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低レアさんのほどほど無双  作者: 亜空間会話(以下略)
一章「罪に沈みしもの」
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003 歩き出す

 三話目です、どうぞ。

 ならばどうするかという話だが、べつに難しい話ではない。キャラのレベル上げは食事でもできるので、もっとも効率のいい大好物を食べに行けばいいのだ。


「あの残念ちゃん、マジか……縛りプレイじゃん」「単発ガチャ最低ランクとか終わってんね」「見た目よか性能だしな」「この大一番に爆死とかマジで笑えんわ、もうちょい調整しとけよ運営の方も」「実質死刑宣告だろこれ」


 思っきしバカにした笑い声が背後から聞こえてきたが、気にしないことにした。言葉のうちいくつかには共感できるし、その通りだとも思う。でも、後ろの方から聞こえてくる別の声……「ガチャの引き直しさせろ」「ダメです」という受け答えだけでも、足掻く方法は「これでやっていく」以外にないことがわかる。


 ひとまず、どこか美味しそうなレストランを探すことにしようと思っていたら、先輩たちがやってきた。


「おーい、ユーくん? 浮かない顔だけど」

「ガチャがちょっと……」


「ああ、周りにもいたよね。別にいいんじゃない?」

「ですかね」


 さんざん言われたものの、言われてみればその通りだ。確率が上方修正でもされていない限り、最高レアを単発ガチャで当てようというのは無理がある。というか、期間限定を加えなくても衣装違いやスキル違いのキャラがおり、数としては五百種類くらいだろうか、その中から一発で満足のいく何かを当てようというのは、無茶というか不可能だ。


「なーに考えてんのかな、あのモアイ」

「そうね、デスゲームとかだったら性格悪すぎると思う」


 明確な格差をつけたデスゲームなんて、やる意味が見当たらない。わざわざ人間を異世界に連れてきてやりたいことなんて、俺には思い当たらなかった。


「私たちは外に出て狩りとか行くけど、どうする? ついてくる?」

「いえ。ちょっと食事でレベル上げついでに、あれこれ街を見たいですね」


「ん、じゃあそれでいっか。あたしカザミ、きみってユーくんでいいんだっけ」

「俺は……キャラネームはジクスです」


 じゃそっちにしようか、とカザミ先輩はうなずく。


「じゃあユーくん、危ない目に遭わないように気を付けるんだよー」

「大丈夫ですよ。先輩たちこそ、お気を付けて」


 にこにこと手を振る先輩たちと別れて、俺は街歩きを始めた。




 街のオブジェの配置は記憶通りで、道行く人も見たことのあるデザインの服や装飾品を身に付けている。はっきりとこの人だと言える見知ったNPCは見つけられなかったが、もともと人間よりもモンスターにスポットが当たりがちな作品だったから、仕方ないのかもしれない。


 携帯ゲームの方だと、食べ物はお金を出すとアイテムとして入手できる方式だった。しかし、椅子に座り食器を使って食べている人がいるところを見ると、一皿単位のアイテムはこの世界にはないらしい。どう仕分けだの収納だのするんだという話でもあるし、俺たちもコントローラーを握って体を動かしているわけではないから、そういうこともある、で通すべきだろうと思うが。


「よう嬢ちゃん、見ない服だね。どっから来たんだい」

「えーっと……遠くから?」


 気のいいおじさんに「クレープどうだい」とおすすめをもらったので、ありがたくいただくことにした。白身魚のから揚げが入った、おかず系のやつである。


「遠くったって、どこの街だって遠いぜ。見たとこ、そうだな、アメジストの街かい」

「ま、まあその辺り、ですね……」


 アメジストの街は、「器械文明」というゴーレムや器物系のモンスター発祥の地の近くにある場所だ。かっちりした制服を着こんだ衛兵で有名で、俺が来ているブレザーも似たようなものだと思われたのだろう。


「しかしなんだね、急に人が増えたが、人魚さまはそんなに有名だったかね?」

「お、私も存じ上げてましたよ」


 ガワのことを忘れて、ついつい「俺」と言いかける。もうちょっと女っぽい口調を心がけておこう。


「おう、そいつぁ嬉しいね。どうだい、美味いだろう」

「はい、とても!」


 実際美味しいクレープだし、魚介類だと剣仕(ソディア)の好物なのでレベルアップ効率もいい。


「そうだ、この辺りに宿屋ってありますか?」

「門の入り口近くに二軒あるぜ。旅の人なら泊めてくれるって気のいいやつも何人かいるから、お嬢ちゃんならどこかに滑り込めるんじゃあないか? あ、下心があるやつよか独り身のばあさんのがいいってのは……いや、心配なさそうだけどな」


「ええ、まあ」


 遠い街から来ても、旅の人には見えにくいほど身なりがきれいなら、実力はあるだろうと思ってもらえたらしい。


「ありがとうございました、おじさん」

「いやいや。また買ってってくれよな!」


「もちろん!」


 お勘定を済ませて、俺はさっと歩き出した。一通り街の景観を見てから、レストランを見つけたら何か食べることにしよう。持っていた初期金額はまだまだある、少なくともレベルが十になって「朽ち錆」状態が取れるまでに尽きることはないだろう。食べて話してとやってみると、やっぱり元気になるものだ。


 レベルは、ひとつだけ上がっていた。

「単発ガチャ最低ランクとか終わってんね」(本文ママ)


 なお本人たちのガチャ結果。星の数が二から七まであって、仮に五百種類くらいがいっさい被りナシで出たとしても母数としては☆5ランク(=Aランク)までで八割占めてるので……。ちなみに☆7ランク当たったのは十一人。実装されてる数自体が少ないのもありますが、マジモンのチートなのはともかくレベル上げ大変ですね。がんばってね。

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