ナイト、依頼を受けてきます。3
私は適当な足場に降り立ち、メタトロンの指差す巨影を見据える。
首が八つある巨大な蛇。
そのぐらいの印象しか持たなかった。アレの首を1つ持ち帰れば依頼は達成できる。まあ確かにこんな山の麓にいれば討伐の依頼が入るのも頷ける。
さて、早く片付けようかな。
「ドウシマショウカ。慎重ニ近付イテ隙ヲ突キマスカ?」
「必要ないわ。あ、メタトロン、このヘルム持ってて」
脱いだフルフェイスヘルムを放り投げ、メタトロンが受けとる。
「ナイト様……マサカオ一人デ?」
「ええ」
即答し、軽く跳躍。そしてヤマタノオロチと同じ土俵に降り立ち、眼前のヤマタノオロチを見上げる。
ヤマタノオロチも私を敵と認識したのか、8つの首が同時に咆哮を浴びせてきた。
「───《クリアランス=ストレージ》」
その威嚇には全く動じず、空間を歪ませて中に両手を入れる。この魔法は、私が作り出した異空間にものを保管出来る魔法だ。
まあこんな事している間に2つの首が鋭い牙を光らせて私へと迫って来るのだが……
遅いわね。
空間から両手を引き抜き、
『ぐぎぁぁあああ!』
その二つの太い首を切り落とした。
ドスリ、と首が地面に落ちる鈍い音が響く。無くなった首から濁った血を流しながらヤマタノオロチは荒々しく巨大を蠕動させ後退する。
大戦斧。私が今両手に持つ武器だ。その白銀の刃は私の身長ほどの大きさがあり、紅に染まった持ち手を合わせると身体の2倍の大きさになる。重量は結構あるが、身体強化の魔法を使っているので苦にはならない。
「あと首は六つね」
大戦斧をヤマタノオロチに向かって投げ付け、それと同時に駆け出す。
投げた大戦斧はヤマタノオロチの胴体に直撃し、狼狽える間に難なく奴の懐に飛び込めた私は、胴体に突き刺さった大戦斧を、
自慢の紅いツインテールで抜き取った。
私には髪を操る魔法があり、このツインテールは手足のように自在に動かす事が出来る。これのお陰で、私は大戦斧を計4本を振り回す事が出来る。
まあ他の代行者達の前ではアドバンテージにもなりはしないが、ヤマタノオロチには十分だ。2本でも事足りだろう。
だってほら、
『ぐぎぁぁああああああああ!!』
もう残り2つになっちゃったし。
残り二つの首が痛みに苦しみながら空に向かって悲鳴を叫んでいる。首6つを呆気なく切り落とされた奴にはもう、私に対抗出来る手段はないだろう。
戦意喪失に近い状態のヤマタノオロチの残りの首を、私は容赦なく切り捨てた。
「オ見事デス」
「ありがとう」
頭を全てを異空間に回収してメタトロンのところに戻ると、敬服の言葉を貰った。
「赤子ノ手ヲ捻ルガ如ク、デシタネ。流石デゴザイマス。SSノ依頼ナド、ナイト様ニトッテハ暇潰シニモナリマセンネ」
「褒めても何も出ないわよ?」
満更でもない笑みをメタトロンに返す。
メタトロンだったから良かったものを、ダリア様に褒められてたら……爆発して死ぬな、私。
「ッ!? ナイト様オ下サイ!」
急にメタトロンが叫び、私の横を風のように通り過ぎた。
何事かと思い振り向いた、瞬間、
「グッ……!」
メタトロンが吹き飛んで行った。
「メタトロン!」
「……心配イリマセン!」
メタトロンは直ぐに身を翻して地面に着地し、私の下へ戻ってくる。
「ドウヤラ……マダ生キテイルミタイデスネ」
「……そうみたいね」
ヤマタノオロチはまだ生きていた。
私達の見据えるそこには8つの首を失った蛇の姿は無く、頭を1つだけを持つ禍々しい蛇の姿があった。
ヤマタノオロチ。一般的には“八岐大蛇”と書く。私もそう書くだろう。しかし、これは誤りだった。
“八岐(八つに分かれた首)”ではなく、“八叉(八つの股がある)”と言う字を書くのだ。つまり、首は全部で九つ存在する。
「ナイト様、来マス!」
「あ、髪が滑った」
間違ってヤマタノオロチを縦断してしまった。
首を輪切りにして頭は無傷で回収するはずだったのになぁ。ビックリして髪の操作を間違えてしまった。まあいいか。




