表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/52

間話、悪夢の再来。2

「ディエル殿下、自分の国を悪く言うのはどうかと思いますぞ?」


落ち着いた口調の初老の紳士が方眉を上げる。


「済まないコウジ。許せ。気がどうかしていた。なんせこれは、国の存亡に関わるかもしれん。失敗は許されないのだからな」


「まさか殿下から弱気な発言を聞くとは……長生きはしてみるもんですな」


初老の紳士───コウジが天井を仰ぎながらしみじみと白い髭をさする。


「どこが弱気なのだ。それにコウジ、そなたはまだそのような歳でもあるまい! 白髪が多いだけだ」


気勢を取り戻したディエルが、本題の事を思い出してアレンに向き直る。


「……話が逸れてしまったな。なんにしても、私が思うの強い者を集める事だ。実際のところ、Lv.40を超える魔物の対処はそれしか無い」


そう。弱者の攻撃では強者を転ばす小石にもならない。


困ったものだ、とディエルが肩を落とす。


「幸いにもまだ吸血鬼とヤマタノオロチによる被害は出ていない。ヤマタノオロチのについては暫くは大丈夫でだろう。(のろ)い奴だからな。被害が出ない内に防衛網を敷き、その間に戦力補強を行う」


「戦力補強、と言いますと?」


「アレン殿、こちらをどうぞ」


アレンが疑問の声を漏らすと、コウジから何かの資料を渡された。その資料に目を落とし内容を確認する。そこには、人名と数字の列がズラリと並んでいた。


「これは……?」


「この前行われた軍の演習結果だ」


「第一師団と第二師団の一対一で行われた模擬戦ですね? これが何か?」


ディエルが引き出しから、またも資料を取り出しアレンに提示する。


「そしてこれが、国の観測隊が出した兵士一人一人のレベル測定結果。そしてこっちが、とある男の出した兵士一人一人のレベル測定結果だ。比較してみろ」


そう言われ、アレンは机に置かれた数字の羅列をしばらく眺め、ディエルに冷や汗をかいた顔を上げる。


「自分、こう言うの苦手でして……」


「まあこんな大量の人数を直ぐに比較しろと言われても無理だな。私も無理だ」


「お、お戯れを……」


「茶目っ気だ、許せ」


「それで、これが何か?」


「集計した結果、ある事が判明した」


随分と回り道するなこの人、と思いながらアレンはディエルの言葉を待つ。


「観測隊のレベル測定の精密度は7割弱。7割近く正確にレベルを測定出来る。……が、とある男のレベル測定の精密度は9割強だ!」


「そ、それはつまり」


「今までより、より正確に実力差を知る事が出来る。戦力を高めるにはこの男を頼るしかない。お前も知っているだろ? この男を」


そう言って、ディエルが机の上で写真を滑らせる。


「最上ヤスユキ……」


アレンから友人の名前が自然に出た。


「その者は2年前に賊との戦いで片眼を失って軍を引退。だが、半年前にクラスレジェンド入りを果たしたそうだ。『一隻眼』の異名を持ってな。既に軍に復帰する報せは預かっている」


「成るほど、ヤスユキが『一隻眼』だったのですか。それは初耳です。確か……“魔眼”を持つそうですね? この測定結果も、魔眼の力ですか?」


「そうだ」


ディエルは勢い良く立ち上がり、今までの話を含めて言葉を放つ。


「この問題は早急に対処しなければならない。しかし10年前の失態がある為に成功させねばならない。だが時間は掛けられない。そこで、そなたに質問だ」


「はっ」


「『一隻眼』の力を使い、兵士達の中から精鋭達を選りすぐるか、未だ見ぬ力を持つ民の中から思わぬ掘り出しものを探し当てるか、どちらが確実だと考える?」


前者は、観測隊が既に兵士達の実力をほぼ見定めているので、クラスレジェンドの発見は望めない。目的は、『一隻眼』がより正確にし、実力のある者を見極める事にある。という意。


後者は、軍が把握してない実力者、若しくはクラスレジェンドの発見が目的だ。本人が知らないだけで、潜在能力を秘めている者もいる。という意。


「なっ! 国民を戦場に出すのですか!?」


「慌てるな。そこまで私も愚かではない。戦う意思のあるものに呼び掛けるさ。今は猫の手でも借りたいのだ。そなたも考えてくれ、この国が良くなる為に、な」


「そう、ですな……。そういう事なら後者が宜しいかと」


「そうかそうか! やはりな! それで行こう! おいコウジ、直ぐに取り掛かるぞ」


「承知いたしました、殿下」


喜びを見せ行動に移るディエルと、国を守る決意を今一度心に誓うアレン。



国の為に最善尽くべく思考を巡らしたディエルのこの策も、後に起こる“悪夢の再来”の前では机上の空論でしかない事を、今の2人は知るよしもない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ