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ダリア、引っ越しします。9

「それでダリア様、ご一緒していいんですか?」


「あ、うん。いいよ」


「ありがとうございます!」


ナイトは小躍りしながら部屋に入る。その後ろにイサメが続き、イサメに誘導されて俺とリュウとコロネも入室する。


部屋の中央には白いクロスの敷かれた長テーブルが置いてあり、古風な感じの木製の椅子が幾つも並べてある。


「ダリア様、あちらへどうぞ」


とイサメが奥の方を手で指し示す。その場所には、他のものより威厳を醸し出す椅子が据えられていた。


あれか。上座ってやつか。ぶっちゃけ一番手前でいいんだけど。まあその好意に甘えて上座に座らせてもらったけど。


椅子に座り顔を上げると、


「おいナイト、ダリア様と食事を一緒にできるからって料理は溢すなよ」


当たり前のようにルシファーが座ってた。あとシロも。いつから居たんだ? いつ来たんだ?


「紙エプロンつけてる貴方がそれを言う?」


「紙エプロンは関係無いだろうが馬鹿野郎。マナーは大事だ」


「私よりリュウを注意するべきでしょ。溢す頻度高いじゃない」


「……溢さない、もん……!」


俺の隣に座るリュウが頬を膨らませてぶすくれる。


「ほらほら、ダリア様の前なのだから慎みましょう」


そう言いながらシロは場を鎮めるようにポンと手を一つ叩き、


「シロ殿の言う通りでございます。食事中に私語は厳禁ですよ」


厨房からイサメが料理の乗ったキッチンワゴンを引いて出てきた。しかも不気味に笑って。


あのイサメの顔には少し嫌な思い出がある。口にものを入れた状態で喋ってたら、不潔極まりないと散々怒られた。しかもこの前なんか、口から食べ物が飛んだもんだから、しばらく正座させられた。


危うくチビるところだったよ。


普段は低姿勢過ぎるほど低姿勢なのに、いきなりスイッチが入るからな、イサメのやつ。沸点がよく分からない。


「ダリア様も……お分かりですね?」


「は、はい」


「談笑も必要なのは分かります。ですが、それは一旦口のものを無くしてからにしましょうか?」


「り、了解です」


ひーこえー。睨まないでよ。チビるじゃん。


「ダリアを、イジメないで……!」


俺を守るようにしてリュウが声を張って立ち上がった。いいぞリュウちゃんガツンと言ってやれ。


「………」


「……ごめんなさい」


リュウはイサメの無言の圧に押し潰され、俯いて座ってしまった。


「ではお食事の方をご用意致します」



 ☆



食事を終え、風呂に入り、今はアイスを食べながら夏休みの宿題をやっている。


そう言えば風呂に入る時、リュウが一緒に入りたいと言ってきたから冷や汗が流れたよ。流石にマズいので後で遊び相手になるという事で手は打っておいた。


「……ん?」


数学の証明に手こずっていると、来客が来た。


「……遊ぼ」


リュウだ。髪が濡れほんのり頬が赤く染まっているのを見るに、恐らく風呂上がりなんだろう。


にしても相変わらず綺麗な髪色だ。毛先にかけて虹をつくるなんて、どういう性質なんだろうか。


てか服が脱げそうだぞ、君。頭も拭きたまえ。


「リュウ殿!」


今度はイサメが入ってきた。


「あ、ダリア様申し訳ございません! リュウ殿、そのような格好で出歩かれては困ります! しかもダリア様の前でなど言語道断!」


「ボクは、気にしない、よ……?」


「なりません! ちゃんと身だしなみを整えて下さい!」


イサメはリュウを担ぎ上げ、嵐のように去って行った。


その様子をぼんやりと眺めていたら、急に電話が鳴り響いた。因みに固定電話である。


持ち運びできる小型の物が販売されているらしいが、これはまだ試作品であり個人で使うには魔法適性が必要な為、取扱店も少ないとか。


まあ俺には手堅い商品だ。


「はい、もしもし?」


電話に出ると、覚えのある声が返ってきた。


『こんばんはダリア君』


「……兄ちゃん?」


『当たり当たり。愛しのお兄ちゃんです。明日遊びに行くんでシクヨロ』



「……えっ?」



目の前が真っ暗になった。

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