ダリア、召喚します。2
☆
「くっそ……」
顔の腫れを擦りながら鍵を開ける。
俺の住まいは学校から徒歩で約30分の場所にある。1kで部屋数6つの少しボロいアパートだ。その2階の一番奥が俺の部屋だ。
親の事を悪く言ってるようで心苦しいが、こんなアパートに住んでる俺に、そんな大金は無い。
と言うのも、先程の4人組のイジメっこ達の事である。5万も持って来いとか、正気じゃねーよあいつら。精神科行って来いよ。
何も最初から暴力の被害受けていた訳では無い。
高1、高2は案外順調だった。確かに魔法の実践授業である“魔法実技学”は特別枠として自習していたし、普段から魔法を使っていなかったので“零魔法症”と勘繰られはした。
それに親が送って来た護身用の魔法具のおかげで魔法を使えると錯覚させたりした。
しかし一変。今年の春のレベル測定での俺の診察結果が漏れたのだ。
てかイジメっこ達に見られた。プライバシーがあるだろうに。
で、完全に目を付けられた訳である。
先生に言っても……まあ頼りにならないだろうな。寧ろ自分でなんとか解決したい気持ちだ。
30分の帰路の中でずっと考えていた。
どうすれば良いのか。
やはり“零魔法症”では無いことを証明するのが手っ取り早いだろう。
それが根本的な解決になるかは分からないが、魔法が使えれば“魔法実技学”に出席でき、評価が得られる。それに一般教養を加えれば、学年でも上の順位になるだろう。
馬鹿でも実績のある奴に手は出さないだろう。
……出さないよね。
……出さないよな?
あ、やっべ。この作戦駄目な気がしてきた。
とにもかくにも、色を持たない俺が魔法を使えるようにする為には、とある事を成功させなければならない。
俺としては、俺と同じ境遇の『星呼び』がどうやって魔法を行使しているのかが知りたい所だ。
『王国の護り手』とも謳われる彼も、色を持たない魔力の持ち主だそうだ。しかし魔法の使用方法については黙秘を貫いてるらしい。非協力的な人なのだ。
俺の憧れの人だが、俺は別の方法を取る。
俺に可能性を与えるその方法は───
“召喚魔法”である。
まあ一回失敗してるけど。
☆
場所は人気の無い森っぽい場所。アパートから自転車を飛ばして1時間と30分くらい掛けて来た。もう20時を過ぎている為辺りが暗い。恐怖心が身震いを起こす。
まあ……魔物は出て来ないよな。ちょっと行ったら人が住んでる所に出るし……。自転車で20分くらい掛かるけど。
それより、さっさとしないとアパートに着くのが22時過ぎてしまう。補導されるのは避けたい。
明日から夏休みだし、とノリで来てしまったが、失敗だった。明日にすりゃ良かった。
近くの安定した足場にランプを置き、テープでつぎはぎした一坪程の紙を広げる。紙には面積一杯の円と解読出来ない文字が規則性無く描いてある。
手作り感満載のこの魔法陣は、半年ぐらい前に俺が描いたやつだ。前にやった時に魔法陣が消えてしまったので描き直した。
左手には自由ノートを抱え、右手で“聖女の書物”を開く。
召喚魔法には“展開式”と“代行式”の2つがある。“展開式”は大量に召喚出来るが個体が弱い。“代行式”はその逆。
この魔法を専門とする召喚士の中には、代行式でとんでもない数を使役出来る人もいるが。
あと、召喚出来る存在が、自分でつくるものと既存するものの2つである。既存するものと言うのは、魔物や聖獣などの事だ。それらを呼び出し使役する事が出来る。
俺が行うのは、代行式で自分でつくる召喚魔法。
代行式には利点がある。自分の魔力を代わりに使わせる事が出来るのだ。“代行獣”や、獣と表現しにくいものは“代行者”とも呼ばれる。俺の大量の魔力のおかげで代行者は多分強いのが出来る。
因みに、2年前に既存するものを召喚しようとしたら、変なのが出て来て退治するのが大変だった。
だから今回は自分でつくろうと思う。その為に自由ノートを持ってきた。
つくる為には想像力が重要になってくる。あやふやなままでは変なのが出来てしまう。この自由ノートには兄ちゃんのデザインしたキャラクターと俺の変な落書きが描いてある。
イメージを明確にする為、ノートを開く。
久しぶりに見るけど……懐かしいなぁ。色々と謎設定書き殴ってたな。
なるべくシンプルなのが良いよな。あと強そうなの。
パラパラとページを捲って行くと、いい感じのキャラクターを見付けた。丸みを帯びた黒い鎧のキャラクターだ。




