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ダリア、ちょっと学校に行ってきます。1

俺の心とは裏腹に、今日は天晴れな程に晴天である。雲一つ無い。


昨日の引っ越しの件だが、城の完成は2週間を目標にしているそうだ。


一般の家だって1ヶ月以上掛かってるぞ? プロがやってもその工期なんだぞ? それを普通の家より明らかに規模のデカい城を、それもあんな森の中で2週間なんて……どう考えても無理だろ。


とか思ったが、今日の事を考えたらどうでも良くなった。


……そう。なんせ今日は待ちに待ったイジメっこ達に金を払う日だからな。俺の鬱メーターがカンストして今にも吐きそうだ。この晴天が憎たらしいね、全く……。


歯ブラシをくわえながら鬱に浸り、アパートのベランダ窓から空を見上げてぼーっとする俺。


「ダリア様……別に行かなくても宜しいのでは?」


後ろから気遣わしげな声でイサメが言葉をかけてきた。


心配してくれるのは有り難いが、今の俺にはイサメが置物にしか見えない。ずっと思っていたが、待機している時のイサメは総身が全くぶれない。常に綺麗な姿勢を保っている。


喋りさえしなければ精密に出来た等身大の人形だ。自動人形と言うのも頷ける。


「あー……行かなきゃ何されるか分からないしな……」


「わたくしめにお任せ下さい。そんなダリア様にたかる知能の低い生物など、生きる価値もありません。万死に値します」


「いや、殺すのは不味いって」


「半殺しにします」


「そういう物騒なのはちょっと……」


「ですがダリア様、わたくしにも貴方様を守ると言う役目がございます。これをみすみす見逃す気はございません」


「だからって暴力はなぁ……」


「で、では、どうすれば……?」


「……あ、ちょっとうがいしてくる」


イサメに返す言葉が何も出ず、逃げるように洗面所に駆け込んだ。


気を引き閉めようと顔を洗い、鏡で己の不甲斐ない顔を見る。



……情けない顔だ。こんな顔で言い返して、イサメは首を縦に振るだろうか。……振りそうだな、あいつは。


自分がいったい何をしたいのかも理解してないのに、何を言い返せるのだろうか。


ああそうだ。俺はいったい何がしたいのだろう。魔力の証明か? 代行者達の強さを見せ付けたいのか? このまま惨めな生活をしていくのか?


……分からない。



右の目元を指で軽くなぞる。



何も俺は最初からオッドアイだった訳じゃない。左の赤い瞳は兄から貰ったものだ。実を言うと、右に収まっている黒い瞳は……光が見えていない。


いつだったかは覚えていないが、友達が居たのを覚えているから、まあ小学校の1、2年の時だ。通っていた学校に教師に糞な奴がいたんだ。“零魔法症”をバカにする聖職者が。


まあ、異端児の俺がクラスのムードメーカーだったのが気に入らなかったのだろう。階段から突き落とされた挙げ句、失明だ。


しかし、その教師がやったと言う証拠がどこにも無く、俺の不注意による事故で片付いてしまった。今はその教師はぶた箱に入ってるらしいが。


で、共働きの両親の変わりに兄が病院に駆け付けてくれた。


『2つあるから1つ無くなっても平気だ。目はそういう風に出来てんだよ。だからテメェにやるよ』


兄の荒唐無稽な持論だ。両親にとっては苦渋の決断だっただろう。健康な兄から片方の視力を奪うか、魔法も使えず視力を失った俺をこのままにしておくか。


俺なら考え過ぎて発狂してハゲるね。


しかも、光を取り戻す確率は極めて低かったそうだ。随分と無茶な博打をしたもんだと思ったが、魔法医学の至宝と謳われる医者が運良く居合わせた為、その手腕を存分に発揮してくれたそうだ。


確かこの頃だったな。兄が無駄に絵が上手いって知ったのは。病室が同じだった為、兄が自慢気に見せ付けて来たのを覚えてる。励ましてくれたのを覚えてる。


辛かったろう両親も、毎日笑顔で見舞いに来てくれていた。



「はぁぁ……」


深い溜め息が無意識に出る。



俺は本当に何も出来ないんだな。


常に親か兄が何かしてくれた。


俺は、実家を離れて何をしたかったのだろうか。


分からない……。


なんも考えてないんだな、俺。


何を頑張って何も出来ない事を示しに来ただけじゃないか。


いや、そうなる事を望んでいたんじゃないだろうか?



……もう止めよう、考えるのは。


頭使い過ぎるとハゲそうだしな。



「───では、なんの為に俺らを召喚したんだ?」



いきなり洗濯機から黒猫が飛び出した。

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