ナイト、依頼を受けてきます。6
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黄昏の塔。ツルが絡みつき、年期のこもったレンガ造りの外観から放たれる物々しい空気が身体中に纏わりつく。
今回の護衛対象はザイゲツさんとラガツさんに加え、ラガツさんの兄弟3人の計5人だ。
因みに黄昏の塔には、全員に飛行の魔法をかけ空を飛んで来た。みんな空の旅を楽しんでくれた。
別に空間転移でも良かったが、それでは移動時間が無くなるからメタトロンにさっきの話を聞けなくなる、という勝手な理由で止めた。ごめんなさい。
で、さっきの話だが、この黄昏の塔には3年前まで魔物は生息していなかったのだが、突如新種の魔物が出現し、それによって塔の内部が激変してしまい、周囲に生息している魔物の生態系はおろか、自然まで変えてしまったそうだ。
その塔内部の激変というのが、瘴気の発生である。この瘴気は当時までそこに生息していた魔物を全滅させて異形の魔物を呼び込み、自然を殺し荒れ果てた大地に変貌させた。
原因である新種の魔物は直ぐに討伐されたが、変わってしまった環境を元に戻す事が困難だと判断した王国は、黄昏の塔を中心に広範囲で立ち入り禁止区域とし、この件から手を引いた。
微量ではあるが未だにここ周辺には瘴気が発生しており、塔内部は脆くなった足場と新種の魔物によって呼び込まれた異形の魔物が蔓延り、ガイアでは危険地帯として隠れもないとの事。
「アト、ソノ新種ノ魔物デスガ、発生原因ガ判明シテナイソウデス」
メタトロンが淡々と続けた話が終わり、私は心境を溢す。
「原因不明……ね。そんな不安の種、摘んでおこうと国は思わないのかしらね?」
「専門家ヲ呼ブニシテモ、コンナ場所ノ調査ハ気軽ニ行エマセンカラネ」
「それもそうね」
未知の世界である黄昏の塔の護衛など易々とは出来ない。この依頼は2ヶ月も放置されているのだが、それも納得だ。
まあ私がそんな枠組みに嵌まると思ったら大間違いだけど。
「おねーちゃんスゴいね! 飛ぶなんて初めてだよ!」
急にマントが引っ張られたので下を見ると、キラキラした目の女の子が私を見上げていた。
「楽しかった?」
「うん!」
「それは良かった」
言って、私は女の子の頭を撫でる。
そう言えば、まだ今回の依頼の目的を聞いていなかった。聞いてみよう。
「それでザイゲツさん、この塔には何をしに来たんですか? 依頼書には探索とありましたが、そんな旅行気分で来るような場所では無いと思うんですが」
老人に子供4人。この組合せには疑問を感じていた。
「直ぐに分かる事じゃ。護衛の方、宜しく頼むぞ」
「そう。分かりました」
口にしにくい事なのだろうか。まあ直ぐに分かるみたいだし、追及はしないでおこう。
───塔内部に入ると、急に不快な重圧が身体全体にのし掛かった。まだ日中なのに外からの光は僅かしか入らず、瘴気も充満しているせいか視界は悪い。足場も悪く、本来なら美しかったであろう内観は不気味な造りに変わっている。
因みに、瘴気の対策は万全だ。この場にいる全員の身体の周りの空間を遮断して瘴気が入らないようにしている。まあ一応ザイゲツさん達には防護マスクをつけて貰ってる。私はつけて無いけど。
辺りをザッと見渡したが、ザイゲツさんの話の通りチラホラと魔物がいる。しかも魔物の中でも特殊な“塊魔”と呼ばれる種類だ。
塊魔は魔力の塊だ。その為、大地や大気の気の流れが集まりやすい場所、つまり魔力が密集した場所に出現しやすい。
「塊魔が徘徊してるのって、やっぱり新種の魔物の影響って事よね?」
隣にいるメタトロンに疑問を投げる。
「ソウデショウネ。ソノ新種ノ魔物ガ、コノ黄昏ノ塔ヲ塊魔ノ溜マリ場ニ変エタノデショウ」
塊魔は普通なら煙のように実体が薄い魔物らしく、実体がハッキリしてるのは珍しいと聞く。この黄昏の塔の塊魔は実体がハッキリしてるから、ここは魔力の濃度がそれほど高いのだろう。
まあどうでもいいけど。
あの塊魔がこっちに近付く前に片付ければいい話だ。




