ナイト、依頼を受けてきます。2
「……ねぇ、メタトロン。もしかして私って女性の魅力が無いのかな?」
「今ノナイト様ハ性別ヲ判断スル為の情報ガ不足シテイマス。間違ワレテモ仕方ガ無イカト」
「そ、そうね。ありがと」
良かった。少し自信が出た。帰ったらダリア様に聞いてみようかな。
「いや……でも……」
腕を組んで頭を悩ます。
ダリア様に聞いて、悪い答えが返って来たらどうしよう……。立ち直れる気がしない。既にダリア様から“露出が凄いね”と苦笑いを頂いている。
でもダリア様に真実を聞いて今のこの不安を払拭したいし……。
「おい兄ちゃん、無視するなんて良い度胸じゃねぇか!」
考えていたら変な人達が痺れを切らしたみたいだ。短気ね。絶対女性にモテないわね、この人達。
「ごめんなさい。少し考え事をしていたから」
「あん? その声……まさかおめぇ、女か?」
「そうだけど……いけない?」
「女が昼間っからこんな場所で彷徨くなんざぁ、いけないねぇ」
私だって好きで来た訳ではない。ただ、この広大な王都には片手で数えらる程しかヴィジランテの経営店が無く、ダリア様のアパートに一番近かったのがこの酒場だっただけだ。
王都はいえ、貧富の差は目に見えて激しい。王城がそびえる西側は比較的裕福だが、東側はそうでもない。道を外れればスラム街のような場所に出たりするのもザラだ。
この酒場付近の地区は治安が悪く、出入りするヴィジランテのメンバーもガラの悪い者が多い。
ダリア様の自宅の場所は、やや貧困層に入る。これは由々しき事態だ。ダリア様をいつまでもそのような場所には居させられない。そういう意味もあって移住の案を進言した。
ダリア様の為に早く依頼を済ませないとね。こんな品に欠ける者達に構ってられないわ。
「そう……ご忠告ありがとうね」
変な人達の横を抜けようとすると、
「待てや姉ちゃん!」
呼び止められた。
「何? 急いでるの」
「ちいっと俺らと遊んでかねぇかい? よく見りゃ随分デケェ胸を持ってんじゃねぇか」
変な人がニヤニヤとイヤらしい顔で私の胸に手を伸ばしてくる。昼間から欲に忠実な者達だ。見ていて滑稽だ。
「急イデイルト、言ッテイルノデスヨ」
顔に一発入れようかなぁ、と思っていたら、メタトロンがその手首を掴んで動きを制止させた。
「あん? なんだよちっこいの」
「今ナラバ見逃シマス。コンナ所デ折角ノ五体満足ノ身体ヲ欠陥品ニシタクハナイデショウ?」
「んだぁ? バカにしてんのか?」
変な人が額に血管を浮き上がらせて怒りを見せてくる。
「いいわよメタトロン。私が片付けるから」
「ワザワザナイト様ガオ手ヲ下ス必要ハアリマセン。自分ニオ任セ下サイ」
そう言って、メタトロンは変な人の手首を握ったまま、空いた手でデコピンを見舞った。
「がっ……!」
変な人は一瞬で白目をむき、メタトロンが手を離すと、変な人はそのまま地面に突っ伏して動かなくなった。
「威勢ノ割リニ脆イデスネ。次ハ誰デスカ? 次ノ人ハ片腕ヲ貰イマス」
天使がそんな物騒な事言って大丈夫なのだろうか。まあ堕天使の使いだし、いいのか。
「ちっ……行こうぜお前ら」
残った変な人達は力量差が分かったのか、気絶している変な人を担ぎ踵を返した。
「無駄な時間だったわね」
「ハイ。全クデス」
☆
竜道山。
切り立った崖を多く持つ王国でも最高峰の岩山で、道と呼べる道は足の踏み場が無いくらいに荒れまくり、その殺意に満ちた傾斜は名の知れる冒険者ですら引き返すほど。
更に、魔物の中でも最強クラスの種族である竜が多く生息している。いや、生息している魔物のほとんどが竜なのだ。
人格破綻者でもない限り決して足を踏み入れる者はいない死の山。
まあこんなもの、私にとっては右から左に受け流せる話だ。それにこの話はもっと奥の方だ。持ち上げ過ぎだと思う。麓に近い場所は普通になだらかな山道だしね。
「シカシ便利ナ魔法デスネ、空間転移ノ魔法ハ」
飛行魔法を使用しながらヤマタノオロチを探していると、私より下を飛んでいるメタトロンがふと呟いた。
因みにメタトロンは天使なのでちゃんと翼は持っている。人の気配も無いのでその美しく光らせる6枚の翼で優雅に飛んでいる。
「普通ナラバ王都カラココマデ、2、3日ハ掛カリマスカラネ」
「陸道でそれくらいだから、飛んでくれば1日くらいかしらね? 確かに便利ね。30秒くらいで着いたからね」
「ムッ……! ナイト様、アレヲ!」
メタトロンが急に岩陰に身を屈め、遠くで蠢く巨影を指差した。




