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サンライト  作者: 鬼京雅
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決勝戦開始

 決勝戦当日。

 月下武道大会ゲストルーム。

 そのゲストルームの名に相応しい金のかかっている装飾が否応なく目に入る室内にメイサはいた。視線の先には窓ガラスから武舞台を見下す黒髪のオールバックの男がジッポを片手にカチカチと音を鳴らしている。淡々とメイサはこの三ヶ月間の太陽竜史に関する全ての情報を報告していた。それを聞く月下光史朗は重厚な黒革のイスに腰掛けて微笑んだ。

「……激情に任せたままとはいえ自分の意思で太陽を生み出せる所まで来れば十分だ。三ヶ月間ご苦労だった」

「いえ、まだ大会は終わっておりません。まだ私の依頼は継続中です」

「もう降りてくれて構わんよ」

「じゃあ、月下との関係もこれまでですね――」

 カチッとメイサは何かの発信機のスイッチを押す。すると、遠くの山の方で爆発が起きて花火が上がる。その方角から察するに虚無ラボラトリーがある方角だった。

「……虚無ラボラトリーを爆発させたのか? お前と虚無はこの大会の中で通じてると思っていたんだがな」

 ほう……とさほど驚いた顔をしていない光史朗は虚無ラボラトリーが爆発した先を見ている。それはメイサが虚無と競合して仕込んだ罠だった。すでに月下の終焉を予感している虚無は月下に見切りをつけキメラの研究も放棄し、竜史の生み出す太陽のある世界に多大なる興味を持っていた。これによりヘルズドラゴンZは瓦礫にのまれ死亡する。長い夜明けが終わるかのような安堵の顔をするメイサは、

「キメラ実験のヘルズドラゴンにされた私の父親はこれで眠れたわ。決勝前の花火としてはいい演出でしょ?」

「虚無の奴……百年続く月下との関係を破談にしたか」

「貴方も悲しいという感情があるのね」

「私をヒカルのような化物と一緒にするな。私は今日この日。神になるのだからな」

 といい、赤い目を光らせ光史朗は嗤った。

 そして時刻は決勝の時間まで三十分を切った。




 月下武道大会決勝戦開始十五分前。

 一ヶ月の長きに渡り開催された武道大会もとうとう決勝の日を迎えた。

 準決勝二回戦で破壊された武舞台や会場設備も補修され以前と同じ状態に戻っている。

 大勢の会場の客は最後の試合を楽しむようにザワついていた。

 まあるい満月が人が充満する会場を照らし出し、その武舞台に一人の男が現れる。

 黒いスーツにオールバックの獣のように鋭く赤い眼光をした長身の男。

 この月下山脈と閉ざされた日本を影で支配する闇の帝王――月下光史朗。

「お集まりの皆様。月下グループ取締役社長の月下光史朗です。この一ヶ月間の長きに渡って開催されてきたこの武道大会もついに決勝を迎えられた事を心より感謝いたします。そして、この大会で私のグループは様々な企業を吸収して更に磐石な体制に進化しました。その集大成がこの日に我が娘である月下ヒカルが優勝をし、サンライトの少年を手に入れることです。これにより人類は百年ぶりの太陽を手にし、この月下の地から日本は世界に向けて変革していくのです。私の太陽計画はここから始まる……では皆様、ごゆっくり決勝戦をお楽しみ下さい」

 そして光史朗は堂々と武舞台から消えていく。

 マイクを片付けた月下学園の制服姿のパン子の横から月下ヒカルが現れる。すれ違う親子は視線だけを合わせ無言のまますれ違う。観客席の人々は月下の闇に大衆が気付いているにも関わらず平然と自分が聖者と言わんばかりの演説に吐き気がした。しかし、力なき者は月下に従わなくてはいけない世界の為に観客はせめてもの抵抗として自分の意思で太陽竜史を応援する。

 メイサと蘭子は今回は場外ではなく観客席の最前線で試合を見つめている。

 そのスピーチを聞き終わり、試合開始がもうすぐだというのに蘭子はまだ竜史が控え室にも会場にも来ていない事を知った。

「来てない……竜史が来てないわよ?」

「心配しなくてもいいわよ。虚無達と共にギリギリまで修行をしていた。虚無達は対戦相手であって敵じゃない。貴女だってそうだったでしょう?」

 そう言われて蘭子は黙る。口の中の生キャラメルを溶かすメイサは、

(まさかここまでかかって、覚醒が出来なかったの? あのダークな状態からの応用で正気を保てればサンライトの全ては竜史のコントロール化におかれる。早く来なさい……本当に失格に――)

 不安げな顔を一瞬して天を仰ぐ。

 まんまるの月が視界いっぱいに映し出され、目が黄色く染まる。

 目にゴミが入ったのかふと、その月の中心が赤くなる。

(……?)

 その赤い点は次第に大きくなっていき、呆然と一人空を見上げるメイサは口元をほころばせ周囲をキョロキョロする蘭子の頭を叩く。

 瞬間――流れ星のような一つの火の玉が武道大会会場の中央に降り立った。

 ザワついていた会場は一瞬にして音が無くなる。

 その黒髪の赤い特攻服を着た少年を全ての人間が見つめた。

 そのいでたちは赤の長ラン姿。背中に竜の刺繍が入り。サラシを巻き、赤いブーツをはいている奇抜な衣装を纏う太陽を具現化させたような存在。

 同じ舞台上にいる金髪の黄色いジャケットを着た少女は明らかに今までとは違う目の前の少年に興奮を覚える。口に含むチュッパチャップスのコーラ味を感じ、

「……遅いぞ竜史。不戦勝になる所だ」

「ヒーローは遅れてやってくるもんさ……燃えるぜ!」

 ブオオオオオッ! と竜史の身体の奥底からサンライトが湧き上がり髪がオレンジに逆立つ。そして、月を覆い尽くすような太陽がサンサンと輝いた。そしてパン子は迷い無く叫んだ。

「月下武道大会・決勝戦を開始します☆」




 戦闘の開始直後に竜史はサンライトスラッシュを放つ――。

 メイサ達の隣に座り虚無と白蓮三騎衆は試合を観覧する。

 三発目のスラッシュを放つ姿を見てメイサは言う。

「どう、竜史の仕上がりは?」

「ボロボロで汗と血にまみれた服は変えたけど、満身創痍なのは隠せてないわね。相変わらず欲求不満の面様だわ。相手に切り札がない限り五分五分に近い状態にはある」

「そのようね。まだオーラが安定してないようだけど」

「それはそうのち解消するけど、月下光史朗が何かしでかそうとしたら動くわよ。あの男の太陽計画は世界を消す可能性があるって竜史の覚醒を見たこの三日間でわかった。次にロストサンライトのような出来事があれば地球は間違いなく消える」

「わかったわ。でもまだ心配するには早い。試合を見届けましょう」

 一人ゲストルームで武舞台を見下す光史朗を一瞬みて竜史を見る。

 サンライトスラッシュは十発放たれるがオレンジの煙の中にいるヒカルは大きなダメージを受けている感じはしない。全てルナティックの消滅の力で相殺していた。それを見ている蘭子は息を飲む。

「太陽の加護を受ける真のスラッシュなのに効いてない?」

「今の十発は今までの未完成のサンライトスラッシュ。ここまでは溢れるパワーを発散させるための戦いのようね。竜史にはまるで疲れが無い」

 答えるメイサはヒカルと会話をする竜史の背中をたくましく感じた。

 激突が止んだ二人は大きく息を吐き互いの視線をぶつけ合っていた。

「戦ってんだから飴を舐めんの止めろ」

「そんな事はお前に関係あるのか? 三ヶ月前のあの日のようにこのチュッパをお前の口に突っ込んで……」

 竜史の運命が決まった三ヶ月前の月下の森の崖での出来事を思い出す。

 父親を殺され、足で頭を踏みつけられる竜史はこの金髪の少女の咥えていたチュッパチャップスを無理矢理口の中に押し込まれ激しい屈辱を感じた。それをまた再現しようとヒカルはチュッパの棒をつかもうとするが、その手は空を切る。

「……?」

 ヘッと笑う竜史の微笑でヒカルは全てを察した。サンライトスラッシュの応酬の中、炎で棒を消していたのである。

「棒が無くなったら、直接キスでもして突っ込んでくれんのか?」

「貴様の棒も消してやるよ」

 瞬間的に繰り出された刃は首筋を完璧にとらえていた。一段階スピードが上がった剣速に対応できず軽く首筋を斬られる。倒れながらも足首を狙い剣を振るう。しかし、その剣は白いミュールをはいた足で踏まれる。地面に倒れる竜史は自分を突き刺す黄色い閃光を見た――。

「覇翔月破っ!」

「足が臭いんだよっ!」

 ガッ! と相手を消滅へ誘う突きを白羽取りで防いだ。オレンジとイエローのオーラが互いの気合と共に螺旋状に天へ伸びていく。歯を食いしばる二人は全てを吐き出すように叫ぶ。

『うおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーっ』

 バシュウ! とオーラが弾け、竜史は起き上がるなる左右にステップを踏み一気に斬りかかかる。まるでギアが上がったかのようにスピードと剣圧が増す竜史にヒカルは防戦になった。

(スピードが上がった? なるほどな――)

 目を見開くヒカルに恐怖を感じた竜史はその目をそらした隙をつかれ回し蹴りをくらい上空に飛ばされ、さらに追撃されて地面に叩き落される。

 砂煙が上がり、武舞台に多少の穴があく。

 パン子がカウントを取るが、スッと竜史はノーダメージのように立ち上がる。

「あー、スッキリした。これで安定してきたぜ。ウオーミングアップ終わり……そしてこいつが本物の――」

 研ぎ澄まされた京雅にサンライトが注ぎ込まれ究極的な炎の一閃が振り抜かれる。

 目を見開くヒカルは覇翔月破でその閃光を貫こうと突っ込む。

 ブフォ! と両者のオーラが互いを食い尽くすように激突し弾ける。


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