ダリア、召喚します。5
金髪メイドは俺の目の前で深々と頭を下げる。
「掃除洗濯料理、警護から害虫駆除、下の世話、なんなりとお申し付け下さいませ、ダリア様。何一つ不自由は無く過ごせる事を約束します」
「は、はぁ……」
「いつ如何なる時もお側にお仕えします。これは例え偉大なる主の命でも拒否は認めません。宜しいですね?」
「は、はい」
勢いに負けて思わず肯定してしまった。俺にもプライバシーあるんすけど。
「ダリア様」と堕天使。
「お気を付けてお帰り下さい。我等も直ぐにダリア様の危機に駆け付けられるよう、お側におりますので」
そう言い残し、代行者達は姿を一瞬で消した。
「それで、ダリア様。自宅はどちらに?」
「自転車で1時間半の所にある」
「自転車……でございますか?」
「そう。あそこに寝てるやつ」
俺が指差す方向には、軸が変形した自転車の姿があった。
「あーあ。これ駄目だな。どうやって帰ろう……」
「お任せを」
何か手があるのか、金髪メイドが自転車の輪郭を指でなぞって行く。
「そう言えば名前聞いて無かったな」
いや、自分でつくったものには自分で名付けるんだっけか。
「はっ 。先ず、堕天使の方が『ルシファー』」
名前あるんだ。なんでだろう? 既存するものを召喚したのだろうか? 既存するものには種族名があるからな。
「次に、白い人型の彼女が『白井さん』」
それ名字じゃ……。
「次に、紅いツインテールの彼女が『ダイナ・マ・イトボディ』」
ああ……。居たな、そんな奴。ルシファーとやらの存在感が凄すぎてスルーしてた。
「次に、銀の長髪と二本の長い角を持つ彼女が『竜王ウロオボエ』」
ギャグみたいな名前だな。可愛そうに。
「次に、黒猫の彼が『マックロネコ』」
そのまんまだな。可愛そうに。
「そして私が、『メイドさん』でございます」
それ名前じゃなくね?
「誰に名付けられたの?」
気になったのでぶつけてみる。
「ダリア様でございます」
マジかよ。嘘だろ。ネーミングセンスどうなってんだよ。
いやしかし、名前を付けた記憶が無い。そもそも何故、頭の片隅にすら置かれていなかったこのもの達が召喚されたのか。不思議で仕方無い。
「我々は皆、遠い昔にダリア様にの想いによってつくられました」
「と、遠い……? 俺の小さい頃につくられたって事?」
「その通りでございます」
「へ、へー」
つまり子供の頃の記憶を喪とにつくられたんだろう。確かに、この代行者達には見覚えがあった。よく覚えてないが、頭の根元がくすぶられる。
そう考えると、代行者達の名前にも納得はいく。即興でイメージした黒の鎧のキャラより、この代行者達のイメージの方が完成されていて、より強固なものだったのだろう。
それにしても俺の忠義具合が凄いよな。
「ダリア様、出来ました」
物思いに更けていてボヤけていた視界がメイドさんの声で鮮明を取り戻す。そこには新品に近い自転車が雄々しく自己主張していた。
「凄いな……」
「も、勿体無いお言葉!」
ひざまづくメイドさん。
「じゃあ後ろに乗って。これ魔力で動く機能無いからさ」
「は? ……あ、いえ! 申し訳ございません! ダリア様に無礼な発言を!」
「い、いや。気にしてないから」
寧ろ学校じゃ日常茶飯事だし。
「ダリア様にその様な事をさせる訳にはいきません。ダリア様が後ろにお乗り下さい」
なんかそれは申し訳無いな。代行者とはいえ、見た目は華奢な女性だし。
しかしまあ、メイドさんの覇気に押される訳であって、
「では参りましょう、ダリア様」
メイドさんの腹に手を回し、足を軸に乗せる。
「なあ」
「な、なんでございましょうか」
「鼻血出てない?」
「ダリア様からの抱擁。これを喜ばずにいられましょうか!?」
叫びと共に、チェーンがぶっ壊れそうな速度で自転車が走り出した。
☆
アパート前である。無事に着いた。
鼻血を流しているメイドさんが俺の足元で四つん這いになっている。
「大丈夫?」
「ダリア様に心配を掛けるさせるとは……私の一生の恥。この至らぬ身に処罰の程を」
「……いや、しないよ」
ふと思ったことがある。
扱いにくい。




