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ナイト、依頼を受けてきます。7

塔の探索は何事も無く進んでいる。


襲ってくる塊魔は私の大戦斧の一振りで片付くし、崩れた足場も魔法で一時的に補修して歩けるようにし、薄暗い視界だって明るく晴らした。


「おねーさんってやっぱりLv.40超えてたりするんすか?」


塊魔に注意を払って辺りを見回していたら、ラガツさんが声をかけてきた。


しかし、うーん……おねーさんか。私そんな歳じゃないんだけどな。ダリア様と同じくらいなんだけど。まあ身長高いし、しょうがないか。


「はい。じゃなかったらヤマタノオロチに挑もうなんて思いませんし」


「それもそうっすね。どうやって強くなったんすか?」


「え? そうですねぇ……」


最初から強かったんですぅ、テヘ!


なんて事は言えなかった。普通に考えたら何かしらの過程を通過して強さを手に入れたと思われる。アホみたいな事は言えない。


いやまあ、実際に元から強かったんだけどね。召喚された時から既に強かったし。……難しい質問だなぁ。取り合えず無難なのを答えよう。


「努力……ですかね?」


「そうっすよね」


「大切な人を守る為、と思えば強くなれますよ」


ダリア様とかダリア様とかダリア様とか。


「まあ強いからといって、本当に守れるかは分かりませんが。力が全てじゃないと思います」


私は自分に言い聞かせるように言う。


ルシファーが頭を悩ませていた。身を呈して守るのは誰にでも出来る。だがそれは違う。ダリア様を守る為に何をすべきか、どのような強さが欲しいのか、と。


「……おねーさん、難しい事言いますね。それ哲学っすか?」


「私達の課題ですよ。でも、何故そんな事を聞くんですか?」


「───それじゃ、次の階に行こうかの」


私の言葉に重なるようにザイゲツさんがポンと手を叩いて合図する。これで4階層目まで探索は終わった。次が最上階だ。


ラガツさんが先に歩き出し、背中を私に向け、


「……弟達を守らなきゃならないんで」


静かに呟いた。



最上階に上がると、これまでの景色が一変した。瘴気がいきなり濃くなり、魔力の濃度が極端に減った。体感で分かる。この階だけ明らかに雰囲気が違う。


「ナイト様、前方ニ巨大ナ魔物ガイマス」


メタトロンの言葉に「そうね」と返し、魔法で辺りを照らす。


「“クラウデーモン”じゃ……」


巨大な魔物の姿を目に映した途端、ザイゲツさんがたじろいだ。


ミノタウロスに似た巨体のそいつは、黒と紫が奇妙に入り交じった肌を持ち、身体の至るところから血管のような赤い線が浮かんでいる。一言で言うと、おぞましい。


「デーモン……ですか。と言うと悪魔ですか?」


「ああそうじゃ。3年前に前触れ無く現れた新種の魔物、それが奴じゃ」


「あれ? でも討伐されたんじゃ……」


「奴は塊魔と言っても過言ではない。身体の大部分が魔力の塊じゃ。この塔に集まってくる魔力を糧に再生してるのじゃ」


「詳しいんですね」


「奴は半年の周期で再生するからのう。その度に討伐隊がクラウデーモンを倒し、情報を持ち帰ってくるのじゃよ。しかし、再生の原因が分かっとらん」


「なるほど。取り合えず、あのクラウデーモンを倒さないと探索もままなりませんよね」


恐らく、クラウデーモンには身体を形成し再生する為の核があるのだろう。


ザイゲツさんの話を聞く限り、あのクラウデーモンは5回は倒されているだろう。それだけ倒しているのに再生の原因が分かっていない。そこから察するに、クラウデーモンの体内に核は無く、どこか別の場所にある。


「メタトロン」


「ハイ、ナイト様」


「多分あのクラウデーモンには核があるわ」


「ソレヲ探セバ良イノデスネ?」


「察しが良くて助かるわ。その通りよ。私そういうの苦手だから」


「デハ、塔全体ノ分析ヲ開始シマス」


メタトロンの足元に魔法陣が展開した。周りにも大小様々な魔法陣が展開し、メタトロンを覆う。


そして私は大戦斧を肩に乗せ、クラウデーモンに向かって歩を進める。


「おねーちゃん頑張れー!」


背中に女の子の応援を受け、臨戦態勢に入る。


塊魔には単純な物理攻撃は通用しない。物理攻撃をするなら、なんらかの魔法を付加しなければダメージを与えるのは難しい。


私は爆発魔法を付加させている。


大戦斧を振りかぶり、クラウデーモンに向かって思い切り投擲する。


クラウデーモンが防御するより先に大戦斧はその巨体を横断し、大爆発した。

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