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サンライト  作者: 鬼京雅
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勝利者

 止めを刺そうとヒカルは竜史を見るが、白夜を地面に突き立て膝をついていた。

 もう血を失いすぎていて刀を持つ力も無いが、ここを乗り切れば全てが終わる為にヒカルはあえて言う。

「月と太陽はあいいれるんだろ? キバれよ兄貴」

「そうだ……月と太陽は……相容れる」

 上がらない竜史の腕をヒカルが支え、残るルナティックが白夜に注がれて行く。

 それを見た光史朗は身体の各所から血を噴出しながらもコアを安定させた。

「私は永遠の神だ……力も、若さも手に入れた永遠の神……貴様等と同じ若さを手に入れて私が負けるわけが無い!」

『身体じゃない。心が老いてるんだよジジィ!』

 二人の放つ覇翔月破でキメラに堕ちた巨悪をイエローの閃光が貫いた。

「がああっ……私は神……」

「切れだ」

 スパッと紙を切るように白夜は黒い炭のようになる男を切り裂いた。

 そして、会場の人間はキメラの化物が死んだ事で平穏を取り戻す。

 ついさっきまで敵であった少年と一緒に真の敵を倒した事にヒカルは微笑んだ。

「竜史が兄貴だなんて信じられないな……」

 言われながらバシッと竜史は押された。

「ヘルズドラゴンを乗っ取るて事は、人間の姿でもその力を完全に使えるという事よ。やはり美が無い年寄りには何も出来ないようね」

『――!?』

 どこからともなく聞こえる声に一同は動揺した。

 そしてメイサは人生で二度目の絶望の瞬間を見た。

「た、竜……竜史―――――――――――――っ!」

 ズバ――――――と紫の閃光が竜史の右胸に大きな風穴を開けていた。

 蘭子はパン子にその光景を見せないように抱きしめ、気絶から目覚める虚無は瞠目し、絶叫を上げたメイサは膝から崩れ落ちる。右手を突き出している金髪の少女は死んだ光史朗の残骸で下半身を構築されていく。

「心臓を狙ったのに外れたわね。まぁいいわ。ヘルズドラゴンは準決勝の間にすでに私が食べていたのよ。竜史が虚無ラボラトリーで燃やしたのは私のダミー」

「……っ! まだ生きていたのね……白蓮真希。よく竜史の鼻に貴女の匂いがバレなかったわね」

「毒の霧で匂いを誤魔化したのよ。そこの匂いフェチに私の存在がバレたらまずいからねぇ。さんざん色んな獣と合成させられえた貴女の父親は私が処分してやったわよメイドさん」

「――貴様っ!」

「いい顔ねぇ……貴女も食べようかしら」

 欲望の根源である少女の人を超越した赤く鋭い瞳が笑う。




 真のラスボスが姿を現した。

 その諸悪の根源のような邪悪なオーラを纏わせる金髪の少女は常に他者に恋焦がれ、他者の真似をし、他者になりきる事で自分を成長させてきた欲望を具現化させたような強欲の女神。その少女は現在、キメラ細胞を体内に宿し同じ人間キメラである月下光史朗すら取り込んでいて誰の手にも負える存在ではない。この状況を打破するには、一ヶ月に渡って開催された月下武道大会の発端となる二人しか存在しない――。

「竜史! 竜史しっかりしなさい! 血が出すぎてる……止血だけでもしないと」

 突如メイド服の上着を脱ぎ捨て下着姿になり服を破り裂いてぐるぐると胴体に巻く。しかしその程度では血が止まるはずも無い。錯乱しそうになるメイサは蘭子やパン子と共に竜史の手当てをする。そして月の少女に懇願する。

「助けて……竜史を。みんなを助けて……」

「私を信じられるの?」

「信じる。だから竜史を助けて! ここは貴女じゃなきゃ勝てない!」

 すると、瀕死の竜史の手がメイサの手に触れる。息を吹き返す竜史にメイサは黙る。

「ヒカル、まだ全ての人間が避難できてない! 俺達がひきつけるぞ。みんなは避難を助けてくれ」

「こんな状況でも周りの心配か……」

 右胸の痛みを乗り超えて立ち上がる竜史は天を見上げた。

 まさかの復活に真希は細い唇に爬虫類のような長い下を這わせる。

 冷えていく身体に一つの覚悟を見出した黒髪の少年は赤い長ランを羽織る。

 その後姿のまま言った。母であり、姉であり、恋人のような存在である年上の少女に。

「……メイサ。ぶっちゃけ、メイドボンバーって技名ダセーし、そのツインテールかなり似合ってねーぞ。ロリ度ゼロの人間がツインテールとかねーよ」

 この状況にしてメイサはツインテールが似合わないと言われる。

 周囲の人間はあまりもの深手で竜史がとうとうイカレたと思い失笑する。

 カッと顔が赤くなるメイサは、

「なっ、何よ! 何で今更そんな事を……貴方だってサンライトスラッシュなんてカッコつけた名前でダサイわよ。何でこんな時にそんな話を……」

「こんな時だからさ。明日は東の空を眺めて目覚めろよ。目に見えた光を心に焼き付けておけ。お前の調教はMにとっては最高だったぜ!」

「……何言ってるの? ――貴方まさか! ――くっ!」

 瞬間、真希のオーラが周囲の全てを吸収するように展開し背中に黒い羽根が生えて上空へ舞い上がった。あまりにもの突風で武舞台の竜史とヒカル以外の人間は吹き飛ぶ。飛ばされた人間達は場外の壁に激突しそうになるが、虚無がそれを受け止める。

「終わるわよ……太陽も月も、この地球そのものを吸収してあげるわよ。この白蓮真希がねぇ!」

 ズズズズ……と真希の頭上にヘルズブラスターの三倍以上の闇を潜めた大いなる黒球を生み出す。

 これが地面に直撃すれば月下山脈の一角が沈むほどの大穴を空けてしまいこの周囲の地形は陥没して建物郡は倒壊するであろう。武舞台を見守る会場の人間達は二人の太陽と月の加護を受けた人間を信じた。

「このまま奴のエネルギーを使って永遠のサンライトになる。消えない花火を打ち上げられるぜ親父」

 メイサは遺言のような竜史の言葉を聴いて走り出す。

 それに気付く蘭子は追った。

「何やってんの! 邪魔になるわよ!?」

「あの子は死ぬつもりよ! なら私も……」

「人が生きる上での信念をかけた戦いに手出しは無用。たとえ死ぬ事になろうとね。これは誰の言葉だったかしら?」

 その言葉はメイサが蘭子に言った言葉だった。

 その言葉を思い出したメイサは自分の行動を恥じて鼻水と涙を一気に流して嗚咽した。

 その背中を優しくなでて蘭子は言う。

「勝つわよ、竜史は」

 台風のような風が会場を覆いつくし、最終局面を否応なく盛り上げる。

 ふと背後を振り返る竜史はつぶやく。

「空でお前達を見守ってるよ」

 そしてキッ! と戦士の顔になりメイサの破れたメイド服の布を頭に巻いた。

「太陽竜史一世一代の大仕事。俺のサンライトスラッシュに燃やしつくせないものはねぇ!」

「私のルナティックに消せぬものは無い!」

 すると真希の真上に太陽が生まれ、月と太陽が隣り合わせになる。

 サンライトとルナティックを全快にした二人は白夜を持ち飛んだ。

 上空には黒い翼の悪魔がドス黒い黒球を放った。

「ブラックホール・クラスターーーーーーーーッ!」

『サンライト・ルナ――スラーーーーーーーシュ!』

 オレンジとイエローが混ざるオーラとこの世の全ての闇を再現するブラックのオーラが激突する。

 確実に勝てるはずの一撃が互角という事に真希は叫ぶ。

「どこから? どこからそんな力が出てくるんだー!」

『人間が光を求める情熱……絆の力だ!』

 全てを出し切る竜史とヒカルの声が弾けた。

 互いの最後のオーラが激突し――空間を消滅させるように弾けた。


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