ダリア、代行者達に会いに行きます。1
さて、晴天である。
今日は残りの代行者達に会いに行こうと思う。マックロネコ曰く、別の場所に滞在しているそうだ。
驚く事に、ここ付近にある廃城に居るそうだ。この近くに廃病院はあるが、廃城なんて無かった気がする。しかし、そんな場所に寝泊まりしてるなんて可哀想だ。
そんな事を伝えたら、どうやら彼らは人間とは全く違う感覚らしく、平気との事。そういや人間じゃないんだよな、あいつら。
驚いたが、メイドさんは自動人形らしい。血も出れば内臓もあり、構造上人間と変わらないが、首が取れたり、関節部分で取り外しが出来るそうだ。ちょっとしたビックリ人間だ。
エネルギー効率が良いので栄養は少しでいいし睡眠も必要ない、と本人談。
あと、俺が寝てる間は廊下でずっと突っ立ってたんだってさ。……でもなんか申し訳なくて気が引けるな。
で、話は変わるが、平日は7時くらいに起きて、8時くらいに家を出て学校に通学している。
俺の身体は休日には10時過ぎくらいに起きるように出来ているのだが、7時に布団を引き剥がされて叩き起こされた。
「朝でございます、ダリア様」
メイドさんの金髪が布団で起こった風に吹かれ、シャランと浮き上がる。
「待って……まだ7時じゃん。あと3時間は寝させて……」
「ダリア様がその様な事では他の者に示しがつきません。生活習慣を乱されますと、お身体に関わります」
こんな時にメイドっぷりを発揮しなくても……。
欠伸を一つかき、ベッドから降りる。と、目の前には朝食が用意されていた。
「あと、あの……謝罪したい事がございます」
なんだよ。改まって。
「2日前からダリア様のご奉仕をさせて頂いていますが、その……緊張と喜びが高揚し、任が疎かに……」
掠れた声のメイドさんが弱々しく膝をつく。な、なんだよ。怖いな。何をしたんだよメイドさん。
「何したの?」
「は、はい……。栄養バランスを考えていませんでした……」
「え?」
そんな事で凹み過ぎだよメイドさん。着地点が予想外過ぎる。
「いいよ。腹に入ればなんでも」
「ありがとうございます」
顔を洗い終え朝食に手をつけると、低い声が耳に届いた。
「ダリア様、お食事中に失礼する」
テレビの影からマックロネコが赤い眼を光らせて出て来た。
「10時に使いの者が来る。それまでゆっくりしていてくれ」
「分かった」と俺は二つ返事。
☆
現在10時手前。そろそろ使いの者が来る時間だ。
夏休みの刺客である数学の宿題を適当に済ました俺は、ベッドの上で今日の朝刊の4コマ欄を眺めている。メイドさんが気まぐれに買ってきた物だ。
メイドさんは部屋の中央に置かれた長方形のガラステーブルの側で、瞑想でもしているかのように正座をしている。その膝の上には、眠りこけるマックロネコ。
最初はメイドさんが突っ立って居たのだが、気が散るとやんわり伝えたら、速攻で座ってくれた。
朝刊を閉じようとしたその時、ある記事が視界に入った。
『赤く染まった月!! 大きさが3倍に!!?』
『2日前の7月25日の夜、多くの都民が確認されたこの月は災厄が起こる前触れか!!?』
朝刊一面飾る赤い月の話題。ズラリと並んだの記事。見に覚えのある内容に、冷や汗が流れる俺。
……い、いや。これアレだよ。人違いだよ。
だってほら、専門家的なハゲたおっさんが、吸血鬼が現れる可能性があるってコメントしてるし。
「ダリア様、顔色が優れないようですが?」
メイドさんが前屈みで心配そうに尋ねてくる。察しが早い奴だ。
「な、なんでもない」
「そうですか。では、何かございましたら、なんなりとお申し付け下さい」
と、その時、インターホンの音が部屋に響いた。
「来たみたいですね。わたくしが出ます」
「俺が出るよ」
使いの者じゃないかもしれないし。
狭い廊下を抜け、玄関のドアの取っ手に手をかける。
「はーい。ちょっと待って下さい」
朝刊のせいで頭がこんがらがっていたが、これから目の当たりにする光景は、朝刊の内容など吹っ飛んでいく絶景だった。
ガチャリとドアノブを捻ると、
「どちら様で──っ!?」
眼前に巨乳が広がった。




