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ダリア、引っ越しします。3

「……はぁ、全く」


イサメがやれやれといった感じで溜め息を吐いた。


「ナイト殿、ダリア様の前でそのような醜態を晒すのはどうかと思いますが」


イサメがブーメラン発言してる気がする。ちょくちょく鼻血出す君が言える事ではないな。


よし、君も褒めてあげよう。


「でもさ、イサメも美人だよね。スタイルも良いし───って、ああああああああああああああああ!!?」


イサメの頭が落ちた。


いや、マジで。


鼻血出しながら首がグルングルン高速回転して落ちた。鼻血撒き散らしながら床をバウンドして転がって、ナイトにぶつかってようやく止まった。


そんな光景見たら耐性の無い奴は誰でも叫ぶだろう。尻餅もつくだろう。軽くホラーだよ。そういやこいつ自動人形とか言ってたな。


ナイトがイサメの頭を拾い上げ、目を合わせる。


「ねえイサメ。貴女、人の事言えるかしら?」


「……言えませんね。申し訳ありません。ですが、喜ばずにはいられますか?」


「それ分かる」


「お前らダリア様の前だぞ。いつまで遊んでいるつもりだ?」


不意にコロネの低い声が響く。その言葉を聞いた途端、イサメとナイトの表情が青ざめたものに変わり、マッハでひざまづいてきた。


「も、申し訳ございませんダリア様。この失態は許されるものではありません。如何なる処罰をも受けます」


「こ、この失態を挽回する機会を下さい! お願いします! 私のわがままを、どうか……」


消え入るように小さくなるイサメとナイト。そんな2人を見て困惑する俺。


別に土下座する事じゃないでしょうに。今まで土下座する側だった俺からすれば、土下座されるのには抵抗がある。寧ろ謝られること事態に抵抗がある。


「き、気にしてないから。大丈夫だから。だから引っ越しの準備しちゃおう。ね?」


「あ、ありがとうございます! 寛大なるそのお心に見合えるよう、精進致します」


「ダリア様……一生付いていきます!」


謝られる度にこの下り毎回やるけど……凄い疲れる。



───荷物を整理を続けていると、またも目が釘付けになる物を見付けた。


大量の飴だ。


ただの飴ではない。サポートツールと呼ばれる物だ。


照明をつけるにしても、湯船を張るにしても、魔法は必要になる。


電源を入れる時、蛇口のバルブを捻る時、一度魔法を介さなければそういったものが使用できない。パスワードを自動で解くようなものだ。これを生活用魔法という。


生活用魔法は赤ちゃんが2本足で歩く頃には自然に覚える魔法だ。俺は今でも無理だけど。


この飴は母のお手製で、魔法式を組み込んで生活用魔法を使えるようにしてある。1個舐めれば1日は持つ。


サポートツールの形は飴だけではない。腕輪だったり指輪だったり、色々ある。単に俺が装飾品が好きじゃないだけだ。


この飴は生活必需品で俺の身体の一部みたいなものだが、最近は舐めてない。イサメが肩代わりしてくれているからだ。


照明のスイッチを押せば、イサメの魔法が届く範囲内であれば反応してくれる。イサメは四六時中俺の側にいるし、その範囲が相当広いらしいので飴はお役後免となった。


飴に頼り続けるのは親の力を借りているみたいで嫌だったから良い機会だった。自分の力でなんとかしたかったのだ。イサメのおかげでそれが叶った。


まあ俺が魔法を使っているわけではないが、イサメは俺の代行者だから自分の力と言っても良いと思う。



「……終わり、かな」


俺は部屋を見回し、忘れ物が無い事を確認する。2年と3ヶ月も付き合ったんだ、名残惜しさが込み上げる……訳でもないが、まさか夏休みに引っ越しするとは思ってなかった。


「あ、ちょっと待ってて。管理人さんに鍵返してくるから」


「ダリア様がわざわざ足を運ぶ必要はございません。わたくしが行って参ります」


なんて事をイサメが言っているが、君が行ったら管理人さんがビックリしちゃうだろ。


俺は苦笑いで誤魔化し、そのまま部屋を出ようとするも、


「あ、ダリア様お待ちを! せめてお側に!」


「イサメだけでは不安ですので私も!」


イサメとナイトが止めてきた。なんで鍵を返しに行くだけなのにそんなに全力なん? 方向性間違ってない?


「い、いや……あの、鍵返しに行くだけだから。す、直ぐだから」


言い切り、部屋を出て管理人さんに鍵を渡しに向かった。


……待てよ。イサメだけですら未だに対応に困っているのに、あと更に4人加わるのか? 常に俺の側にいんのか? そうだったら気が休まらないぞ。

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