過去2
何だかんだ、楽しみながら、会場に帰っていると、急に空が暗くなった。
「おい、なんだーあれは」
一人の男が空を指さす。そこにいたのは・・・竜だった。
「なんで、こんな所に竜が」
竜は、会場の方に飛んで行った。会場から人が逃げ出してくる。
「きゃぁぁぁ、竜よ」
「逃げろ、逃げろ」
会場は、パニックに陥っていた。
嫌な予感がして、父さんと母さんを探しながら、俺は会場に向かう。
会場の中央では、竜が豆腐を貪っていた。もしかしたら、餌を求めて、町に下りて来たのかもしれない。
「家の豆腐には、手出しさせんぞ」
「父さん!」
前から少しづれている人とは思っていたがここまでとは、思っていなかった。・・・事もない。だから、戻って来たんだしね。
「逃げろ、そんなので勝てる分けない」
「見せてやろう、我が家の家宝名刀豆腐刀」
「家宝も何も、父さんが作った物だろ!」
これは、豆乳を三日三晩混ぜ、魔法や化学のやらを無駄に注ぎ込み作った物らしい。
「豆腐の角に頭をぶつけて、死ね斬」
「名前長いし、ださい」
昔は、居合の達人だったらしく、その技は、達人の域にあった。
しかし、豆腐刀と言っても、所詮は、豆腐なので、普通の刀よりはるかに、柔らかい竜の頭にクリンヒットしても余りダメージは、なかった。
そして、豆腐刀は折れ、しっぽの薙ぎ払いをくらった。
「無念、賞味期限さえ、切れていなければ」
「父さん!そんな問題じゃない。問題は父さんの頭だよ!」
何だかんだで、瀕死の父さんは、折れた豆腐刀を差し出した。
「息子よ、最後に我が家宝を継承する」
「こんな、折れた豆腐要らないよ。いや、折れてなくても要らないよ!」
「やはり、賞味期限が切れてるのが不満か!がく」
そうして、父さんは気絶した。
「何で、何でなんだよ、その腕があったら、普通の刀なら、倒せただろ!」
「じゃあ、僕が貰っていいかい?」
いつの間にか、横に男が立っていた。
「貰うって、何を?まさか豆腐刀か?」
「うん、その刀だよ」
そう言うと男は、折れた豆腐刀を指さした。
「別に構わないが、そんな物どうするんだ」
「じゃあ、貰うよ」
その時、やっと後ろからの殺気に気付いた。振り向くと頭にたんこぶの出来た竜の口にはかなりの炎を溜めていた。
「まさか、豆腐刀効いていたのか!?」
そして、ブレスを放った。
「死ぬ!!!!!!」
男は、俺の前に立ち、豆腐刀で・・・・
「ブレスを切った!!!!!」
そのまま、竜に突っ込んでいく。怒り狂う竜の猛攻を折れた豆腐刀で全て受け流し、竜の前までたどり着いた。
「嘘だろ!!」
「すまないがこれで終わりだ」
男が豆腐刀を鞘に納めると、気づいた時には、竜は真っ二つになっていた。
その時、俺はその背中に憧れてしまっていた。
「貴方は、何者何ですか?」
「そうだねー、今は、勇者をしている」
この時、俺は、ある決意をした。
「僕が強くなったら、僕を勇者様の従者に、してくれますか?」
「いいよ。君が強くなるのを楽しみに待ってるよ」
そう言い残すと勇者様は、去っていった。