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サンライト  作者: 鬼京雅
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二回戦開始

 月下ビル一階大広間・パーティ会場。

 きらびやかな衣装を身にまとうゲスト達に紛れスーツ姿の竜史はメイサと共にいた。このパーティ会場の全てのきりもりは月下学園の生徒達がしている。立食形式のパーティで各々がワイングラスや小皿にフォークを抱え談笑しながら二ヶ月前に出現した太陽の話題をしていた。百年ぶりに現れたサンライトの能力を宿す少年を一目見ようとやってきたゲスト達は竜史の存在に気が付き、奇異の瞳をよせた。この百年は月の加護を受ける者は現れても太陽の加護を宿す者は現れず、人類は月明かりを主に生活してきた為に全世界を照らし出す太陽というものが希望の光なのか絶望の光かもわからず困惑しながらもわきあがる好奇心だけは抑えられなかった。

(……この大会の見せ物をゲスト達に紹介する為に呼んだのか。ヒカルの奴、早く俺をこいつらに紹介したらどうだ)

「竜史、気を引き締めなさい」

「引き締めてるさ。こんなに注目されてんだからな」

「君が、太陽竜史君だね?」

 突如、四十代前半ぐらいの男に声をかけられる。その男は漆黒のスーツに身をまとい髪はオールバックで瞳は他者を恫喝するような威圧感があり、いかにもエリートという証を体現しているかのような男だった。メイサの顔が一瞬こわばり、竜史は人目でこの男の顔を見て誰かを思い出す。

「月下……光史朗」

「よく知っていたね。君に記憶されていて光栄だよ。なんせこれから月下が世界に進出していくうえで君にはその礎になってもらう存在なのだから」

「礎だと? もし俺が優勝できればそんな事はさせないぞ。俺は優勝して月下の全てを破壊する」

 その熱い眼差しに光史朗はゆっくりと微笑んだ。そして胸ポケットから金色のジッポを取り出し火をつける。その炎を鼻先まで突き出され、メイサの拳が強く握られる。じっ……と竜史は光史朗の両眼を見据えたまま動かない。

「……この小さな炎は今の君そのもの。眠れる力を呼び覚ましヒカルのルナテックと対を成すサンライトの力を完全のものにしたまえ。この前見た太陽は人類の希望なのだよ」

 言うと、煙草を口にくわえ火をつけてゲスト達にまぎれ消えた。

 入れ替わるようにイエローのドレスを着たヒカルが現れる。

(たいそうに着飾りやがって……)

 思う竜史に耳の月型のイヤリングを揺らし、

「送った衣装は着てきたか。まるで七五三だな」

「うるせえ。お前よりはマシだ金ぴか」

「フッ、もうお父様とは会ったのか?」

「会ったさ。もう五十を過ぎてるわりには若く見えるな。金持ちは食うものが違うから若く見えのか?」

「月下の社長たるもの、身だしなみには気を使わないとな。どうだ竜史、この月下武道大会は? 素晴らしい大会だろう」

 両手を広げ天井のシャンデリアの光を浴び悦に浸るヒカルに対し、

「俺はこの大会で優勝する。お前のシナリオはサンライトである俺がぶっ壊す」

「それは太陽を具現化させ、干渉できる力を得てから言え。それが出来なければお前も月下学園の下僕達と同じように飼われるだけだ」

「月下の生徒達もけしかけて大会に参加させて試合を盛り上げる……よく人間の尊厳を交わすようなことばかり考えるよお前は。一回戦で戦った八草蘭子は完全に俺を恨んでいたよ。ホテルまで侵入して殺しに来た。蘭子をそうさせたのはお前だヒカル」

 ハハハハッ! と黄色い笑い声を上げるヒカルにゲスト達は戦慄し、竜史は怒りを覚える。口元を抑え未だ笑いが収まらないのかニヤケつつ、

「力無き人間など管理され、労働をし、やがて土へ還る。さしたる能力も無く、その上努力もせず楽して稼ごうという人間などに衣食住を提供している月下グループには感謝してもらいたいぐらいだ」

「その代償が人体実験による火の合成か?」

「愚物の命の煌めきが世界を救う光になるんだ。それは光栄以外の何物でも無い」

 完全にこの月下山脈の人間を見下し、ただ自分の欲望の糧になる駒としか思っていないヒカルに恐ろしい何かを見る目で見た。この女の底知れぬ欲望に辟易さと同時に野心への憧れも感じた。それは少年が成長する為には不可欠なもので、この大会を勝ち抜いて行くには――。

(強くなるしかない……強くなるしか)

 そう強く心に誓い、パーティ会場の女子の尻を見ながら片っ端から豪華ディナーを楽しんだ。去り行くヒカルの背中をメイサはじっ……と見つめていた。







 太陽竜史たようたつしVSたい白蓮真希はくれんまき――。

 月下武道大会は一回戦の全てが終わり二回戦が始まった。その戦いの相手は竜史にとって鬼門ともいえる相手だった。敵の少女の装いは月下学園の黄色のジャケットをはおり、髪は金髪のロングヘア。足元は黄色のミュールをはき、肌は白く眼光鋭い美少女――。

「ヒカル。月下……ヒカルに似てる」

「そう、私は月下ヒカルを愛する白蓮真希よ。私はこの大会で優勝してヒカルさんと結婚して全てを手に入れるの」

(何だこいつ、狂ってやがる)

 愛する女である月下ヒカルについて延々と語りながら近づいて来る。女特有の甘い香りが鼻腔に広がり白蓮真希という少女に困惑していると、油断した隙に鼻がぶつかり唇を奪われた。

「――おっ、お前!」

「もしかして始めてだった? それならごめんなさい」

「こらこらこら! 審判の居ぬまに鬼の居ぬまにと破廉恥な行為をしてるんじゃないわよ竜坊! 失格にするわよ!」

 武舞台によじ登る小さな身体の審判はナース服に聴診器を首に巻いて現れた。初キスの為に動揺を隠せない竜史は顔を真っ赤にし、

「待てよチビ審判! 俺からしたわけじゃねーよ! されたんだよさ・れ・た・の!」

「私はチビ審判ではない! しんパン子だ!」

「知るかアホ。とっとと試合を始めろ――痛って!」

 パン子という名の審判が竜史の弁慶の泣き所に蹴りを入れ二回戦が始まった。

「この金髪も、この爪も、服も下着も全てヒカルさんと同じなのよ。決勝で勝って私はヒカルさんと結婚をするんだから貴方には出番は無い。消えてちょんまげ」

 刀身も拵えもヒカルの白夜と同じような の連続突きはズババッ! と繰り出される。

(早いが蘭子と同程度。薙刀のように距離があるわけでもないから驚愕するほどではない。二回戦はいい修行の場になりそうだぜ)

 そう思う竜史は刀を抜き半身なり斬りかかる。それを左腕で受けた。力で押し切るように刀を振り抜き、更に相手の腹をブチ抜くような突きをかます。いまいち踏み込みが浅かったのか はダメージを受けている感じはない。

「腕に手甲、身体に胴鎧か鎖帷子をしてるな? 下請けとはいえ金持ちは違うな」

「ご名答。サンライトを相手にする以上、用意は万全でないと」

「なら、その鎧ごどブチ抜いてやるよ!」

 ブフォ! とサンライトが展開し、髪がオレンジになり逆立つ。そして、刀にオーラが注ぎこまれ技を繰り出す。

「さて、どこまで出来るかしら?」

 疾風が場外にいるメイサのツインテールを揺らす。

「接近の一撃ならコントロールも何も関係無い!」

「あら、激しいプレイだこと」

 ズザァ! とサンライトスラッシュが右肩から左腰にかけて放たれ斬り裂いた。先の試合のダメージからか右手が一瞬痛み腕の反応が遅れ、深々とダメージを与えられる一撃ではないが確実にサンライトスラッシュは決まった。場外真近の武舞台まで転がった真希は胸元を抑え立ち上がる。

(身体の調子が悪いな。どうにももう一踏ん張りが決まらない)

「防御に集中してても、このダメージ。この黄昏の鎧にここまでのダメージを与えたのは貴方が始めてよ」

「制服の中に鎧を着てたか。ヒカルは俺が倒しておくから安心しろ」

 その刹那―― の瞳が蛇のように鋭くなる。同時にメチャクチャな乱撃が全身を襲う。

「貴方がヒカルさんと戦うわけがないでしょーがよー! ヒカルさんの瞳は私だけを向いていればいいのよ! 私の顔を、私の胸を、私の足を、私の心臓をーーーっ!」

「何だ? 腕が勝手に動く? うおおおっ!」

「私の全ては月下ヒカルと共にあるのよおおおおっーーー!」

 狂気の叫びによる剣の舞に竜史はなす術もなく刻まれた。身体は吹き飛ばされ場外に落ちる。

「?」

 はずだが落ちない。すると、自分の両腕と両足に細い糸があるのに気が付いた。

「野郎、やりやがったな!」

 その竜史の腕は見えない糸によって操られていた。観客席から伸びるその糸は真希の息のかかる兵隊の罠だった。審判は股間に糸が食い込んだらしくひい~ともがいている。


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