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サンライト  作者: 鬼京雅
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一回戦終了

 ブオオッ! とサンライトが全身に展開され竜史の髪の毛がオレンジ色に変化し逆立つ。

「サンライトが発動したが、太陽は出現してないな。そこまでの激情じゃないのか? だが、あのオーラは尋常ではないわね」

 そうヒカルが言うと、武舞台の竜史は刀を高々と掲げサンライトのオーラを纏わせた。

「あ、あの光はまさかサンライトの一撃!?」

「サンライトスラッシュ!」

 シュパッ! と縦一文字に刀が振り下ろされオレンジの光が放たれる。そのサンライトのオーラに観客はどよめき、審判はひえ~! と股間を抑えながら場外に逃げる。

(死ぬ――百合子、ゴメン)

 スッと瞳を閉じ、蘭子は死を受け入れた。以外にも温かいサンライトのオーラは自分を優しく包みこむ感じがし、久しぶりに安らかな気分になった。オレンジの閃光は蘭子の真横を通り過ぎ会場の壁に当たり爆発する。その一撃で会場は静まり返り、蘭子の黒髪は風で揺れる。サンライトスラッシュは完全に外れたのであった。

(……どういう事? けど勝機!)

 よくわからないが、相手の必殺技が外れた事で勝機と見た蘭子は動いた。唖然とする竜史に対して八花睡蓮撃を叩き込む。

「ぬああっ!」

 苦痛に耐えながら左手で薙刀の引きぎわを掴んだ。そして右手の刀が蘭子を捉える。

「甘いわよ」

 ドスッ……と蘭子が持つ薙刀の真ん中がスライドして二つに分かれ仕込み剣が現れた。その仕込み剣で右肩を刺され血が噴き出す。その剣を竜史が引き抜こうとすると、稲妻が発生するように黄色く発光した。

「――仕込み剣が電磁式!?」

 バリバリバリッ! とすさまじい神経を焼き切るような電気を浴びた。胸元を思いっきり蹴り、蘭子は距離を取り仕込み剣を薙刀の柄に戻す。

「まだ死なない……? 太陽のサンライトだけあってしぶといわね」

 竜史の利き腕である右腕はもう使えそうもない。仕方なく刀を左手で持つが力が入らない。

「くそっ! サンライトスラッシュは全開だと一日三発までしか撃てない。次が体力的にも精神的にもラストだ。次で決めてやる……」

「その技は完成しない。サンライトが使いこなせない以上、無理な技よ。所詮太陽なんてもう空に輝く事なんてないのよ!」

 罵声が飛ぶ観客席の最前線にある壁の前で立つメイサは言う。

「サンライトに頼らなくても基礎体力の差で勝てるでしょう? その間に剣技を実戦で学ぶのよ。この戦いは長期戦にして殺し合いになれる為の試練」

「それでも俺にはこの技しか無い。ゲスト達だって俺のサンライトが見たいだろうしな」

「やめなさい。死ぬわよ」

「お前が殺すつもりか?」

「死にたくなければ長期戦に持ち込みコントロールを覚えなさい」

「コントロール? ぐああっ!」

 会話をしている隙をつかれ元亀天正の電撃を浴びる。それは間段無く繰り返され竜史に反撃の隙を与えさせない。

「ここからは技も力も無いわ。根性の戦いよ。根性で負けた方がこの戦いの敗者……それは貴方の事よ太陽竜史!」

「ぐううっ! 負けられないのは俺も同じ。俺だって親父を殺されてここにいる。負けてたまるかよ!」

 ブフォォォ! とサンライトを全開にして電撃に耐え続ける。

 意地と意地――。

 そこには憎しみも殺意も悲しみも無いただの根性比べしかない戦い。互いの全力のオーラを出し合い、オレンジとイエローの光に観客は見とれた。そして、竜史はガクリとうなだれる。

「勝った……。審判、宣誓を」

「うにゃ! まかせんしゃい! な、なかなか登れんでし」

 必死に小さい身体で武舞台によじ登り審判は蘭子に近づいた。フゥ……と溜息をついたメイド姿の女の妖艶な吐息が蘭子の心を切り裂く。

「まだ髪の色がオレンジだよ、お嬢さん」

「――!」

 そのメイサの声を聞いた蘭子は焦り目の前の少年を見た。その言葉の通り竜史はまだ意識を保ち、サンライトが途切れていない状態だった。

「電気を浴びた後は俺にもお前にも隙が出来る。けど俺が電気を受ける覚悟をしていれば耐えられる。右手に集めた最後のサンライトだ。もらっとけ!」

 サンライトを帯びた渾身の拳が炸裂した。

 そしてヒカルはVIPルームを後にし、父親の光史朗は四十代にしてはシワのない目じりを嗤わせ煙草の紫煙を散らした。

 勝敗が決した武舞台で竜史は審判に勝者宣言をされて誰にも祝福されない虚しさを感じていた。改めて会場全体を見回しても誰一人自分を応援しておらず、ゲストルームにいるゲストの連中達も賭けが外れ太陽さえも見れない事に憤慨していた。

「……蘭子」

 目の前で自分を未だに睨んでいる蘭子に対し、竜史はいたたまれない気持ちになる。竜史は蘭子に月下学園の生徒が参加する意味を聞いた。

 二ヶ月前――武道と学問の平凡な学園生活を営んでいた月下学園の生徒達は月下ヒカルの鶴の一言により強制的に武道大会の建設に参加させられ学園生活は中断した。周囲の木々を刈り取る所から始まった武道会場建設計画は三交代制の勤務体制になり、いきなりの昼夜逆転の生活に生徒達は体調を崩すものが多く出た。しかし、この学園で脱落する者は知らぬ間に存在そのものが消えている事が現実にある事を知ってる為、動かない身体に鞭を打って労働に参加した。そしてその激務に耐え切れず蘭子の妹は死亡した。

「……そして強制労働が終わると、学問が出来る者は大会の運営に回され武道が得意な者は大会に参加する事になり学園選抜予選を勝ち抜いた私はここまで来た」

「学園の生徒が優勝すると何がある? 命を賭けて得るほどのものなのか?」

「優勝者には光税の免除、そして月下グループの幹部に上がれる」

「光税なんて俺が優勝したら無くしてやる。俺が……」

 ガスッ! とその言葉をさえぎるように元亀天正が地面に刺さる。

「光を生み出すサンライトのお前が言う台詞か! 明かりを使うと魔獣に襲われる。その概念をお前が壊そうとしている……」

 それに動じる竜史はこの戦いの勝者であるはずの自分が敗者に感じ始める。この大会は仕組まれた大会だというのは知っているが、勝てば誰かが認めてくれると思っていた。しかし、勝っても何も得られるものは無く浴びせられる罵声は増えるばかりである。記憶が二ヶ月前にさかのぼり、父親の陽史朗の死の瞬間を思い出す。

(……俺は……俺は――)

 その刹那、ある一言が竜史の意識を取り戻させる。

「人殺し! 太陽は暖かい優しいものだという言い伝えがある! お前はただの人殺しだ!」

「俺だって好きで殺したわけじゃない!」

「あんたのせいで大会の闘技場の建築に駆り出されて倒れた仲間が大勢いる。あんたがいなければこんな事にならなかった! あんたがいなければ、あんたの父親も死ななかったんじゃないの!?」

 ハッ! とした顔で竜史は後ずさる。身体は震えを見せ始め目の瞳孔が開く。

「……そうだ。俺のせいで母さんも親父も死んだ。この武道大会で欲望の渦に呑まれ死亡した奴や人生が変わってしまった奴もいるだろ。お前のように仕方なく戦いに出る者もある。そうだ。俺は――」

 ――罪悪だ。

 すると、バタッと蘭子が倒れた。同時に空き缶などが飛んでくる。

「審判、早く担架を持ってきて運んでやれ。このままじゃ観客に殺される」

「以外に優しいのね。敵なのに」

「俺のせいで蘭子は苦しい目にあったが、俺は蘭子が嫌いなわけじゃない。正々堂々と来た敵をほおっておけるような人間に育てられてないんでな」

 地面を這いずりながら蘭子は怨念を吐き出すようにつぶやく。

「お前は……悪だ。太陽は……悪だ」

 その蘭子の言葉に答えられない竜史は残る微かなサンライトを手の平に灯し、蘭子の目の前に一瞬だけ灯して去る。

(終わった。これは戦いじゃない。殺しあいだ……)

 場外に飛び降りると黒いメイド服を着たツインテールの女と目が合う。

 仲間のいない竜史は仲間ではないこの女の顔を見ただけで安心した。少なくとも大会中はこの女が近くにいる限りサポートしてくれる。偽りの関係でも心が和む――。

(だけど……この女を信用してはいけない。俺は独りだ)

 スッ……と上げそうになった手を頭をかくふりして誤魔化す。振り返るメイサは言う。

「水風呂に入って身体を冷やしなさい。衣服が焦げるほどの熱を身体に帯びているわ」

「わーってるよ」

 そして、月下武道大会・一回戦は竜史の心を大きく切り刻み終了した。




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