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低レアさんのほどほど無双  作者: 亜空間会話(以下略)
一章「罪に沈みしもの」
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026 けれど、つながる

 キャラ&アバター紹介の続き。


 どうぞ。

「私は「銀鏡の剣士」を使ってます。狩猟魔法を使ってほとんど動かなくてもいい狩りをしてきたので、ほかのアーツはあまりこなれてません」

「だいじょーぶ、俺らがちゃんと付いてますんで」


「はい、お願いします」


 頼っていい、と言ってくれたなら頼るべきだ。見栄やプライドなんて、命に比べたら安いどころではない。


 レベルについては「まだ低いんだな」という目を向けられたが、ランクが低いのをバカにする風潮は特にないらしい。この人たちがいい人なだけなんだろうか、と思ったのを見透かされてだろうか、先輩が「やれるかどうかだけ」と低く言う。


「そうです。ランクを鼻にかけてたやつもいたんですが、場末の店でしか飯を食えなくなるわ、どこの宿屋も泊めてくれないわで大弱りでした。この世界での人の価値って、人の役に立つかどうかだけなんですよ」


「すげーいいこと言ってるぜ三石! 俺からも補足しときますけどね、ランクって「未満の数字」っつうか、そいつが何かしたから表れた数字じゃないんで。成績を決めた水準を置くんじゃなくって、ぽんとあるだけなんスよ」


 うなずかざるを得ない言葉だった。


 納得したところで、と先輩たちが話を促す。


「じゃ、あたしね。あたしのは「アミュレ・ラ・プラム」だよ」

「おお、すげぇ! 強いじゃないですか!」


 三石さんはキャラ崩壊がキャラみたいなものなんだろうか。


 とはいえ、驚くのも分かる。赤紫を基調としたアラビアンな踊り子風の焔舞(ジュール)であるプラムは、回復するたび攻撃アップなんていうトチ狂ったアビリティを持っていた。回復系アーツをガン積みすれば瞬く間に火力はハイパーインフレを起こし、回復と支援のアーツをカスタムで融合させて使えば一瞬でバフをかけ終わる。強豪なんてものではない、人権キャラである。Aランク=☆5というところも隙がない。


「私のアバターは「メリア・レージェ」。いちおうマルチタイプを目指すつもり」

「Bランク最強ですよね? すごいです、先輩」


 こちらもかなりの強豪……というか、敵として登場したときは真っ先に落とさないとヤバいと言われるほど強い焔舞(ジュール)/妖海(メレィ)だ。攻撃に追加ダメージが発生するアビリティ持ちなのだが、両手に武器を持てる二回攻撃のモンスターである特性上、単体で出すものとは思われないほどの火力を叩きだす。


 支援効果を併せ持つ「斬舞」系のアーツを出されると、弱り目に祟り目とばかりにほかのモンスターまで強化されるし、判定回数が四回ある都合上、状態異常を使われたらほとんど確定演出といってもいいくらいにかかりやすい。プラムほどステータスが高くないのが救いだが、バフの重ねがけは常套手段である。


 序盤はちょっと微妙な「ガラートムージェ」と、育成方針を間違うと産廃に成り果てる「アラモ・オルディカ」はともかく、先輩二人はチートかよと言いたくなるレベルだ。イルヴニウスは普通に強いし、どうやっても強くなる間違いのないキャラだった。ここにいる中でも、あからさまに使いづらいのは俺だけらしい。低レアってやっぱし弱いなと考えてしまうのも、致し方ないことだと思う。


「とりあえず、ごはん食べよっか」

「……そうですね」


 別に空気が重くなることもなく、ひとまず知りたいことは分かった、というていで話が続く。


「いやほら、女の人にジュールのアバターほとんど渡ったじゃないスか。うちのリーダーがすげー怒ってるっつうか、ふん縛ってでも連れてこいみたいな。そりゃバフがあったら強いなーとかありがたいなーとは思いますけど、違うんスよね」


「もしかしてさ、むさくるしいとか?」


「かもしれませんね。サークルクラッシャーとかいろいろ見てきた僕からすると、男祭りも決して悪いものじゃありませんよ。数が偏ると、どうしても変になるので」


「こうして聞くと新鮮ですね」


 マズトさんは、もともと便乗して何か言うだけのタイプらしく、ほとんどしゃべっていなかった。まあ、無口っぽい見た目ではあるんだけど。


 話しているうちに口は軽くなり、早くなる。そして、それが出てきた。


「そういや知ってます? 夜にPKが湧いてるって噂」

「あ、聞きましたね。ボジさんが独自に人を集めて調査してるとか」


「それ、私も加わってますよ」

「え、……え?」


 全員がこちらを見た。


「いつの間に……。死ぬかもしれないんだよ、ジクス」


 スズナ先輩は、必死に諭すように言う。だが、俺の決意は揺るがない。


「お世話になってるところまで累が及ぶところだったんです、黙って見てることなんてできません」

「そっか……。でも、絶対に死んじゃダメだよ。約束」


 小指を結ぶ。


「あの、もしよかったら――」


 先輩たちの方へ向き直り、男性陣にもことの詳細を伝えようかと思ったそのとき、爽やかな声がやってきた。


「お、やってるね。ひとり増えてない?」

「支部長! どうもっス」


 ぶっとい眉毛、体育会系のお兄さんが何かを間違ってコスプレに目覚めたような見た目の人だった。わりとファンタジーな服装だけど、もうちょっと筋肉っぽい恰好の方が似合うと思う。


「こんにちは、アスマです。合同訓練に参加してくれるってお二人……一人増えたみたいだけど、お三方ってことでいいよね?」


 俺と女性陣ふたりが、同時にうなずく。


「じゃあ、訓練の概要を説明するね。定期イベントを攻略できるだけの戦力を確保することを目的に、まずは最初のキャップであるレベル十五を目指します。同時に、レベル上限解放のためのアイテム集めも予定してるよ。難易度を考えて、第一回の訓練は明日の夕方からかな? 引率も付くけど、バトルはそちら任せになるよ」


 質問はあるかな、と言われたが、今すぐに中止しろと言えるほどの胆力もない。この男は自ら“アスマ”と名乗った。何も怖れていないのだ。この男が犯人なのだとすれば、気持ちの時点ですでに負けている……勝ち目はゼロだった。先輩ふたりも、夕方ならPKは出ないと思っているのか、それとも引率がいれば大丈夫だと思っているのか、噂を噂としか思っていないような顔をしている。


 カティナさんは、あのとき何と言ったか――「トランクを売ろうとしてきた」。


 これぞまさに天啓だ、と俺はインベントリからアイテムを取りだした。


「あの、アスマさん。これ、落としてませんか?」

「ハンカチ? ボクの趣味じゃないし、ちょっと記憶にないかな」


「アスマさんって方が落としたものみたいなんです」

「ああ、彼かもな……ひとまず預かっておくね。もらえる?」


 ええ、と言いながら取引ウィンドウを開く。


 この男の名前は――



[遊馬 に「ハンカチ(レア度なし)」を譲渡します]



 ――違った。


「なるほど、確かに人の持ち物だね。ありがとう、届けてくれて」

「いえ、お世話になった人のものなので」


 間接的であっても、カティナさんに殺人の事後処理をやらせようとしたことは、決して許せないし許さない。これで空振りはひとつだが、ひとつ近付いたともいえる。


 殺人犯「アスマ@技マ」は、ゲームクリア派の中にいるのだ。

 緊張の一瞬、でも空振り。かと思いきやの「彼かな」って……。


 動画回で出ていたやつが出てきましたね。ソシャゲだとさらにぶっ壊れだったみたいですが、天井ナシの新規闇鍋ガチャに放り込まれたらそりゃ出んわ。動画投稿者が「けっこう使ったけど出ませんでした」って発表するからには、やべーんでしょうね。FG〇はガチャの評判がだいぶ悪いですけど、あんな感じなんだろうか。

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