098 薬香の森・1
画像漁りと新作のアイデア出しに忙しかったので短めです。
どうぞ。
色や形ひとつとっても、水着にはいろんなものがある。布地はある程度の面積があるので、柄のあるものもあった。父さんの仕事が忙しかったり、母親と行くところが近くのデパートだけだったりと、水着そのものに縁がない俺は、この状況をとても新鮮に感じている。先輩と買い物に行ったことはあったが、同じものを買い求めることはなかったので、より親しくなれたようでとても嬉しい。
「んー……なんかイメージに合わないかな?」
「色味が狙いすぎですかね?」
髪の毛と目がとても目立つ紫をしているせいか、似た色を使うと印象がぼやける。追加料金を払うと商品の色を変えてもらえるにせよ、ひとつの商品につき三つから七つ程度しか色は用意されていない。紫系統にしても、かなり割り切ったワインレッドやバイオレットブルーでもないと色のコントラストは出ないのだが、そんなド派手な色が似合う俺でもなかった。
薄めの色ならわりとなんでもいけるような気がするし、じっさい「これなら」と思うものもあるのだが、ちょっとデザインが攻めすぎだったりする。
「あ、そうだ! お互いの色にしない?」
「いいですね! じゃあ、これとか……」
何度も見た、静かに咲く睡蓮の青。絞り染めのように白や紫の差し色が入ったレースという加工技術がよくわからないものに覆われて、ちょうどよく谷間が隠れるデザインだ。ビキニっぽいけどパレオ付きなので、肌を晒すのに慣れていない人でも着られそうだった。
「うん、いい感じ。私はこれにしようかな」
「なんかセクシーですね」
ふふ、と笑う先輩が選んだのは、やわらかなアイボリーに桜色と藤色のラインが入った水着だった。形はワンピースタイプだけど、色の入り方がなかなか際どいところを攻めている。
「泳ぐための水着はこっち?」
「はい。こっちは普通ですよ」
紺青にラベンダー色のラインが入った、背中はかなり開いているけど泳ぎやすそうなデザインの水着だ。俺と先輩、両方の色が入っているのもポイントで、とても……今気付いたが、横にいるのはアルドさんの相棒ではないだろうか。
「先輩、あの子って」
「リンちゃん? どうしてここに?」
こっちに気付いた彼女は、「ん」とフリルのついた水着を掲げる。桃色と黄色のグラデーションだが、上品な色味なのでとても落ち着いて見えた。先輩も文句なしのセレクトなのを理解したらしく、得意げにレジへ持って行った。
「……私たちも、買いましょうか」
「ですね」
早々に負けた気がする、と思いつつ、俺たちは店員さんに話しかけてお会計をお願いすることにした。
「あ、終わってたんですね」
「まあ、ね……」
並んで一緒にようかんを食べているあたり、それなりに仲良くなったらしい。疲労回復には甘いものなのだ、と言っているがたぶん関係ないと思う。
「ダンジョン攻略にでも行くのだ? まだまだ鍛え足りないのだ」
「もうお昼だから、近場のフィールドだけだね」
疲れていないか心配だったのだが、半日の半分も実践をしていなかったようだ。時間が微妙だからと屋台でちょこっとつまんできてしまい、これから食事という雰囲気でもない。そのまま狩りになだれ込む形になって大丈夫なのだろうか、と考えながら、俺たちは移動することになった。
壁役が俺でアタッカーがアルドさんとゼード、スズナ先輩は攻撃・支援・回復とマルチにこなせる。リンちゃんは純正ヒーラーらしいので、あまり負担をかけないようにと気配りをすべきだろう。指輪の中にいるくあどろっぷんはやっぱりまだ動けないので、ちゃんと素材を集めることを約束しつつ、フィールドダンジョンの入り口を眺める。
「薬香の森、か……素材もそこそこに取れそうだね」
「近所づきあいがあるから、ちょっと採取もしていくわ」
先輩たち「生活派」の人たちがどんなふうに暮らしているのかは知らなかったが、街にこもって素材アイテムを消費している人もいるようだ。戦闘以外にお金を稼ぐ方法だって必要だし、クラフト系スキルがあったほうが便利なこともあるので、その関係もありそうだ。
宿屋に戻ったら狩猟魔法をたくさん作ろう、と思いながら、俺はゼードに斥候を頼むことにした。
「ゼード、ちょっと先行して敵の居場所を教えてくれない?」
「わかったのだ。ジクスは、みんなを守ってほしいのだ」
「うん。じゃあ、お願い」
鈍重そうな見た目に似合わず、彼女はすばやく跳躍して森の中に消える。
「行きましょう」
「ええ」「ああ、行こう」
急ごしらえの六体パーティーだが、荒れそうな要因もない。それなりにうまくいきそうな予感を持ちつつ、俺たちは奥へと進んでいった。
VRMMOもの、なんか配信形態のが増えてますね。読む分にはまあまあ面白いし、やさしいせかいを感じられて嬉しいし掲示板回を省けるしでいいとこ尽くめ……には思えるんですが、書籍化したときにアレそのまま載せたらメモ帳まっしぐらですね。ドラたまみたいにレイアウト工夫してくれる出版社もしくは編集者さんに運よく当たるのを願うしかないのかな? 運任せはあんまり好きじゃないんですが、出版業界が少しでもよいものを送り出そうと努力してくれることを祈りましょう(他力本願)
新作のアイデア出しを始めました。どうせなら性癖全部ぶち込めばいいじゃん! という最高に頭悪いことをしようかなと……思ったけど練り込むの難しいですねほんとに。数週間発芽と間引きを繰り返せば形になるのかな? いちおうこれも書籍化したいとか考えてはいるのですが、次の弾がないとね……。色白なせいで人生が歪むレベルのコンプレックスを抱えてるので、褐色の方が好きなんですよね。褐色のヒロインを出したい。