表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ある研究の広告

作者: 白夜いくと
掲載日:2017/05/09

 男は金に困っていた。30半ばで最近バイトをクビになり、残っている金は財布の中にある580円だけである。これでは今月の家賃や光熱費も払えない。

 

「生活保護でも申請するかな……」

 

 そう呟きながら寂れた商店街を歩いていると、道端に地方紙が落ちていた。男はそれを拾い上げて最近の情報を確認する。世の中はGW。○○フェスや○○物産展などの情報が多くを占めていた。

 

「みんな金もってるなぁ」

 

 しばらく新聞を羨ましそうに見ていた男だが、ある広告を見つけた。それは、「臨床研究」の応募であった。内容は、「何もない青い部屋で一日過ごせたら1000万円」というものだ。男は驚いてその数字をもう一度数えなおした。


 「たった一日で1000万か。やってみる価値はあるかもな」


 男は新聞の地図を頼りに、目的地の病院へと向かった。そこはこじんまりとした、3階建ての、所々に赤錆のある薄気味悪い病院だった。今にも「出そう」な雰囲気だ。

 男が中に入ると、中年の白衣を着た男性が、嬉しそうに彼を迎え入れた。

 

 「もしかして、広告を見て来てくれたのかい」


 「はい。俺は健康で、我慢強いほうです。一日なんかあっという間に終わると思いますが、本当に1000万貰えるんでしょうか」


 「もちろん。だが本当にいいのかね?親族にはこのことを言っているのかい」


 「たった一日だけなんで何の連絡も。とにかく早く実験がしたい。部屋に連れて行ってくれ」


 「……わかりました。では案内いたしましょう」


 キィイ――


 重い扉が開かれる。中をのぞいてみると、本当に何もない原色の青い部屋があった。窓も、内側から開けるドアノブもなかった。勿論天井も真っ青である。


 「たしかに辛そうだが、たった一日。我慢しよう」


 「では、研究をはじめますよ」


 扉は閉められ、ガチャリと施錠された音がする。それが男の聞いた最後の音であった。足音は聞こえない。遮音にも優れた部屋なのだろう。


 「うわ。真っ青だ、気分が悪くなってきたぞ。こんなときは目を閉じればいいんだ。そうすれば俺に見える色は黒だ」


 男は目を閉じて時が経つのを待った。しかし、何度眠っても一日が経たない。


 「こんなにも一日が長いとは……、やっぱり1000万の価値はあるな。それにしても、やけに寒い気がする。一体今何時なんだ」


 「あぁ、起きたら青青青。目を閉じても青が焼きついて離れない」


 「眠れなくなった……。今の俺はどんな顔をしているんだ」

 

 「おーい、ここから出してくれぇぇえ!!」


 場面は切り替わって、研究室の中で中年の博士と助手の男がその様子をモニターで見ていた。


 「4日ですね、もろいものです」


 助手の男は、青い部屋の中でもがく男の姿を見て冷静に言う。博士はモルモットを見るような冷酷な目でこう言った。


 「コイツも晴れて立派な精神障害者。この施設に入ってくれれば、薬漬けにして大もうけできる。親族にはこの事を連絡していないらしいし、都合がいい。つくづく馬鹿な男だよ」


 研究室には、博士と男の薄気味悪い笑い声が響き渡った。

※こんな病院はありえません。医師から処方された薬はちゃんと飲みましょう。(真に受けないように!)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ