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間話、陽を喰らうもの。2

「どういう事だ? 俺は釈放されたんだぜ?」


渡辺カロスは眉をしかめながら獄の胸ぐらから手を離す。


「いやぁタイヘンですねぇ。こんな立派な監獄を脱獄しちゃうだなんて信じられませんねぇ。やるなー」


柩が渡辺カロスの言葉に無視して続ける。


「いやぁ看守も5人くらい殺っちゃったんですもんねぇ。オトコだなぁ」


柩が徐々に歩み寄る。


「オマケに他の囚人も何人か逃がしちゃったんですか? こりゃスゴい! 事件ですよ! 事件! 今度捕まったらスゴくオモシロい事になりますね!」


そして柩が、渡辺カロスの目の前で、目の下に影を作りながら不適に笑った。


「これ、渡辺クンがやったんですよ」


「て、テメェ……ら、まさか──!?」


渡辺カロスは確信した。


そう、


「はい。ワタシ達がそのように工作しました。獄クンが看守を始末しながら渡辺クンに通達を届けてぇ」


「柩さんが裏で色々やってたんだよねー、アハハ! マジ爆笑過ぎるくらいヌルい仕事だったわー」


「あと朗報ですがぁ、軍がどれだけ捜査をしてもショウコは出ません。渡辺クンの以外はね。だって渡辺クンがやったんですからトーゼンですよねぇ」


「んな事できるわけがねぇだろ。……つーかよ、いい加減俺の質問に答えろや」


渡辺カロスの緒がついに切れた。額に血管を浮かべて怒りを露にし、柩のボサボサの紫の髪を容赦なく鷲掴む。


迂回して道草を食ったままで一向に進む気配のない本題。


言葉のボールを返さない柩に対し血がのぼりやすい渡辺カロスが激昂するのは当然の結果である。


「ニシシ、セッカチさんですねぇ」


しかし柩は全く動じない。それどころか呑気に腕時計を確認している。獄に関してはアリの行列のど真ん中に石を置いて遊んでいる始末だ。


「おっとっとぉ、思いのほか話がハズんでしまいましたね。応援がが来てしまいますねぇ。じゃあ渡辺クンの問いにコタえましょうかぁ」


柩は渡辺カロスの手を振りほどき、彼を見据える。


「アナタを勧誘しに来ました、渡辺クン」


「は?」


「イエスかノーで答えて下さい。ワタシ達の仲間になるのか、それともならないのか」


「端折ってんじゃねーよ。テメェら何者だよ?」


「“陽を喰らうもの(イクリプス)”と言えば、指名手配犯だった渡辺クンなら分かるんじゃないですかぁ?」


「“陽を喰らうもの(イクリプス)”……?」


確かにその名前には聞き覚えがあった。



 陽を喰らうもの(イクリプス)


表立った話は無いが、裏では名の知れる最凶最悪と傭兵団である。団員数は少ないものの、全員がクラスレジェンドに足を突っ込んだ手練れ揃いだ。


と噂されている。


その実体は曖昧で、水面に浮かぶ月を掴むぐらいに信憑性がないのが裏でも一般的である。ただの噂に過ぎないのだ。



「……んなもん噂だろ」


「噂なんてのは誰でも立てれますからね。まあちょっと今人員不足でしてぇ……だから勧誘しに来ましたぁ! ───で、どうしますぅ? イエス オア ノー?」


「信じろってのか?」


「別にそれでも構いませんよ。イエスならワタシ達はハッピーになりますし、ノーなら渡辺クンを捕まえて軍に引き渡して報償金が貰えてどちらにしてもハッピーですからぁ」


「………」


渡辺カロスは考える。


柩の話はどこが本当でどこが嘘かの見当はつけられないが、獄の実力は本物だろう。2人の得体はしれないが牢獄から出してくれたのもまた事実。



「……分かった」


これがしばらく思考した渡辺カロスの答えだった。


顔は笑っているものの、殺気に満ち溢れた眼で眺めてくる柩を前にしたら、どうしても“ノー”が言えなかった。


赤のランプが高速で点滅して危険を知らせていたのだ。


「本当ですかぁ!? いやー良かったです!」


答え聞いた瞬間、柩は喜びを示す。


「実は実験の為に渡辺クンの能力が欲しかったんですよぉ」


「あ? 実験?」


「この王都でイベントあるらしいんですよねぇ」


「知らねーなぁ」


「あるんですよ、明日。だから渡辺クンには明日頑張ってもらいますから、そのおツモリで」


「何すんだよ?」


「それはですねぇ───」


柩が言いかけたところ、軍の気配を察知した獄が合図を出した。


「渡辺クン、取り合えずこの場はハナれましょうかぁ」

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