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低レアさんのほどほど無双  作者: 亜空間会話(以下略)
一章「罪に沈みしもの」
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012 剣よ切り裂け

 なんか熱いサブタイトル。


 どうぞ。

 こちらから攻撃を仕掛けるほかないのだが、そうするにしても俺は遅すぎる。受けを主体として勝ち筋を組み立てる必要がある。レベルが上がった分、いくらかアーツは生えてきているはずだが……確認している時間があるのかどうか、ひとまず剣仕(ソディア)の方の初期アーツを使うのが先決だろう。


 攻撃を避け……られない。体全体がまず動かないし、腕がようやく動くかどうかというくらいのだるさで、最初にアバターを身に付けたときよりはややマシ、程度だ。


「づっ、これヤバいだろ……!」


 攻撃が飛んでくるたびに、避けることもできずにガリゴリと爪痕が刻まれる。前衛のHPと進化したてのステータスがうまい具合に噛み合って死んではいないが、回復できる手段がないのですさまじく危険である。昔こうやってた頃なら、通常攻撃で何割か削ってから熟練度を上げたいアーツでとどめを……なんてシミュレートしていたところだが、俺がやられる段になって削れ具合を見ると、ゴリ押しで倒せるんじゃないかとすら思える。


 だが、ゴリ押されるつもりはさらさらない。


 設置型ではなく、投擲タイプの狩猟魔法をいくらか使って削る必要がある――そして、俺自身ではなくて剣で攻撃を受けなければならない。


 爪痕が宙を滑る。それに剣を合わせて、三撃をどうにかこらえた。後退することなく踏みとどまり、剣に乗せたカウンターを食らわせる。その瞬間に、ふと疑問を覚えた。


「……動けてるじゃん」


 アーツやアビリティの補正を受けた動きなら、引っかかりもなくスムーズにやれる。アーツにつなげること自体が難しいとはいえ、それさえできてしまえば自由に動ける……制約が意味をなさなくなる、ということだ。


 相手のHPも半分を割っているが、こっちは四割あるかどうかというところだ。まともにやれば、こっちが死ぬ。


「こう、か……? 〈パワースラッシュ〉!」


 急接近しながら斬撃を放つ、剣仕(ソディア)の初期アーツを放った。思ったより威力は高く、HPがさらに大きく減る。相手には受けるという選択肢がない、ただ殺される前に殺すほかに生き残る手段がないのだ。こっちにとっては都合がいいことに、移動速度そのものは大したことがない。もっとレベルが上がっていればまた別の話だったかもしれないが、進化したての敵は、俺と同じひとつ覚えのひよっこだった。


「読んでるぞ……!」


 相手のアーツが飛ぶ。受けると同時に、巻き込むように二撃目を叩き込む。カウンターにアーツを乗せて、〈ラスターエッジ〉は空間を駆けた。命中した瞬間にアーツの特殊効果が発動、防御力は三割も減る。スピリットは怒りの咆哮の代わりに、真っ赤になった爪を振るう。軌道は見えているのに、かわすことは――



 ばき、という音ひとつ。



 ――できた。


「〈パワー……〉」


 ぎりぎりでかすめなかった攻撃から意識を外し、踏み込む足に、剣を握る腕にできうる限りの力を込める。


「〈スラッシュ〉!!」


 バシャアッ!! という滝のような音が響き渡り、〈インジャリー・スピリット〉は真っ二つになった。地面に落ちる前に光になって消えるそれは、俺の体を照らし出す。俺の体を覆っていた錆は、薄い膜としてその辺に落ちていた。それもゆっくりと光になって消えていく。


「あれ、まだレベル9じゃん」


 こういう「朽ち錆」みたいなレア個体は、レベルだけさっと十に上げて呪縛のたぐいを取り払い、そのあとの成長をあてにするものだった。上がっていないレベルを放置したまま戦いに挑むなんてのは、無茶どころではない。


「取れてるな、朽ち錆って状態も。ぜんぜん問題なく動ける」


 これなら、俺も動ける……まともに戦える。体の動かし方なんかはぜんぜんわからないが、とりあえずかわして攻撃してくらいは思いつく。何が起きたのかはともかく、やるべきことがやれるようになった、それだけでも俺は嬉しかった。


「しかも、投擲タイプの消耗なしか……やった」


 手札がぐんと増えた。とても喜ばしいことだが、同時にものすごく大きな問題が出てきたのも事実だ。そんなに手札と状況を組み合わせるのがうまいわけでもなく、情報を揃えないと動き出せない俺の欠点……技の使い分けである。


「狩猟魔法のこともそうだけど、ニディス師匠ってアーツのことどのくらい知ってるのかな……」


 魔法スキルから生えたアーツが、いわゆる魔法だ。魔法に深く通じているということは、アーツについてもそこそこ詳しいと思うのだが……俺たちがゲームとしてやっていたことを、この世界の住人も同じようにやっているのかどうか、という疑問は消えない。


 逆もそうだ。モノを売ることでなら、この世界の人々は俺たちを客として扱ってくれたようだが、どこからどこまでが同じなのか、どうやったら異端というか別物として認定されてしまうのか、そこも気になる。


「とりあえず、帰ろう」


 予想外に長引いたが、狩りはひとまず終わった。

 あ、設定説明しなきゃ。アーツはスキルもしくは種族から生えてくる、いわゆる特技です。ランクによって持てる数に違いがあり、☆2ランクだと「(星の数+1)×10=30」となってます。ちなみに「星の数+1」という数字がどこから出てきたのかというと、ランクごとに持てるスキルの数のことですね。つまり、スキルひとつにつきアーツの枠十個が割り当てられている計算になります。厳密に言えば、なのでその辺のさじ加減はやる人次第ですが。


 まだ種族依存のアーツ四つとスキル依存のアーツ三つしか持ってないのに考える意味あるのかなとは思うんですが、枠がなくなってから後悔しても遅いし……。

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