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ダリア、引っ越しします。5

「い、いや! バッチリ! 想像の遥か上を行っててビックリしたっていうか……あー、もうね、ヤバいね。ビックリだね。バッチリだね。……えーっと、満足満足! もう十分過ぎるくらいに満足!」


これが俺の全力だ。普段から会話してないから出てきた言葉が安っぽいが、これが俺の全力だ。


「勿体無いお言葉……」


「あ、ありがとうございます」


「ダリア様の意向に添えられたようで何よりですわ」


ルシファー、ナイト、シロが深々と頭を下げる。どうやら納得してくれたみたいだ。


「……ボク、逆立ちしなくて、いい、の……?」


と銀髪娘が首を傾げて聞いてくるが、どこから逆立ちというチョイスが出たんだろうか。


「え、逆立ち? いや、しなくていいよ」


「……喜んでくれた?」


「あ、うん」


喜びより驚きの方が強いけど。


「……そっか。なら良かったよ……」


「ではダリア様、屋敷内へどうぞ」


切り替えの早いルシファーがリュウの言葉に繋がるように声を発し、それを合図に霧のメイドさん達が一斉に動き出し、玄関までの道を作った。



 ☆



「───で、こちらが浴室になります」


ルシファーのこの発言だが、かれこれ12回目になる。どんだけ風呂あんだよ。『こちらが』より『こちらも』の方が文法的に正しいんじゃなかろうか。


トイレに至ってはカウントするのを止めた。部屋数も多すぎて数える気がしない。


今俺達がいるのは5階だ。内観はピカピカしてて庶民の俺の感想としては、とても眩しいの一言に尽きる。場違いもいいところだ。


1階の玄関入って直ぐのところには滝が流れてたし、2階には川が流れてた。魚泳いでたわ。ステンドグラスが張り巡らされた部屋もあったし、床一面ガラス張りの部屋もあった。あと階段とか廊下が浮いてたりとかね。


俺の今居るのは場所に至っては辺り一体が大理石でできている。終始戸惑ってるわ、俺。住む世界が違う。


屋敷内の移動は転移魔法で行われる。まあ広い上に迷路みたいだし、端から端まで徒歩で移動するとなると、結構な時間と労力を消費するだろう。


床や壁にナイトが転移魔法を組み込んだ魔法陣が至るところは描いてあり、それを用いて転移移動している。凄く便利だ。


で、座標を結ぶのが下手糞だった俺は、何回か目的の場所とは違う場所に飛んで、あとから追ってきた皆にメッチャ心配されたりした。


「次が最上階になります」


「あ、あの、ルシファー?」


「はっ」


「……ここまで来といて言うのもアレなんだけどさ」


「なんでしょうか?」


「別にみんな付いてこなくても……」


言いながら後ろを振り返る。


ルシファーを除く代行者達が俺を守るように並び、更にその後ろにはシロの召喚したらしい霧のメイド達が規則正しく列を成している。目測で30人くらい。


ルシファーの案内中、みんなずっと付いてきているのだ。


「皆ダリア様を心待ちにしていましたから、お許し下さい。それに屋敷内とはいえ油断はできません。万が一がありますので、人数が多いに越したことはありません」


「万が一?」


「例えば、階段を踏み外したり」


「まあ、あるかも」


「例えば、照明が落下してきたり」


「絶対無い、とは言い切れないな」


「例えば、ダリア様が廊下に落ちているバナナの皮で滑って後頭部を強打する、などが考えられます」


「う、ん?」


万が一にもその可能性は無いと思うよ。具体的過ぎて。


「ギャグみたいな話ですが、そうとも言い切れません。事実、落ちてますからね」


ルシファーの目線が俺からズレたのでそれを追うと、廊下に何かを見つけた。


大理石でできた廊下の中心で、堂々とその存在を示すそれは───バナナの皮だった。


人生初めてだよ、バナナの皮が落ちてる現場に巡り会うなんて。しかもちゃんと先の部分が上に向いてるし。


「誰でございますか? ゴミを放置して置く不届き者は? ダリア様の御前だというのに」


バナナの皮を視界に入れたイサメが眉間にシワを作る。その隣ではルシファーが目頭をつまみ、呆れた表情を浮かべていた。


「おいナイト、ゴミは片付けておくものだろう?」


「いや私じゃないけど。なんで私なのよ」


「だってお前、バナナが好物と言って……」


「言ってない。一言も」


ナイトが真っ向から否定し、同時にシロが挙手する。


「宜しいかしらルシファー? さっきリュウに『日頃の恨み!』とか言って投げつけてはなかった?」


「……そうだよ、ルシファー。ボクに、投げてた、よ……?」


「いや俺じゃ……ああ、俺か。俺だった」


ルシファーが天井を仰ぎながら納得し、バナナの皮に目線を戻して手を握り締める。すると、潰れるようにしてバナナの皮が消滅した。

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