ナイト、依頼を受けてきます。4
「はぁぁぁ…………」
ヤマタノオロチを難なく倒したものの、私の口からは深い溜め息が出る。
「ドウサレマシタカ?」
気になったのか、メタトロンが心配そうに尋ねてきた。
「油断……したよね、私。普通ならメタトロンは攻撃を受けなかったのに。ごめんなさい」
「油断ハ誰ニデモアルカト。自分ハコノ通リ、ピンピンシテイマスノデ」
「そうじゃないのよ。こんな覚悟ではダリア様を守るなんてとても……」
「ナイト様ガソノヨウナ調子デハ、自分ナド壁ニモナリマセン。ソレニ、実際ニ今ダリア様ガコノ場ニ居タナラバ、ナイト様ノ対応モ変ワッテイタカト」
「でも私は油断したのよ。慢心からね。……はぁぁぁ」
溜め息と共に肩が落ちる。こんな覚悟でダリア様に使えるなんて……情けない。
「私のバカァ……!」
地面に何度も頭を打ち付ける。痛い。
「ナ、ナイト様!? オ気ヲ確カニ!」
「いいの。気にしないで」
オロオロするメタトロンに、私は額に血を流しながら答える。
このままではいけない。このままでは私の自信が揺らいでいってしまう。このままでは胸が大きいだけの無能になってしまう。
ふと、私は閃いた。
「───《クリアランス=ストレージ》」
異空間に手を突っ込み、ある依頼書を取り出す。と、興味深そうにメタトロンが見つめてきた。
「ソレハ?」
「護衛の依頼よ。難易度はランクS」
「Sデスカ? 護衛ノ依頼ニシテハ難易度ガ高過ギル気ガシマスネ」
確かに。護衛と言えば、街から街に移動する時に道中に出会す魔物から依頼主を守ったり、権力者を刺客から守ったりするのが主だ。
街から街に移動するのにそんな危険な道は通らないし、権力者だって頻繁に襲われるわけではない。しかもランクSの目安レベルが、Lv.40以上。生きる伝説級の実力がなければ達成は困難。
依頼書には“遺跡の探索”と書いてあるから、恐らく、依頼主を守り切るという足枷を付けながらの、高レベルの魔物が蔓延るエリアの探索になるだろう。それなら難易度が高く設定されているのも頷ける。
なんにせよ、私の自信を取り戻すには最適の依頼だ。
「決めた。この依頼も受けるわ。いい?」
「了解シマシタ」
☆
「5人……ですか?」
依頼主から仕事の詳細を聞いたら、いきなり物凄いカーブのボールを貰い、首を傾げた。
と言うのも、護衛対象が5人いるらしい。これは予想外だ。依頼書には何も書かれてなかったし、護衛対象は1人だけだとずっと思ってた。
「ええ。遺跡までワシと、ワシの曾孫達を連れていって貰いたいのじゃ……」
目の前に座る老婆が掠れた声で答える。
今いるここは竜道山から結構離れた“商業都市ガイア”。その一等地の中でも一際目立つ大きい屋敷の一室である応接室にいる。
私とメタトロンが並んでソファに座り、お洒落なガラステーブルを挟んで向かいに座っている老婆こそ、この屋敷の主人あり今回の依頼主その人である。
垂れ下がった目蓋に年期の籠った白髪とシワ。座っているにも関わらず杖をついている。90歳越ているだろう。
老婆の名前は“鬼龍院ザイゲツ”。凄い名前だ。依頼主の名前見たとき思わず二度見しちゃったよ。
あのあと直ぐに依頼主の所在地であるこの都市まで空間転移で移動し、直接屋敷に足を運んだ。
ヴィジランテに登録しているとその証が配布されるが、私達は登録をしてないから証を持っておらず、代わりに依頼達成の報告完了時に発行される完了報告書の本人控えを見せ、あとフルフェイスヘルムを外したら入れて貰えた。
警戒心薄くするから女性って便利ね。
なるべく顔は見せたく無かったけど、依頼主に対してそれは失礼だ。まあ挨拶して直ぐに被ったけど。
で、本題である。
「その遺跡と言うのが“黄昏の塔”と書いてあったのですが、どういう場所なんですか?」
ヘルムの口元の部分を開口し、出されたお茶を手に持って質問する。危険な場所だったはずだが、詳しくは知らない。
ダリア様の記憶を元につくられた私達には、ダリア様の知識が頭に入っている。思い出の方の記憶はあまり無いが、勉学や雑学といった類の知識は受け継いでいる。
“黄昏の塔”と言えば、商業都市ガイアから南に向かって伸びる街道沿いの末端に立ち竦む古びた建物だ。昔は観光名所として賑わっていたらしいが、魔物の増加で今ではその面影は無いらしい。




