって音出してます。威嚇でしょうか。


「う……うわわわ!」

「し……シン! これ撃っていいのか!?」


 こういうとき、どうしたらいいかなんてとっくに僕の腹は決まってます!


「撃っていいです! 撃って!」

 ドガンッ!

 ドッガーン!

 ドッコーン!

 ダーン!

 ターン!

 ドッコン!

 躊躇(ちゅうちょ)なく全員が一斉に発砲!

 僕のスラッグ弾が一匹のクモを捕らえ、爆発するように体が吹き飛びます!

 ジャキッ!

 すばやくフォアエンドを前後させ、次っ! ドガンッ!

 一瞬遅れて、みんながライフルのボルト操作して次々とクモに弾を撃ち込んでいきます!


  ターン! ターン! ターン!

  オートのBARを使う榎本さんが連発します。

 その間に僕も次々と再装填し、連発します!

 バキッ、バキバキバキッ!

 ヒドラの後ろから木立を踏み倒して大きなやつが現れました! 一匹だけ!

 大きいです! 牛より大きい! ヒドラの死体に乗り上げます!

 なんだこいつ!

「みんな車まで走って!」

 ぎゃああああ。

 先生たちスタッフがランクルまで走っていきます!

 僕らもそれに続きます。全員走りながら弾込めします!


 蝦夷大スタッフ、車に乗り込み、まだいたクモを踏み潰して走り出しました。

「おじいちゃん乗って!」

 おじいちゃんがジムニーの助手席に乗り込みます。窓からレミントンM700を突き出して追ってくる巨大クモに牽制の発砲!

 僕も三発のスラッグを全弾ぶち込みます!

 巨大クモの手足、胴が弾けます。まだ動けるようです!


 僕らがクモの牽制している間にみんな会長のランクルに乗り込みました! ランクル広いですからね! 重装備でも四人乗れます!

 僕もジムニーに乗り込んで発進します。会長のランクルが先行、僕のジムニーが続きます。

「おじいちゃん後ろは?」

「追ってくる」


 200メートルほど引き離したところで無線で全員に指示。

「止まって!」


 会長のランクル、ジムニーが横向きに並んで停車します。

 車からの発砲は違法ではありません。違反になるのは道路上からの発砲、動いている車からの発砲です。牧草地で停めた車からなら発砲できます!

「ここで待ち構えて撃ちます!」

 

 傷ついた2メートルを超える巨大クモが手下の小さい70センチのクモたちを引き連れて接近中。

「車から降りないで、鉄砲窓から突き出して射撃、できますか?」

「やるよっ!」

 全員返事します。

 それぞれ銃にありったけの弾を再装填、僕と会長はハンドル握ったまま。

 ジムニーの助手席からおじいちゃんが銃を突き出して狙います。

 ランクルからも助手席と後部座席から、清水さんと戸田さんのベテランコンビが銃を突き出してます。


 ドッガーン!

 清水さんから射撃はじめました。

 ドアの窓枠に肘を固定しての精密射撃です。大蜘蛛の頭が吹き飛びます。

 どたっと落ちる巨大クモ。


 ダーン!

 ドッコン!

 おじいちゃんと戸田さんが次々に小さい方のクモたちを撃ち飛ばします。

 20メートルまで接近してきた最後の子蜘蛛。

 ダーン!

 おじいちゃんが頭を吹き飛ばして、動かなくなりました。


 ……。


「クマじゃないだろ。クモだろこれ……」

 いやたしかにそうですが。

 これ地球のクモですかね?

 どういうことなんですかねえ……。


「様子見ます。銃構えたまま待機お願いします」

『もう弾がねえよ』

 無線で返事来ます。まあ、猟ではありったけの弾全部持ってくるなんてしませんもんね。一人五発とか十発ぐらいしか持ってきません。

「残弾ある人」

『清水、あと5』

『長門、あと6』

『戸田、残弾2』

『榎本、残弾ゼロ』

「中島、残2」

「シン、スラッグゼロ、バックショット10」


 バラバラバラバラバラバラバラバラ。

 上空のヘリコプターうるさいです。

 五分ほど待ちましたが、動きがないです。

 全部撃ち獲ることができましたかね。


「もう大丈夫じゃないか?」

 会長がランクルの運転席から顔を出して大声で叫びます。

「そうですね、接近しましょうか」

 全員車に乗ったまま、子蜘蛛を避けながら、大蜘蛛まで接近します。

 そろそろと微速運転です。

 大きいクモ、体のあちこちを撃ち飛ばされ、破裂して、頭が吹き飛ばされて動かなくなってます。

 ……大きいです。牛二頭分ぐらいはありますか。

 なんでこんなクモが町営牧場に出るんですか……。

『中島くーん! 中島くーん!』

 無線から宮本先生が呼んでます。

「どこにいます?」

『はまった。動けない!』

 なにやってんすか。やれやれです……。



 排水溝で脱輪して動けなくなってる先生たちのランクルを、会長のランクルで引っ張り出してから、全員でクモ見に行きました。

「クモの死体踏み潰さないで!」

 これも新種の動物ですか。熱心ですねえ先生……。

 もう大蜘蛛のところで勝手に車から降りてあちこち調べています。

 僕もジムニーから降りて、まだ残ってるバックショット、M870に装填して銃口を上に向けて警戒ですね。

「こんなに撃たなくてもいいじゃないか!」

 あちこち撃ち飛ばしてしまいましたからねえ。スプラッタなことになってる大蜘蛛みて先生がもったいないとばかりに怒ります。

「まあしょうがないですよ。虫って手足ちぎれたぐらいじゃ全然平気ですし、頭むしってもしばらく動いてるでしょう」

「それにしたってグチャグチャだよ……。銃って強力なんだね」

「シカ撃ったってこんなふうにならないですよ。虫だからじゃないですか?」

「そうなのか?」

「虫って外骨格ですからね。弾丸は音速超えてますから、着弾した衝撃波が閉じ込められるので爆発したみたいになっちゃうんじゃないですか?」

 Gun雑誌にもよく載ってますが液体の入った缶とかスイカとかポリタンク撃つと裂けて爆発します。あれとおんなじなんじゃないですかね。

「そうか外骨格か!」

 先生もスタッフも大興奮しています。無理もないか。

 スライム、巨大ヒドラ、そして牛より大きい巨大クモ。もう研究材料としては最高の素材でしょう。


「先生」

「ん」

「これなんなんです」

「わかるわけないだろう」

 ですよねー……。


 沢のほうでドーン、ドーンって銃声します。

 会長たちがヒドラを見に行ってたんですが、クモ、二匹残ってましたか。

「あああああ、また撃った! チクショー!」

 いや撃たないわけに行かないでしょ先生。アレ生け捕りとかやってる場合じゃないんですけど。今日はヒドラで我慢してくださいよ。


 当然、このことは大騒ぎになりました。




次回「26.自衛隊、出動」

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