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ダリア、引っ越しします。8

ルシファーが膝を床につく直前に、俺はなんとか口を開けた。


「……あ、ありがとうなルシファー」


ルシファーはその言葉に反応して素早く顔を上げた。その表情は鳩が豆鉄砲を喰らったようなものだったが、


「おふっ!」


そのまま膝を勢いよく打ちつけて変な顔になった。


「ナイトもリュウもシロも、2週間で建てるなんて大変だったろ。ありがとうな、俺の為に」


ただ素直に感謝の意を述べる。


「こ、光栄です! ダリア様にそのような言葉を貰えるなんて!」


とナイトが太陽より輝く笑みを放ち、


「……ダリア、嬉しい。ボクの頭、撫でて……」


とリュウはいつも通り眠そうな眼で見上げてくるが、俺の手を握って振り子のように中々の速度で動かし、


「もう悔いはありませんわ!」


とシロはハンカチを顔に当てて発光しだした。


テンション高いなこいつら。てかシロがメッチャ眩しい。どういう身体の構造してんだよ。


「はぁ……」


後ろからイサメの静かな溜め息が聞こえてくる。


「……ダリア様がおられるというのに全く嘆かわしい。一言戴いただけでこんなに浮かれるようでは先が思いやられますね。どう思いますか、コロネ殿?」


「気持ちは分からんでもない。まあ俺なら自重はするさ」


「そうですね。もう少し抑えて欲しいものです」


イサメも大概だと思う。でも君、俺が誉めたりすると凄いよね。欣喜雀躍(きんきじゃくやく)するよね。


イサメとコロネにも言わないとだよな。今なら流れに乗ってるからすんなり言えるぜ。


「コロネもありがとうな、いつも気にかけてくれて」


しゃがんでコロネの頭を撫でる。毛並み良くて触り心地がいいんだよな。


「当然の事だ」


落ち着きのあるトーンで返されたが、その直後に大きく動き出した尻尾は喜びを示してるんじゃなかろうか。


で、そのまま立ち上がりイサメを見つめる。目を合わせるのは苦手だが、負けるつもりはない。


「どうされましたか?」


「イサメ、ありがとう」


「っ!?」


イサメが鼻血を噴射した。



 ☆



さて、時は変わり夜である。あれから解散になり俺は頭の整理の為に休む事を勧められ、ずっとベッドの上で漫画を読みながら時間を潰していた。


一応テレビもあるが、俺は基本的に見ない。朝にニュースをつけるくらいだ。


で、未だに状況を把握できない自分がいる。


「失礼します、ダリア様。夕食の時間でございます」


「あ、ああ」


イサメに呼ばれて部屋を出れば、長い廊下が姿を見せる。日も沈んだというのに壁に飾れた照明が昼間のように道を照らしている。それと、霧のメイドさん達。


異様な光景だ。


それはさておき、食事場所は俺の部屋の隣だ。その部屋の前に着くと、勝手に扉が開いた。


「……ダリアぁ、遊ぼ」


中からリュウがコロネを抱いて出てきた。コロネの毛がクシャクシャになっている。揉みくちゃにされたんだな。


「リュウ殿、ダリア様は今からお食事です。あとにして下さい」


「じゃあボクも、お食事に、する……」


「同席でございますか?」


「ん。一緒に、食べる……」


「とリュウ殿が言っているのですが……」


「ん? ああ、いいよ。一緒に食べようか」


リュウにそう返した瞬間、俺の視界が歪み、赤になった。視界が赤色に染まったのだ。


俺は思わず後退するも、その原因は直ぐに分かった。


「───本当ですか!? 一緒にいいんですか!?」


どうやらナイトが俺の眼前に転移してきたらしい。


しかもナイトは俺より背が高い上にヒールを履いて頭が一つ抜ける身長を持っている。猫背気味の俺の視線が自然とその谷間に向かう。


まあ、ただの言い訳である。こんだけ近ければ見ちゃうのが男の(さが)だろう。俺は何一つ間違ってはいない。


「だ、ダリア様……その……恥ずかしいんですが」


「あ、ああ、うん。ごめん。で、急に飛んで来たけどどうしたの?」


「お食事をご一緒できると聞いて!」


ナイトが少し背を曲げて俺に目線を同じ高さにし、キラキラした目を合わせてくる。


どこに居たのかは知らないが地獄耳だな。そう言えばアパートに顔を出しに来てた時は、俺に会いに来ただけだからと言って直ぐに帰ってたしな。

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