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ナイト、依頼を受けてきます。9

「それじゃ、花でも手向けようかの」


ザイゲツさんが背筋を伸ばして静かに深呼吸をし、両腕を大きく広げ、


「ハッ!」


気合いのこもった発声と共に手を叩き、切れの良い音を塔全体に響かせた。まるで濁った空気を清み渡らせるかのような音だ。


変化が起きたのは空気だけではなかった。花が咲いているのだ。次々に。至る所から。


花達が床を埋め尽くすように時間はかからなかった。色とりどりの花が美しく咲き誇るその光景に思わず見とれてしまった。


「凄い魔法ですね」


「なぁに、大した事じゃないよ。一時的なものじゃ。ほらラガツ、お前達、手を合わせて。黙祷するよ。ダイナ殿とトロン殿も手を借りていいかい?」


「勿論ですよ」


「ハイ」


ザイゲツは石碑の前に立ち手を合わせ、その後ろに私達が並んで手を合わせ、目を瞑る。黙祷を捧げる。



「……さて、それじゃあ行こうかの」



長いようで短かった黙祷を終え、ザイゲツさんが名残惜しそうに歩き出し、赤くなった目のラガツが涙を溢す兄弟達の背中を押しながらザイゲツさんの後に続く。



ラガツさんのように両親を失った気持ちは、悲しいのは分かるが私には到底理解できない。私には両親がいないし、(ちかし)い人を失った事もない。


私にとって……いや、私達にとってダリア様が大切な存在だ。だからこそ言える。あの人を失う訳にはいかない。絶対に。まだ少ない思い出を、作っていくんだ。


「不謹慎ナ事ヲ言イマスガ、ダリア様ガ亡クナッタラ我々モ……」


「嫌な事言わないでよメタトロン。させないわよそんな事」


私も不謹慎だが、この依頼は受けて良かった。気持ちが引き締まった。


「ほら、行くわよ」


「ハイ」


無事に探索は終了し、私達は黄昏の塔を後にした。



 ☆



依頼を済ませて廃城だった場所に戻ると、真っ先にヘルメットを被ったルシファーが目に入ったので大きく手を振る。


「ルシファーただいまー!」


「お帰り無駄肉」


挨拶したらなんかルシファーに悪口言われた。なんだよこいつ。いいじゃん別に、胸あっても。胸は女性の象徴ってのを知らないのかね。


「只今帰リマシタ」


「ご苦労だったなメタトロン。戻っていいぞ」


メタトロンは一礼し、ガラスのように割れてルシファーの翼に帰っていった。


「ねぇルシファー、出稼ぎに出ている私に向かってその口の聞き方はなぁに? 無駄肉じゃないわよ」


「いやぁ、だってリュウのアンチキショーが全然働かねぇんだもんよぉ。悪口の1つや2つくらい言いたくなるわ」


ルシファーが耳を掻きながら愚痴を吐き出す。


城……というには小さいから屋敷に近いが、それを建て始めて早1週間。外装は粗方仕上がり、後は内装を残すのみとなっている。これだけの速さで建築を行えるのは、目の前で鼻をほじっているルシファーが規格外のスペックを誇っているからである。


ルシファーは私を街に走らせて建築用の資料を手当たり次第に大量に買ってこさせ、半日足らずで自分の頭に全てを叩き込むというふざけた知能をもっている。


図面もフリーハンドで起こし、そこから逆算して必要な資材の数量を割り出している。あとはシロが召喚した霧の人形を30体ほどを24時間動かす事で、尋常ではないスピードで作業を進めている。


ルシファーは指示を出し、シロは霧の人形を操って作業をし、私は資金稼ぎと材料の調達をし、リュウはサボり。


まあリュウはダリア様がいないと置物みたいに動かないからね。


「で、そのリュウはどこにいるの? また廃材の中で寝てるの?」


気になったので聞いてみる。


「いや、あそこ」


そう言ってルシファーが湖を指を差す。


確かに湖になんか浮いてる、銀色の物体が。ピクリとも動かない。水死体みたいだ。


「暑いから水浴びするって言ってさぁ。せめて服は脱いで水着に着替えて欲しかったな。常識的によ」


「……あれ死んで無いわよね?」


「大丈夫だろ。だってさっき暇潰しに石ぶつけまくってたし。そしたら睨んできたぜ?」


酷い事してんなこの堕天使。

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