ダリア、代行者達に会いに行きます。2
予想だにしていなかった状況に、しばらく直視していると、可憐な声が落ちてきた。
「だ、ダリア様……そんなに見られては困ります。恥ずかしいので……」
正気に戻り顔を上げると、頬を赤く染めた女性が困った表情で俺を見下ろしていた。
綺麗な紅に染まった長い髪は踝にまで届き、軽くウェーブがかかっている。ツインテールというヘアスタイルだ。
ぱっちりと開いた目には紅い瞳が宿り、可愛いと美人を足して割った整った顔立ちには、ハートを射抜かれる奴が多いんじゃないだろうか。
あと、デカい。胸が。ヤバい。
デカいと言えば、身長も高い。底の高い靴のせいもあるだろうが、紅い色のドレスに似た薄地の衣装からはスタイルの良さが際立ってる。
「……えっと、君は確か……」
「ダイナ・マ・イトボディ、主命に従いお迎えに上がりました」
巨乳の人がひざまづき、頭を垂れる。そこへ、足音を立てずにメイドさんが俺の後ろに立つ。
「来ましたか」
「メイドさん、ダリア様に迷惑はかけてない? 心配してたんだけど」
「全力で尽くしております」
メイドさんが胸を張って誇らしげに自慢する。全力過ぎて空回りしてる気がするけどな。
「そう。なら良かった」
巨乳の人は立ち上がり、俺に顔を向ける。
「ダリア様、早速向かいたいんですけど、飛んで向かうのと一瞬で着くの、どちらがいいですか?」
「飛ぶ? 飛べるの?」
“一瞬”と言う単語が少し引っ掛かったが、飛ぶと言う言葉に意識を持っていかれたのでスルーした。
確か、飛行魔法は難易度高かった筈。クラスレジェンドに名を連ねる『風神』が半永久的に飛行出来るそうだが、その人ぐらいしか飛行魔法を使える人は知らない。
「飛べます」
俺の疑念の声は、巨乳の人にアッサリと返された。
「“天域魔法”は8割、それより下位の魔法はほぼ全て習得してますから」
なんか巨乳の人が凄い事言ってる気がする。
“天域魔法”とは、魔法に順位を付けた時の各位の名称。全部で七つの位階があり、“天域魔法”は上から二番目の強力な部類に入り、相当な実力を有していなければまともに扱えないらしい。
しかも、全ての魔法が自分に合うわけではない。そこには個人差があり、得意な分野があるのだ。
それを、“天域魔法”を8割、それより下位の魔法をほぼ全て使用できるのは並ではないだろう。
だが、普通の人からすればとんでもないんだろうが、魔法を習得するという大変さを味わった事の無い異端児の俺としては、鼻くそほじりながら聞き流せる。
他の人は息をするように魔法を使えるのを、俺はそれすら出来ない。認識の差が大きいのだ。
凄いのは分かる。が、その域は出ない。
他人が難しいと言っている事を、俺がそれに便乗して難しいと、さも自分の事のように言っているだけだ。
まあ、この巨乳の人もワイバーンを倒せるくらい強いんだろうな。
そのようなものをメイドさんの他に召喚出来た自分に驚きを隠せない。もしかしたら他の代行者達のレベルも高いのかもな。
「じ、じゃあ、飛ぶ方向で」
「はい、分かりました。……あ、ダリア様。直ぐに向かいますか? 準備が出来てないなら待ってますよ?」
「大丈夫。直ぐに行けるよ」
「分かりました」
巨乳の人がコクりと頷き、空を見上げる。そして、呟く。
「……《クリアランス=トランスフェレンス》」
刹那、景色が青空に染まった。
てか、空だ。
青のキャンバスには掠れた白い色があちこちに塗られている。太陽がなんとも眩しい。
ふと、足下に違和感じた。地面を足で掴むような感覚がなかったのだから。何事かと思い足下に目をやると、王都の街並みが広がっていた。
突如として足下に広がった都市景観に圧倒されたが、直ぐに現状を理解した。
「し、瞬間移動……?」
ぶっちゃけ、漏れそうになった。今まで地から足を離した事はない。高所恐怖症ではないが、足場がある高所とは訳が違う。
この浮遊感を味わった事が無かった俺は、ただただ恐怖を感じていた。




