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低レアさんのほどほど無双  作者: 亜空間会話(以下略)
一章「罪に沈みしもの」
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002 転ぶ系スタート

 二話目、どうぞ。

『復活はできかねます……まともなご遺体の残っている方はおりませんので。それと、被災時の記憶が残っていると転生処理に問題がありましたので、消させていただきました。さっさと冥界に行かせろという意見に関しましては、撤回していただきたく思います』


 ひとつひとつ、モアイは答えていく。ていねいな口調だけど、言っていることを本当にしているんだとしたら神様レベルだ。


「ふざけんな、適当に監禁して何させる気だ!」


 罵声が飛んだ。理解できない意見ではない……口で丸め込み自分の要求だけ通そうとしているとか、こんな人数を集めて何をやらせる気だとか、そんなに遠くまで考えは及ぶわけではない俺でも思うのだから、賢い人はもっと考えるだろう。


 応えて「わたくしは慈悲を与えているのです」とモアイ像が声を低めた。


『生者として功徳を積み、より良き死を迎えることで次の人生を良いものにしたり、天国へ行くこともできる可能性をご用意しているのですよ? いわば、この世界はあなた方への試練なのです』


 クソ適当なグラフィックのわりには神様っぽいこと言うなあ、と思いつつ聞いていたのだが、そこから先がキモだった。


『とはいえ、わたくしもこのような修羅の世界にただ人を投げ出す悪魔ではございません。この世界に生息するモンスターたちの姿を借りる「アバター」を貸与し、その力でこの世界を生き抜いていただこうと考えております』


 大歓声があがった。「クロニカ・エムロード」はモンスター育成ゲームだ。ただ人生が続くということではなくて、特別な何かが待っているということならば、集められたにしたってその不満が消えるくらいに嬉しいことだった……いや、正直言ってただ怪しさが増しただけなのだが、それなりに説得力もある都合のいいことを言われると信じてしまうのが人間なのだろう。


『それでは十列に並んで、順番にフィーダーから受け取ってください』


 かなり良心的な神様だな、とこのときは思っていたのだが――「フィーダー」、餌やり器という意味のそれはいわゆるガチャだったことを思い出した。星の数でランク付けが決まり、低レアはともかく、最高レアの星7の排出率は3パーセントほどである。悪質というほどでもなく常識的な数字なのだが、一発で出すのはほとんど不可能だ。最低レアの星1はバトルで仲間にするしかないため、フィーダーで落ちる最低レアは星2からになる。


「じゃあ、こっちに並ぶので……」

「いってらっしゃい。私たち、こっちに並ぶね」


 十個のフィーダーに一列ずつ並ぶのが効率的なのかどうかは知らない。並ばないわけにもいかないので、ひとまずものすごい人の中に入って、列ごとの分かれ目をどうにか見つけ出す。はるか遠い前の方で、ガチャを回してはその前から去っていく人々が確かにいるので、わずかずつ近付いていく人の波を信じることにした。


 受け取るという言い方をしたわりにちゃんとガチャを回しているあたり、レアなアバターをばら撒いて遊ばせるつもりではないらしい。きちんと試練なのだ。


「うおおおお当たったぁあああ!! すっげえええ!!」


 どうやらふたつみっつ隣の列で星7が当たったらしい。ものすごーくうらやましいが、ガチャを回すときには煩悩を捨て去ることが大事だ。ついにやってきた俺の出番、単発ガチャはふつう回さないのだが、魂を込めて……来い、来いッッ!!! がちゃこ、がちゃんと取っ手を回して出てきたのは……そこらへんの石ころみたいな球体だった。


「あっ」


 日本語でほぼ一文字、ローマ字にしたって四文字しかないこの短い単語ですらないひとことでここまでの絶望を表せたこの俺の声は、控えめに言っても……ダメだ言葉が出てこない。


 次の人に出番を譲り、別人のもののように足が動いて歩く中で、それでもきちんとガチャ玉を開けてアバターの内容を確認できた。絶望のあまり心臓が止まるかと思ったが、意外や意外、けっこうな当たりだ。



[銀鏡の剣士(朽ち錆)Lv.1 ☆☆

剣仕(ソディア)剛壁(カスト)


 風化の呪いを受けた銀鏡の剣士。呪縛を解くと……?]



「おお、しかもレア個体だこれ」


 単体攻撃が強い「剣仕(ソディア)」と防御力の成長がめざましい「剛壁(カスト)」のハイブリッドカテゴリ、しかもレベルを上げると何かしらのスキルが生えてくる「呪縛」持ち。星4よりも上のランクだとステータスの上がり幅がさらに伸びたりレアスキルに覚醒する「封印」もあったのだが、さすがに高望みだろう。


 すでに人間に近い形のアバターへ変化して、今にも狩りに出かけようという適応の早すぎるやつらがいるので、俺もそれに遅れるまいとアバターを起動したのだが。


「お、重っ……なんじゃこりゃ」


 いわゆるリビングアーマーみたいな俺のアバターは、死ぬほど重かった。しかも、一歩を踏み出そうとするだけでギリギリコリコリと音がして錆の粉がこぼれている。


「かい、じょ――ぷはっ」


 どう考えても、これで戦えるはずがなかった。

 チート渡すんじゃなくてガチャ回させる神って邪神のたぐいでしょ(邪推)。人数多いから並列処理をめんどくさがったのか、それとも、ですね。


 災難が降りかかる主人公、どうする気でしょうか。

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