ナイト、依頼を受けてきます。10
「まあ、生きてるか確認しとくか。一応な」
岸辺に立ったルシファーがニヤリと口角を吊り上げる。悪い顔してんなこいつ。何を企んでるのかしら。
ルシファーは被っていたヘルメットを手に取り、振りかぶる。
「プレイボール!」
叫び、ヘルメットを投げた。
目にもとまらぬ速さで大気を裂くように湖の上を走り、一瞬でリュウとの距離を詰め、衝突した。
激しい轟音と共に巨大な水柱が天に向かって吹き上がる。
「あー、スッキリした。じゃあ作業に戻るわ」
肩を回しながら持ち場に戻ろうとしたルシファーだったが、突然豪快に転倒した。
その転倒を不自然に感じた私は、ルシファーの足元に目を向ける。と、水浸しで頭にタンコブを作ったリュウがルシファーの両足を鷲掴みにしていた。
「ルシ、ファー……痛いよ。何するの……? ボク何もしてないのに……」
「俺も膝打って痛いわ。てか、何もしてないお前が悪いんだよ。お分かり?」
「ダリアに会いたい、よ……」
「会話しようか、お嬢さん。───てか、ちょ……! おまっ、何を!」
「……湖、に引きずりこんでやる……お返しだ……」
リュウが目を光らせながらズリズリとルシファーを湖に引き込む。
「河童かお前は! 止めろ、服が濡れる! 自慢の翼が汚れる! ヘルプヘルプ! ナイト助けてくれ!」
「自業自得じゃない?」
「鬼! 悪魔! そんな甲斐性なしだったなんて知らなかった!」
面倒くさいな、こいつ。
でもまあリュウに頼みたい事あるし。取り合えず抑えるか。
「ねえリュウ」
「……ん?」
「ダリア様の事を考えてみて」
「うん……」
「私達はダリア様の為に働いてるの。でも、リュウは何もしてない」
「うん……」
「ダリア様の役に立ちたくないの?」
「……ん。立ちたい」
「じゃあ手伝わないとね」
「頑張る……!」
リュウは湖から上がり、小さくガッツポーズを取る。
「なんでぇい! 俺の時はふて腐れて言う事聞かなかったのによ」
「それはルシファーの説得が悪かったんでしょ?」
「んな事ねぇよ。ちゃんと言ったって」
「ふーん。どんな風に?」
「働かないとダリア様に捨てられるぞ、ってな」
「いやそれは……私も気力削ぎ取られるんだけど」
私もそんな魂を持ってかれるような台詞は聞きたくない。寿命が縮む。リュウの気持ちも分かるわ。
「ねえルシファー、それ自分で言われたらどう思う?」
「そりゃお前……ゾッとするな。世界の終わりを垣間見るな」
そう言ったルシファーは何かを考えるように空を仰いだ。かと思うと、何故か急に正座をした。
「……リュウ悪かった。嫌な事言ったな」
「ボク、も……ごめんなさい」
リュウも座り直し、反省を見せる。うんうん、一件落着見たいね。
「ところでリュウ」
「何、ナイト……?」
「一応は調べたんだけど、これ調べてくれない?」
私は懐から小袋を取り出しリュウに手渡す。
「……ん? 何?」
「アルマジュエルの破片よ」
「アルマジュエルってお前、そんな貴重な物どこで手に入れたんだよ?」
ルシファーが口を挟む。
「戦利品よ。大丈夫、ちゃんと調べたから」
「調べたってなんだ。危険物か? なんか危険な魔法がかかってんのか?」
「一応メタトロンが調べてくれたわよ。でもリュウの方が確実だし。そしたらこれ、ここの設備に使えるんじゃない?」
「確かに使えるな」
「……うん、分かった。調べてみる……」
リュウはアルマジュエルの破片を手の上に転がし、虹色に変化する瞳で観察を始める。
「ああ、ルシファー?」
「どうしたナイト?」
「SSの依頼達成してきたからお金は方は十分過ぎるくらいに稼げたわよ」
「そうか。じゃあ明日から街に買い出しだな」
「ダリア様に会いに行っていいんでしょ?」
「ああ。でもちゃんと帰って来いよ。仕事あんだからよ」
「はーい」
あと1週間か。あと1週間でダリア様と一つ屋根の下とか、素晴らしいシチュエーションね。
ヤバいな。ニヤけるな。
「何ニヤけてんだよ。気持ちわりーな」
「……ナイト、鼻の下伸びてる」
「う、うるさいな! いいじゃん別に!」




