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ダリア、ちょっと学校に行ってきます。6

「今の溜め息は何かな?」


「アイスが溶けてしまうので、早く用件を済ませたいのですが」


目の前で勝ち誇った顔を続ける渡辺カロスに向かって、歩を進める。あの顔が気持ち悪いから、まずは顔面に一発ぶち込む。


「威勢がいいねー! もしかして俺に勝てるとか思ってんの? 馬鹿だねー。俺の事知ってんでしょ? 俺結構強いんだぜ? 昔はヴィジランテでもA級の籍に身を置いてたん───がっ!?」



ごちゃごちゃ喧しいので顔面に右ストレートをぶちかました。



その衝撃で渡辺カロスの身体が浮き上がったが、直ぐ様片足を掴み、一本背負いの要領で地面に叩き付ける。


「その姿はお似合いですよ」


気絶して動かなくなった渡辺カロスの頭に足を乗せ、踏み付ける。よくこの程度の実力であれだけの虚勢を張れたものだ。


ふと、ダリア様がこいつの弟から金銭の貸し借りを───否、ダリア様が一方的に貸していたのを思い出し、兄の渡辺カロスの財布から1万を抜き取る。


まあバチは当たらないだろう。それでも、窃盗紛いの事をしたのは気が引けたが。


「さて……」


辺りを見渡す。動揺の空気がそこらを漂っている。


恐らく、渡辺カロスが連れて来た身を隠すのもロクに出来ない下等生物共だろう。気配の数は5人。


実を言うと、アパートを出た時からこの気配には気付いていた。尾行されているのは分かっていた為、わざわざ遠回りして人気(ひとけ)の少ない道に入ったのだ。


尾行しているのを気付かれた、とは考えなかったのだろうか。行きと帰りで道が違うのだから、少しは勘付きそうだが。


まあ結果がこれだ。人数がいるから油断したんだろう。


少し待ったが、一向に姿を現す気はなさそうだ。渡辺カロスが一瞬で敗北した事で、出ようか出るまいか迷っているのだろう。


来ないならこちらから行く。コロネ殿とナイト殿がダリア様のお側に居るが、危害が及ぶ事が万が一にも考えられる場合には、全力で対処する。



───20秒。


残党狩りを開始してから、全員を地面に突っ伏させるまでに費やした時間だ。


下等生物共はその辺の木に括りつけ、身動きを封じる。まあ、しばらくは目を覚まさないだろう。


あとはナイト殿に任せるつもりだ。彼女は様々な魔法を修めている為、こいつらを運ぶのなんて朝飯前だ。ヴィジランテに引き渡すのも小指でこなすだろう。


では、帰りましょうか。


「……1分30秒」


も、掛かってしまった。ダリア様を待たせている。競歩で帰ろう。



 ☆



「……え、あの、わざわざ買って来てくれたの?」


「ご、ご迷惑だったでしょうか?」


アパートに着いて直ぐにアイスを差し出したら、ダリア様から驚嘆の顔を頂いた。……早計だった。ダリア様にお尋ねしてから買いに行くべきだった。


「そ、そうか。あれ聞こえてたのか。なんか……ごめんな。買いに行かせたみたいで」


ダリア様の声が小さくなる。


ああ、なんという失態。主人に気を使わせて何がメイドだ。これではわたくしもあの下等生物と変わらないではないか。


「いえ、わたくしが勝手にしたまでの事。ダリア様が気にやむ事ではございません」


床に膝をつき、頭を下げる。わたくしにはダリア様に会わす顔が無い。


「いや……違うな。こういう時はあれか……」


ダリア様が顎に手を当て、少し険しい表情で呟いている。そして、わたくしの目を見つめて来た。


「……イサメ、買って来てくれてありがとう。みんなで食べようか」


(いびつ)な笑いだった。


しかし、喜んでくれたようで鼻血が出そうになった。勿論自重した。



いつか、その歪な笑いではなく、本当の笑顔を見させて頂きますよ、ダリア様。

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