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ダリア、夏期講習に出ます。1

翌日。朝である。夏休み突入である。



しかし1つ、問題が発生した。


召喚魔法とは、魔物や聖獣を呼び出し、役目を終えたら還す魔法だ。


で、その召喚したものを維持するには魔力が必要になる。同然の事だ。その上、召喚したものに魔法を使わせたのであれば、召喚者の魔力は直ぐに底を尽きるだろう。


だから還すのである。元居た場所に。


俺もそうした。代行者として召喚したからには、維持するには結構な魔力を持っていかれるだろう。それも6体。


日付が変わる時には、元居た場所に還る……筈だった。



「おはようございます、ダリア様。朝食でございます」


「……あ、はい」


「掃除と洗濯も終えております」


「……あ、はい」


「洋服は種類別で分けておきました。生活用品も整理してあります。何か分からないようでしたら、なんなりとお申し付け下さい」


金髪の景色が俺の霞む眼前に広がる。


そして、目を擦りながら、一言。


「なんで居んの?」


メイドさんは見事なお辞儀を保ちつつ、真っ青な顔を上げる。


「……な、何か、わたくしめに至らぬ点がありましたでしょうか? ダリア様に見限られては、わたくしは……」


今度はマッハでひざまづいた。


「ダリア様のお心を察する事の出来ないこの至らぬ身に、ダリア様のお言葉を……!」


朝からハイペースだな。


「あの……別にいいんだけどさ。確か元の場所に還したと筈なんだけど」


「わたくしめの帰るべき場所はダリア様のお側です」


「いやそう言う事じゃなくてね」


「───我らが主よ、俺らは永住が許されたのさ」


突然、部屋の隅に置かれたテレビの裏から黒と紅の目を光らせる黒猫が現れた。


「えーっと確か……マックロネコ?」


「ダリア様に覚えて頂けるとは、光栄だ。我が名はマックロネコ。偉大なる主に忠義を……」


俺の側まで歩み寄ったマックロネコが頭を垂れる。


「マックロネコ殿、何用ですか?」


「なぁに、不測の事態に備えてだ。ルシファーの奴もダリア様を心配していたからな。それよりもダリア様。貴方の疑問は俺が解こう。本来なら還る筈のものが、何故存在しているのか───」



マックロネコの話によると、召喚されるもの達には魔力の上限値があるそうだ。


例えばその上限値を100とすると、維持する為には10の魔力量。しかしこれは、召喚されたものは不完全であり、魔力をただ無駄に消費する為の木偶なのだ。


この時に100以上を注ぎ込むと、召喚されたものが永住する権利───つまりは、独立した存在になり、還らなくても良くなる。


しかしデメリットもある。


例えば上限値が1000の魔力量を持つ召喚士がいるとする。それで100の魔力を注ぎ込んで永住の権利を与えてしまった場合、召喚士の魔力量が900を超えなくなるのだ。


これは、召喚させれたものが死亡した時に破棄される。あとは余程の実力者でもない限り、還すのは難しいそうだ。


で、俺は永住の権利を6体同時に与えたらしい。伊達に魔力量だけは持ってないって事だな。


てか、なんでこんな大事な事勉強してないんだよ、俺。それなりの学校に通ってんだよね~! と自慢してる自分が恥ずかしい。


とか思ったが、言われて思い出した。確かにそんな事“聖女の書物”に書いてあったな。すっかり頭から抜け落ちてたわ。


「しかしこれ以上の召喚魔法は使わないで頂きたい」


大丈夫。やらないよ。怖かったもん。


「貴方は一度死にかけているからな」


えっ。


「そんなに魔力持ってかれたの?」


「ああ。今の貴方の魔力は空に等しい。これ以上魔法を使うと、命を持って行かれる」


「……確かにあの時、音が聞こえなくなって、視界も無くなったっけな」


「正にそれだ。だが安心してくれ。俺が貴方の力だ。どんな困難も打ち払ってやろう」


頼もしい猫さんだ。


「マックロネコ殿、ダリア様の力は貴方だけでは無いのですよ」


メイドさんがしかめっ面を浮かべる。


「分かってるよ。じゃあ俺は俺でダリア様の護りに就く」


そう言って、マックロネコは俺の影と同化した。

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