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始まり

 瞼を開けたら其処は知らない空間だった。


 何を言っているか分からないと思うが、俺も分かっていないのだから仕方がない。俺-不知火 海人は何時も通りクラスで一人静かに過ごしていると、突然教室の外の景色が消え、暗闇に閉ざされた教室の足元に不気味な光が発光し始めた。そんな突然の事態に他のクラスメイトは慌てるが、その次の瞬間には俺達は全員謎の光に包まれ、次に瞼を開いてみれば、知らない空間に居た、と言う訳だ。


 その空間の広さは俺達31人のクラスメイト全員が入っても窮屈に感じない程の広さがある。だが、その造りが石造りであるためか、言いようのない圧迫感を感じる。


 そしてそんな空間に佇む明らかに異質な服を着た不気味な集団が数名程。まるで子供の時に見た御伽噺に出てくる魔法使いのじぃさんが来ているかのような服、つまりはローブを纏い、その手には如何にもな木の杖が握られている。


「何処だよ此処!?」

「私達どうなったの?」

「何今の!?何なの!?」


 当然こんな事態に見舞われたクラスメイトは冷静を保てる筈もなく、混乱に陥る。この窓もない圧迫された空間や、目の前の不気味な集団を見て更に拍車を掛けているのだろう。


 そんな様子を冷静に分析しているつもりな俺だが、そんな俺も内心かなり焦っている。普段から感情を外に出すことがない為に、今も周りから見たら一人落ち着いている、と取られるかもしれないが。


 と、その時、突如耳を塞ぎたくなるような破裂音が前方から聞こえた。あまりにも突然の音に、混乱に陥っていた生徒は開きっぱなしだった口を閉ざし、その音がした方向に全員が視線を向けた。


 その視線の先に居たのは最初からずっと佇んでいた不気味な集団。その内の一人が手に持った杖を上に掲げ、その先端にはめられているであろう透明な水晶から煙のようなものが立ち上がっていた。


「どうか慌てずに私の話を聞いて欲しい」


 そう口を開いたのは、先程の音を生み出したであろう一人のローブを被った一人の男性。男性だと分かるのは声から判断した。


「あなた方を此処に呼んだのは私達だ。それには深い理由があり、そうするしかなかったとしか今は言えません。突然こんな事を言われてもあなた方が納得するとは思っていませんが、どうか冷静に私と行動を共にし、我等が王の話を聞いてはいただけませんか?」


 男の口から出た言葉に誰も反応を返す様子はない。暫くの間、静寂が空間の中を支配するが、一人、黙りこくるクラスメイトの中からその男性の前へと歩みを進めるクラスメイトが居た。


 少し茶色がかった髪の毛にモデルのようなスマートな体系。そしてまるで誰かに造られた、と言っても過言ではない程に造形が整った顔。このクラスのリーダー的存在である倉敷天馬だ。


「今の僕達に出来る事はなにもありません。あなた方が僕達を此処に呼んだというのでしたら、僕達はあなた方の言う事に従うしかないでしょう。ですが一つだけ約束してはくれませんか?僕達に対し、決して危害を加えないと」


 所詮それは口だけの約束でしかない事も重々かれは承知の上だろう。だが、今クラスメイト全員の中に渦巻く感情は不安と恐怖であり、それを少しでも解消する為に、彼はあえてあの集団からその事を承諾させようとしているのだと思う。


「当然です。私達があなた方に危害を加えるなど持っての外、寧ろあなた方に危害を加える存在が今此処に現れるのならば私達はあなた方をこの命を持ってでも守り通します」


 予想以上に重い返事が返ってくるが、そう口を開いた男の目には曇りが一切なく、真っ直ぐに天馬の瞳を捉えていた。そんな彼の思いを一番近くで受け取ったであろう天馬は満足そうに頷くと俺達の方へ振り返り、口を開いた。


「口だけかもしれないが、彼はこう言っている。何より僕達にはこの人達に付いていくしか取れる手段がない。皆僕に付いて来てくれないだろうか?」


 そんな天馬の言葉に反対意見が出る訳もなく、皆が皆で思い思いの返事を返すとゆっくりとローブを纏った集団の方へと近寄って行く。かく言う俺も例から漏れる事なく、集団の一番後ろからついて行く事にする。


「ご理解いただきありがとうございます。ささ、謁見の間への道は私達が先導しますので、私達の後を付いて来てください」


 そうして俺達は否応なく、そのローブを纏った集団の後をついて行く事になった。


 はてさて…この後王とやらから出てくるのはトンでもな話なのか…と言ってもこんな非現実な現状に見舞われている時点でトンでもな話が出てくるのは確定しているといって良いだろう。後はその話の内容によるが…俺は何時もどおり不干渉で行きたいものである。


 

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