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出会い

 脳創造…脳創造…ねぇ。


 俺のスキルである脳創造の使い道について考えること早一時間。一向にその用途を思い浮かべる事が出来ず、只時間を無駄に浪費していた。一応ステータス欄を開き、スキルの所を選択すれば、一応説明見たいのは出てきた。


 脳創造-脳を創造します。


 これを見て切れそうになったのは当然の話だと思いたい。


 まぁ何はともあれ、こうして俺のスキルは使用用途不明のスキルと言う事だ。それに変わり千歳のスキル。神の万能手はまさしく勇者のスキル。神のスキル、と言っても過言ではない代物だった。簡潔に説明すれば、全ての状態異常を回復する事の出来るスキル。毒や精神異常、麻痺睡眠は当然、体力なんていったものまで完全に回復させる事が出来る。当然魔法を使う魔力、すなわちMPも全て回復する事が出来る。


 流石の異常、とも呼べるこのスキルの存在を知った王は声を上げて喜ぶ。今俺が居るのは豪華な一室だが、千歳がいる部屋は今俺が居る部屋以上にセキュリティが強化された部屋との事だ。


 そんな千歳と同じレベルの部屋を用意されたのは他にも6人ほど居る。その中には我らがリーダー天馬さんも居るとの事だ。


 さて、話がスキルの事について逸れたが、既に俺達クラスは打倒魔王をかかげてしまっている。スキルの存在も大きいだろう。スキルを除いても、基本ステータスがこの世界の一般人に比べ5倍近く強化されていると言われれば、首を縦に振る理由にもなろう。


 以上の事を含め、少しの反対派を混ぜながらも、我らがリーダー天馬さんは王の頼みを聞き入れ、俺達は晴れて魔王打倒の訓練を開始する事になった。


「勘弁してくれよな…」


 確かに俺もステータスは他のクラスメイトと同じぐらいだったと思う。だが、肝心な攻撃に使うスキルの使用用途が分からないのだ。寧ろ脳を作ってどう攻撃に活かすのか教えて欲しい。


 ならば他のスキルを覚えては?と思い、最初俺達を召喚したローブの集団の一人に尋ねてみた。スキルを覚える事は出来るのか?と。答えはノーであり、スキルは一人一つが原則。例外はない訳ではないが、人間に限ってはほぼ例外なくスキルが一つとの事。それを聞いた時の俺の絶望感を理解して頂けるだろうか?


 まぁ…この部屋で愚痴っても仕方がない。どうにかしてこのスキルの活路を見出さないと行けない。出なければ俺は一人己の体一つで魔王と戦う事になる。それだけは許してくれ。


「脳…ね。このスキルで造った脳ってなんなんだろうな」


 先程からこのスキルの用途が分からないとは言っているが、実際スキルを使った訳でもない。スキルは必要魔力、MPを消費しその消費したMPに見合っただけの効果を発揮出来る。


 当然、俺もスキルを発動出来るだけのMPは備わっている訳で、この脳創造と言う謎のスキルも使用する事が出来る。


 なら何故スキルを使わないのか?答えは簡単だ。


 目の前に突然自分が作ったとはいえ脳みそが出てきたらどう思う?驚愕で済むレベルではない事は容易に想像出来る。いや、実際に脳みそを見たことがある訳ではないが…脳みそだぞ?見ないで済むなら誰しもが見たくないと答えるだろうに。


 とまぁ、俺が懸念しているのはそこだ。スキルを使った事によって物理的に脳みそが出来てしまった場合どうするか、と言う事だ。下手に人を殺した、なんて思われたらたまらないからな…。人目のつかない所で使用しなければならない。


 俺達クラスメイトの訓練は明日からの為、まだ俺には自由の時間が残されている。この王城を探検する事含め、何処か人目のない所を探すのもありかもしれない。いや、寧ろそうするべきだろう。自分の命の為に。


「よし…そうと決まれば早速行くか」


 誰に言うわけでもなく、そう呟き、椅子に降ろしていた腰を持ち上げ、扉を開き外へと出た。


----------


「此処は訓練所…だろうな」


 十分ほどメイドと思わしき人達に怪訝な目で見られながらも無視を決め込み、どうにか開けた場所に出る事が出来た。


 銀色のプレートを纏った西洋の騎士、と行った風貌の人達が数多く己の握った武器を的に打ち込んでいる。男たるものこの光景に興奮しない訳ではないが、俺の目的は人目のない所なので、此処でスキルを使う事は出来ない。


 そう考えに至り、残念だが元来た道を戻っていった。


----------


 その後、図書室、応接室、研究室、医務室、調理場、などと言った数多くの部屋に到達する事が出来たが、肝心の人目のない場所、に到達できてはいない。既に廊下から見える窓から外を見てみれば、暗闇に包まれており、時間はあまり残されていない事が伺える。


「さて、どうしたものか」


 正直な所、自室が何処にあるかさえ覚えていない。つまり迷子だ。


 いやぁ、まさか高校生になって迷子になるとは…思ってもいなかった。まぁ人の住む王城だ。餓死なんて事はないだろう。


 そう軽く考えながら、そのままのらりふらりと城を歩くこと一時間、何か怪しい扉の前にたどり着く。


 長く暗い廊下にいつの間にか差し掛かり、自分でも気づかぬ内にその廊下を歩いていた。窓の一つもない不気味な廊下を何気なく歩き、気づけばこの長い事誰にも空けられていないであろう扉の前に。


 その事にどこか寒気を感じながらも、何故か俺の手はその扉に伸びていた。まるで誰かに操られているかのように。そう思えるのは何故だろうか、この状況を冷静に分析している自分がいるからだろうか。答えは分からないが、目の前の扉は抵抗する事なく、開いてしまった。


 開いた扉の先に広がるのは石造りの地下への階段。壁に掛けられている蝋が少ない為か数メートル先は暗闇で包まれている。そんな光景を目の前にし、思わず唾を飲み込む。


「なんかやばそうだな…」


 そう呟きながらも、俺の足は階段へと伸びる。そしてそのまま立ち止まる事なく、完全に扉の奥へと体が入り込む。完全に体が入ったその瞬間、扉が勢いよく閉まり、その音にビクッとしたのはまた別の話。


 少しの恐怖心と不安を抱きながらも、迷いを見せる事なく、階段に従い下へと降りてゆく。


 下に下りて行くに従い、周りの気温は下がり始め、俺の肌にも寒気が襲う。自分の肌を自分でさすりながら、長い地下への階段を下りる中、ついに少し広い空間に到達した。


「牢屋…?」


 その空間にも光源が少ない為、よく見えないが、その空間の奥には何か牢屋のようなものが存在した。と言うか牢屋以外の何物でもないだろう。


「なんで…牢屋がこんな所に」


 牢屋と言うあまりよろしくない単語を思い浮かべた途端、背中に悪寒が走る。 今すぐ此処を引き返し、あの長い階段を上った方が良い。頭の中ではそう理解しているが、好奇心か、または違う何かが原因なのか、俺はその牢屋の中を確かめるべく、近くへと寄っていた。


 だんだんと見え始める牢屋の中。最初に見えたのは…人間と思わしき面影。思わず人影が見えた瞬間、足がその場で止まるが、相手側に動きがない事もあり、再びその人影が何か確認する為に更に近くへと歩み寄る。


「…え」


 そして完全に見えたその人影の招待は。


「女の…子?」


 水色と言う珍しい髪を持った幼い少女が鎖に繋がれ、牢屋の中で倒れていた。


「おいおいおい…!聞こえてるか?生きてるなら返事をしろ!」


 こんな時どう動けばいいか分からないが、取りあえず目の前の少女の生死を確かめるため、声を掛ける。最初は反応がなかったが、そのまま呼びかけているとピクリと確かに少女は動いた。


 今すぐ少女の傍に駆け寄り介抱してあげたいが、生憎目の前にはやたら頑丈な鉄格子が存在する。


「…あなたは…」


 言葉を休むことなく投げかけていたおかげか、少女は気を取り戻し、気だるげに体を起こすと俺の方へ視線を向け、そう口を開いた。


 その問いに答えようとしたが、その前に少女が突然眠たげな目を開き鉄格子へとその体をぶつけるかのように近寄ってきた。


「まさか…あなたは勇者様なのですか!?」


「あ、あぁ…」


 少女の豹変振りに驚き、そう返事をする事しか出来ない。だが俺の答えを聞いた少女はその表情を絶望に染め、力なくその場へと座り込んでしまう。


「そんな…私はあれ程…!!」


 少女の呟きには悲しみの他に…何処か怒りや恨みの感情が篭められているような気がした。


 この現状がまったく理解出来ていない俺だが、目の前の少女を放って置く訳にもいかず、驚きに閉ざされていた口をゆっくりと開く。


「なぁ…俺の名前は不知火 海人。君は?」


 今この場で自己紹介をしている場合か!とは自分でも思うが、自己紹介は他人と話す上で欠かせない動作だ。


「…私の名前はアーク・ウェル・ソフィ。この国の第三王女です」


「王女…え?」


 目の前の少女、ソフィの口から発せられた言葉に理解が追いつかず、間抜けな声を上げてしまう。


 この目の前の少女が…この国の王女様?そんな少女が牢屋の中で足枷を嵌められている。その現実が重く俺に圧し掛かる。


 …俺ってかなりやばい場面に出くわしたんじゃないのか?



後日修正入れます。

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