ダリア、引っ越しします。4
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ナイトの空間転移魔法で移動して屋敷の玄関前に一瞬で到着したが、目の前に広がった光景に圧倒され、目が眩んだ。
まず屋敷がヤバい。周囲が湖に支配されている為に丸い浮島のような土地を有し、そのど真ん中には噴水が設けてある。その噴水を中心にして三日月を描くようにして屋敷が高々と立っている。
窓の位置からして5、6階ぐらいだろうか。高さだけで言うなら俺が通ってる学校より高い。
そして、俺の目の前で頭を下げる者達。
ルシファーとリュウとシロが出迎えてくれたのだ。 だが、その後ろに白い人影がズラリと整列していた。白い人影はみんな煙のように揺れているが、メイドのような格好をしている。
なんだよあのメイドさん達。どっから連れて来たんだよ。誰かの召喚魔法か?
てか、どんだけ立派な建物建ててんだよ。2週間だぜ? おかしいよ絶対。これ欠陥工事なんじゃないの? てか、デカ過ぎじゃね? 絶対要らない部屋がいっぱいあるだろ。
などと脳内をグルグルさせていると、
「ダリア様、お待ちしておりました」
ルシファーがグルグルを止めてきた。相変わらず聞きやすい声だ。
「移住して欲しいという我々の我が儘を聞いて頂き、ありがとうございます」
「お、おう」
「何分未熟な身ではありますが、ダリア様が安らぎ喜んで頂けるよう全力で尽くさせて頂きます。何か不備がありましたら直ぐに対処しますので、お手数ですがお呼び下さい」
「そ、そうか」
俺的には全力を出さないで欲しいんだけど。適当でいいよ、適当で。放っといても生きてるような人間だからさ、俺。
てな事を言いたいが、内気なので言葉を返せない。みんな頑張ってるんだからその好意は有りがたく貰っておくのが筋だろう。
「では早速屋敷内を案内しましょう。これが間取り図になります」
「は、はぁ……」
ルシファーから間取り図の挟まったファイルを受け取って適当に捲ってみたが、なんか迷路みたいにゴチャゴチャしてる。めまいがしたので直ぐに閉じた。
「あ、あの、さ……」
「はっ。なんなりと」
「後ろのメイドさんって、誰かの召喚魔法で?」
「はい。シロの霧の兵になります」
「そ、そうか。じゃあここ、俺達しか住まないって事だよね?」
「その通りです」
「建築面積と人口が比例してなくない?」
「やはりそう思われますか……」
ルシファーはガックリと肩を落とし、両脇に立つリュウとシロが肘で軽くつつく。
「……だからボク、は、もうちょっと大きくしようって、言ったんだよ……」
「呆れられてますわよ、ルシファー」
「ダリアが住むには、小さいよ……」
「私もそう思いますわ。2週間の工期だったけれど、もうちょっと頑張れたのではなくて?」
リュウとシロが小声で喋っているが、バッチリ聞こえてる。なんか俺の思いとは真逆の方向に話が進んでる気がする。
俺はもうちょっと小さくても良かったんじゃない? って事を言いたいの。これ以上デカくしたら建造目的が分からなくなるよ。
リュウとシロの指摘を受けたルシファーは崩れるように地面に膝をつき、そのまま手のひらをつく。
「申し訳ありません、ダリア様。2週間もの時間を戴いたのにご期待に添えぬ事ができず……」
「勝手を言いますが、もう少し工期を頂ければ満足の行くものを建ててみせます!」
俺の後ろにいたナイトがそう言って膝をつき、
「私からもお願いしますわ」
シロも同時に膝をついた。
「いや、いい。指揮を取ったのは俺だ。俺に責任がある」
「……ねーねーダリアぁ……」
リュウが落胆するルシファーを横目に、俺の下に来て裾を引っ張ってきた。
前も思ったが、上目遣いで見てくるその瞳に吸い込まれそうになるな。常に色が変化していて見とれてしまいそうになるが、悲しそうな色を保ち続けていて目を合わせられない。
「……ルシファーは、馬鹿で、嫌な奴だけど、ダリアの為に、頑張ったよ……?」
うん。馬鹿かどうかは知らんけど、頑張ったのは分かる。
「……だから、ボクを代わりに、叱って……? 手伝ってた、ボクも悪いから……」
「え? あ、いや……」
「……なんでも命令してよ。腕立て伏せ、10回くらいなら多分、頑張れるよ……? 1日、なら睡眠禁止にしても、多分平気だよ……? お風呂で、背中流すよ……?」
「そ、そうだねぇ……」
言葉が詰まる。お風呂はマズいんじゃなかろうか。
『建築面積と人口が比例してなくない?』って言っただけだぞ。どっから話が大袈裟になったんだ。
なんか言わないといけないだろ、これ。褒めたら機嫌が直ぐになおるのはイサメで実証されている。
さあ、ボキャブラリーを絞り出せ、俺!




