死
ピッ、ピッ、ピッ―――――
病室に響き渡る呼吸補助装置の無機質な音。
「おいっ、圭太っっ!何死のうとしてんだよ っ!死ぬなっ、生きろっ!」
親友の海翔の言葉にももう何も感じない....
ああ、俺死ぬんだ。死ぬってこんな感じなんだ..何もかもがどうでもいい様に思えてくる。
でも、死ぬこと自体は怖くない。向こうには家族皆が待っている。もうこの世に未練はない。
ただ...
ただ、一つだけあるとすれば.....
『踊れ、サムライ』の次回作が気になる。
目が覚めたら、俺は大理石の床の上で横たわっているというには無様に、転がっているというには上品に寝ていた。
(ここ、どこだ?もしかしてあの世か?でもあの世にしてはいやにこざっぱりしているように見えるが....)
「そりゃあ、そうですよ。だってここは中間地点、ミーユプワンですから」
そう言って現れた奴の年は22、3歳か。長い黒髪を後ろで結んでいて、男か女かはよく分からない。でも顔はすごい美形だ。
スッと整った顔にその瞳に映ったものすべてを包み込むような眼差し。口は微かに微笑し、その口から聴こえる声はハーブの音色の様にその場にいるもの全てを魅了する。
心から思った、美しいと――――――
「私はここで案内人を務めています、ベロームと申します。今回神宮司圭太様の案内役として参りました。」
「お、俺の案内役?ていうか、ここは何処なんだ?ミーユなんちゃらて何なんだ?」
戸惑う俺を見て迷子になった子供に接するかのように少し微笑みながら、
「ここは人間達で言う『あの世』と『この世』の狭間、みたいなものですね。あと、ミーユプワンです。」
そうしてベロームと名乗った案内人は中間地点と呼ばれるミーユプワンのことについて話し始めた。
「死者の魂はあの世に行く前にまずここで生前の行いを裁きます。良いことをしていれば天国に行き、転生をしてまたこの世、こちらから言えばあの世に戻ることが出来ます。しかし逆に地獄行きとなると永遠に休息することも、ましては転生することも出来なくなってしまいます。大抵はどちらかになりますが、滅多にない例外でどちらにも裁くことの出来ない方がいらっしゃるのです。」
一呼吸置いて俺を見た。まるで獣が獲物を狩る時の様に....
「それが〝圭太様”、あなたでございます。」
「それはどういうことなんだよっ!何で俺が...」
「決定的な原因というのは分かっていないのですが、要因の一つに『子供の頃の悲しい記憶』、があると言われています。」
子供の頃の悲しい記憶――――――
今でも耳について離れない声。燃え崩れる家。
オニイ..チャン、オニイチャン、タス..ケ....テ .......
読んでくれてありがとうございます!こまめに書いていこうと思うのでぜひ読んでみて下さい!