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ナイト、依頼を受けてきます。8

クラウデーモンの上半身が豪快に飛び散り、腕と下半身だけが残った。


まだ相手に動きが見えるのですかさず魔法を紡ぐ。


「───『クリアランス=アイソレーション』」


まずは魔法の被害が広がらないように空間を切り離してクラウデーモンを隔離し、


「『クリムゾンブラスト』」


隔離内に紅蓮の爆発を起こした。


数十にも繰り返し起こった爆発が終わり、煙が晴れる。そこにクラウデーモンの姿は無く、飛び散った魔力の破片だけが残っていた。



クラウデーモンを倒し終え、投げた大戦斧を回収してみんなの所に戻ると、メタトロンも作業を終えたのか、私に近寄って来る。


「ナイト様、核ノ場所ガ判明シマシタ」


「本当?」


「ハイ。コレデス」


そう言って、メタトロンが石で出来た板を差し出してきた。それを受け取り、眺めて首を傾げる。


「コノ階層壁ニ埋マッテイマシタ。クラウデーモント同ジ気ノ流レヲ確認デキマシタ」


「これは……石板? 文字の羅列が書かれてるわね」


頭を悩ませていると、ザイゲツさんが覗いてきた。


「ふむ……召喚魔法の一種ではないかね?」


「召喚魔法……ですか?」


だとしたらクラウデーモンは自然発生したのではなく、何者かが召喚した悪魔という事になる。この塔の異変は人為的に起きたという事ではないだろうか。


「ああ。その石板に召喚の陣を描き、真ん中にくっついてる“アルマジュエル”に蓄積された魔力を使い、クラウデーモンを召喚していたんじゃろうな」


この中心に嵌めてあるのが“アルマジュエル”か。


アルマジュエルには魔力を貯める性質がある。自分の魔力を入れても良いし、大気中に漂う魔力を自然に蓄える事もできる。


確か、とても希少な鉱石である“アルマ鉱石”を加工して造られる宝石だったか。上流階級の者でも滅多にお目にかかる事のない凄く高価な代物だったはず。


「そんな召喚魔法があったんですね」


「王国も広いからのぅ。特殊な魔法が存在しても可笑しくはない」


なるほど。一つ勉強になったわね。


「じゃあ石板をアルマジュエルごと砕けばクラウデーモンは再生しないんですね?」


「そうじゃな。それが確実じゃろうて」


言われた通り石板をグーパンで粉砕した。すると、消え入るように瘴気が薄くなっていき、間もなくして完全に浄化された。


「瘴気が……無くなった。今のが原因だったのは当たりみたいね」


「ハイ。異様ナ空気ガ一気ニ無くクリマシタ」


「ほっほっほ。まさかこの塔の異変まで解決してしまうとはな」


ザイゲツが感心したように言う。


「おぬしらの名が知られてないのが不思議でしょうがないわい。……しかし、新たな問題が出てしまったがな」


「クラウデーモンを召喚した人物がいるって事ですよね?」


「そうじゃ。まあこれは市の方に報告しておくよ」


「そうですね。それより、探索の方は?」


「ああそうじゃな。探させて貰うよ」



「───あったぞ!」


しばらくザイゲツさん達を遠くから眺めていると、ラガツさんに手招きで呼ばれた。目的のものを見付けたらしい。


急いで歩み寄り、目的のものを囲むザイゲツさん達の輪に入り、視線を落として確認する。そこにあったのは、石碑だった。


腰ぐらいの高さの黒い石碑には、人名がズラリと並んでいる。


なんとなく予想はついていた。石碑の中に“鬼龍院”の名前を見付け、私の予想は確信に変わった。


つまり、今回の依頼の目的とは……。


「……ラガツ達の両親の名じゃ」


ザイゲツさんが力の無い声で呟いた。


「この塔の調査に来ていたんじゃよ。古くから存在するこの黄昏の塔は遺跡として学者の好奇心をくすぶらせるからのぅ」


「……3年前、新種の魔物の出現の時に、俺の両親も現場にいたんすよ」


ラガツさんが石碑の前に屈み、小さくなった背中を見せる。


「墓は別の場所あるんすけど、まあ……今年は3回忌ですし、ここで供養したかったんすよね」


「そう……ですか」


私はそれしか返せなかった。いや、何も言わない方が良いだろう。ついさっき会ったばかりなのに同情の念を抱くなど、彼らを蔑ろにするような事はできない。



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