思い出の中のコンビニで。
お久しぶりです。最後に記載してから何ヶ月も経ってしまいました。どうも最近、書き始めることができなくなってしまい…
本編は短編です。とても短く、すぐに読み終えられます。
思い出の中のコンビニで。
《もし、幼少期によく遊んでいた仲のいい友達__所謂幼馴染み__に再会できるとしたら、貴方はそれを望みますか?》
……望まないだろうな。適当な本を開いて、たまたま目に入った文章を、くだらないと一蹴して棚に戻した。恋愛小説を見るのは別に嫌いでは無い。だが、内容が薄っぺらく、なんの捻りもない話にはもう飽き飽きだ。
もう何度聞いたかもわからぬくらいの店員とチャイム音による客への送往迎来をBGMに、私は商品を選び始めた。仕事帰りに半時間近くコンビニに居座る。品物を購入するかどうかに時間を費やしているのではなく、ただただぼんやりと、店内を見て回るのだ。最終的にはきちんとなにかしらを買って帰るのだが、やはり迷惑……というより異常なことらしい。現に、日常と化したその行為を異質の目で見てくる店員はかなりいる。
「会計、お願いします」
「……あっ、はい。計五点、合計で九百二十六円になります」
財布から千円を取り出して金を払い、いつも接待をしてくれる店員から品物を受け取っていつも通りにレジから離れようとした。
「あの、なんで毎日ここにくるんですか?」
「__理由がないと言ったら嘘になりますが……言うほどのものでもないんですよ。ただの思い出浸りといったところでしょうか」
よくわからない、と言った様子で首を傾げる目の前の若い店員にとりあえず言葉をかけた。
「毎日お疲れ様です」
「いえ……ありがとうございました」
店から出た私は、帰路につく。
「思い出浸りか……何か違う気がするんだけれど」
歩きながら、先程見た恋愛小説を思い出した。
「くだらない、ねえ」
だらだらと昔の思い出を引きずっている私が、それを言える立場なのだろうか。
……望まないだろうな。
暗闇を照らす、眩しい月を見上げて考えながらその言葉の先を紡いだ。
きっと私は、あの人と再会することを望まないだろう。幼かったあの頃の記憶はもう頭の中に半分も残っていないのだろうけれども、その半分にも満たない記憶が意味もわからないくらいに美しく、儚く、そして尊く感じるからだろうか。その記憶に、蛇足をしたくない。
あの人とはかなり仲が良かったように思う。互いに悪い印象を持っている感じもなかった。だからこそ、思うのだ。今の捻くれた自分を見て、失望してほしくないと。
別の理由もある。加えると、仲が良かったというのは主観なため、実際に相手がどう思っていたのかなんてわからない。今更になって、実は嫌いでしたとか煩わしいと思ってましたとかカミングアウトされると、その美しい記憶はただの苦しい記憶に変わってしまう。
それだけは、嫌だった。
あの人との記憶を、辛いものとして、苦しいものとして扱うなんて嫌だった。直感だけれど、あの人と過ごした時間はそれほど楽しかったのだろう。それに蓋をしたくない。まぁ、全く覚えていないのだけれど。
覚えていない__? ああ、そうか。だからこそ、あの人との思い出が詰まったあのコンビ二を毎晩訪れているのだろう。要するに、思い出浸りではなく思い出探しだったのだ。
あの記憶に一番残っているコンビニで、あの人を思い出すかのように、店内をぐるぐると回って。じーっと居座って。ぼんやりと外を眺めて。人の声とチャイムの音に、敏感になるように耳を澄ませて。
兎に角今日も、飽きるような恋愛小説のページをめくる。
お読みいただき、ありがとうございました。
次がいつになるのかわかりませんが、性格的にどうも長編は合わないようなので短編を幅広く書くことになりそうです。