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ダリア、夏期講習に出ます。5

 ☆



場所は第三戦闘場。


学校の敷地の東側に存在するここは、人工的に造られた森の戦闘場だ。地面からは膝まで伸びた芝が生い茂り、大量の巨木が日光を遮っている。


80人か90人くらいの生徒が先に入場を終えていた。みんな俺の悪口で話題を盛り上げている。



この授業だが、俺と一緒に戦うのがマックロネコだけということになった。これはマックロネコの意見だ。


代行者として証明出来ないのもそうだが、曰く、メイドさんのつくりは精密過ぎる上、人間としか言いようのないその姿は、代行者としてはあまりにも似つかわしくないそうだ。


言われてみれば確かに。人間と言われても違和感は無いが、こいつは俺が召喚したんだぜ!? って言えば笑い者になるだろう。


それに、魔物や聖獣ならまだしも、自分でつくり出したものに意思を持たせる───生物として完全に独立した存在にするなど、到底出来る事ではない。


多分凄い事なんだろうけど、ぶっちゃけ考えるのが面倒だった為、運が良かったんじゃね? で解決した。


で、端的に言えば、騒ぎになる。


そのようなものを召喚した俺を、国は放って置くだろうか?


否だろう。


最悪の場合、俺の身に危害が及ぶだろう。それはマックロネコ達の思うところでは無いし、俺としてもそれは避けたい。水面下で生きたい。


その為、メイドさんを代行者として公言するのは控えておく。



「……ダリア様がそう仰るなら」


本人は渋ってるけど。


因みに、さっきの担当教師への証明方法だが、マックロネコが影に出入りすることで擬似的に還ることを再現し、証明出来た。


「ま、我等が主の初陣は見事なものになるさ」


地面から飛び出た根っ子の上で、マックロネコは嬉しそうにステップを踏んでいる。


時間を確認すると、13時ちょっと手前。



……あ、先生来た。


「集まってるな。じゃあ早速夏期講習、魔法の実技演習を始める!」


魔法実技学担当教員、小山ジョウジの切れの良い声がこだまする。


逆立った短髪にノースリーブからはみ出た筋肉と強面。戦闘が得意と言うのも納得な印象だ。


この魔法実技学の教員免許を取るには規定がある。Lv.30以上である事だ。つまり、単騎で今朝のワイバーンを倒せる実力がなければ、教員試験に受ける事すら出来ない。


「では早速授業の説明に入るぞ! この第三戦闘場のどこかに隠れている、“スピードラビット”を捕まえて来る事。それが課題だ」



《スピードラビット 推定Lv.5》


学校で飼育している温厚な兎型の魔物だ。こいつがとてつもなくすばしっこい。その上、自分より小さい隙間でもすり抜けられるという。



それをこんな森の中で捕まえろって……どうやんだよ。



「それともう1つ」


ピンっ、と人差し指を立てるジョウジ先生。


その動きと呼応する様に、森が騒ぎ出す。地鳴りが響き、大木達が大きく揺れる。


間も無く、木々を掻き分けて現れたのは、鋼の様な体毛に覆われた体長3メートルを超す巨獣“キリングバブーン”と、2メートル程の熊型の魔獣“グリンベア”だった。


「───先生の召喚獣であるこのキリングバブーン2体と、グリンベア10体を森に放つ。こいつらから逃げながら、スピードラビットを捕まえて来い!」


生徒達から「えーっ!」と非難の声が上がる。


それもその筈。



《キリングバブーン 推定Lv.26》


森の奥地に生息し、凶暴性が高い。


《グリンベア 推定Lv.22》


同上。


どちらも学生の実力では突破するのが困難な魔獣である。まあ数人がかりであれば、グリンベアの方は突破出来るだろうが。



「自分の力の誇示をあの程度の獣風情で示しているのが、なんとも滑稽でございますね」


メイドさんが鼻で笑う。あんた凄い事言うね。まあワイバーン瞬殺してるしな。


「おい止めろ。俺も獣なんだから。なんか馬鹿にされた気分だ」


「申し訳ありません。マックロネコ殿」


「あれ誇示してんの?」


「はい、ダリア様。あの教師の声、表情、仕草などから、教師という身分を棚に上げ、明らかに実力の低い生徒に無理を強き、支配欲を満たしている節が見受けられます」


辛口だな。



「ジョウジ先生」


生徒達の前の列の方で、男子生徒の声が上がる。


「逃げろと言われましたが、倒してしまっても良いのでしょうか?」


そう発言したのは、校内屈指の実力者。魔法実技のみならず、座学でも学年順位一桁を叩き出す天才、佐原クマモトである。


前にいるジョウジ先生より強いとも噂され、座学でも教師より知識を発揮し、教師より教師に相応しい生徒、と他の生徒に評価されている。


いるよね、ああいう神童って言われる人。


羨ましいな、おい。代われよ。お願いします。

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