25 某所にて・その1
ヨラスルの街の中心部、巨大な建物の中にある綺麗な一室。
「ほう、居場所がわかったと」
部屋の奥に置かれた、高級感漂う大きな革張りの椅子にふんぞり返るようにして腰かけた男が言う。
まるで岩から削り出したかのようにがっしりとした大柄な体、ギョロリとした凄みのある目、そして裂けたような大きな傷のある左耳。
その威圧感ある姿を見れば誰でもこの部屋には似つかわしくない、そう感じるであろうほどに男は異質な空気を放っていた。
その身に赤を基調とした軍服を纏い、面倒くさそうに手にした紙の束で顔を扇ぐ男。その紙の束は他国との会談に使うものなのだが、男に気にする素振りはない。足を投げ出したまま、机の上に置いてある酒の入った盃へと手を伸ばす。
その前に立つのは背筋を伸ばした一人の帝国兵。
「はっ。ただ、居場所がわかった訳ではなく、それらしき目撃情報がーーー」
「それで。どこだ」
「っ、イーステリア軍からの情報提供によると、この街のようです」
直立不動で立っていた赤い軍服姿の兵士は男に睨まれ、緊張したように答える。
対して舌打ちしながら酒を煽る男。
「雑魚どもめ、逃げた小娘一人捕らえられないのか」
その吐き捨てるような言葉に、兵士が恐る恐るといったように口を開く。
「確認が取れている訳ではありませんが、情報によると強化兵らしき者と共に行動しているとーーー」
「強化兵、だと」
バキッ、と杯を握り潰す男。
途端に兵士の顔が青ざめ、その頬を冷や汗が伝う。
「はっ、す、数日前に身元のわからぬ男により、イーステリアの兵複数が一度に負傷したと、諜報部からーーー」
「王国強化兵の生き残りか、死に損ないが。
まあいい、情報を集めておけ。クソみたいな話し合いよりは楽しめそうだからな・・・おい貴様、わかったのなら早く動け。
それともなんだ、わからせて欲しいのか?」
その言葉に兵士は慌てて返事をすると、転げそうな勢いで部屋から駆け出していく。
「・・・ふん」
男はその姿を見て馬鹿にしたように鼻で笑い、手にした杯から酒を飲もうとしてーーー自らが握り潰したことを思い出し、腹立たしそうに盃の残骸を投げ捨てる。
舌打ちしながら机の上に置かれた酒の入った瓶を掴み、注ぐことなくそのまま口をつけて飲む男。退屈、それだけが男の感じることの全てだった。




