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ダリア、お出掛けします。1

突然だが、本日、兄が遊びに来るそうだ。



『ダリアお前確かアレだよな。鳴滝ポルポちゃんのファンだったよな?』


『鳴滝……? ああ、あの歌姫とか言う安直な表現で呼ばれてる人?』


『手厳しいな。そうそう』


『いや違うけど』


『え? だってお前、彼女の“夢追いし孤狼”って歌、好きだっつってたじゃん』


『歌だけな。俺が好きなのは曲自体であって歌手じゃないから』


『えーっ! 興味無いの? 運良く仕事先でチケット貰ったんだぜ? 折角貰ったのによー』


『行く』


『お前のそういう素直なところ好きだぜ』



───てな訳で、兄ちゃんが来る。今日王都に着くそうだ。


しかし、一つ問題が生じた。俺はまだ、両親にも兄にも引っ越しの事を伝えていなければ、召喚魔法が成功した事も伝えていない。


召喚魔法の成功に関しては別に教えても問題は無いだろう。電話でいつでも報告できるからとついつい先伸ばしにしてしまった。


だが引っ越しは別だ。親の了解を得ずにしてしまった。言ったら心配されるだろう。親が送ってくる荷物を自宅にではなく店頭受取にする為に連絡は入れたが、やはり不思議がられた。


まあ先ずは目先の問題だ。兄ちゃんの事だ、待ち合わせ場所は王都の北口だが、高確率で家に来たいと言うだろう。


何か対策を考えなければ。

何か当たり障りのいい口実を作らねば。

何か手を考えろ。


……いっその事、本当の事をぶちまけようか? いずれ言わなければならない事だし。まあ俺の家族は変なところでスルースキルが高いから、兄ちゃんも素っ気ない態度で終わるだろう。


朝のニュースを歯を磨きながら眺め、物思いにふける。



『───マルーシ街を襲った吸血鬼。マルーシ街を半壊させたその存在は、世間に大混乱を招いています!』


『いやー、怖いね。これ10年前みたいになるんじゃないの? しかも2体いるみたいじゃない』


『軍も動いたらしいですが、住民の避難を優先していましたからね。それでも郊外に追いやる事には成功したんですから、レベルも低いんじゃないですか?』


『いえ。過去の資料によると、吸血鬼は全てLv.40を超えています。油断はできませんよ』


『でも吸血鬼は弱点も多い魔物だし、そこを突けば私達でも対処ができるよ』


『はい! と言うことで、吸血鬼の専門家であるこのお方に、出会ってしまった時の吸血鬼の対処方法についてお聞きしましょう!』



ニュースの内容も右から左に抜けていく。


ふとある事を思い出し、イサメに目を向ける。


「あの、イサメ」


「磨き終わってからにして下さい」


「ご、ごめん。でも前は怒らなかった、のに……」


頭に甦るのは、イジメっこ達を制裁した日の事。確かあの日は歯を磨きながら喋っていた覚えがある。


「夏休みの3日目の朝でしたか? あの日はわたくしから口を切り出したので、流石にそのような理不尽な強要はしません」


「そ、そう」


言われた通りに歯磨きを終了し、イサメの前に腰を下ろす。


「はい。どうされましたか?」


「今日、出掛けるから」


「鳴滝ポルポのコンサート……でしたか? ダリア様の兄君がいらっしゃるようですね」


なんで知ってんだよ。俺が電話してる時いなかったじゃん。


見透かされた発言に動揺していると、イサメが誇らしげに語り出す。


「ダリア様の動向を知らずして何がメイドですか。メイドとは、主人に全身全霊をかけて奉仕させていただく事、おはようからおやすみまでとは言わずおはようからおはようまで終始お側に仕えるのが役目にございます。ダリア様に尽くす事こそ至上の喜び。ダリア様の事ならば、例えスリーサイズだろうとも把握しております」


何それ怖い。俺のスリーサイズを知ってどうしたいんだよ。


「これは周知の事実。そうでしょう、コロネ殿?」


イサメが影の深い部屋の隅に目をやると、それに応じてコロネが影から顔を出した。


「それはスリーサイズの話か? 俺は知らんぞ、そんなもの」


「えっ」


「えっ」


なんだこの温度差。

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