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サンライト  作者: 鬼京雅
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五幕~サンライトとルナティック~

 月下武道大会準決勝翌日。

 その日、蘭子は自分の預金通帳を見て硬直していた。

 月下銀行の自動支払機の前で立ち尽くす姿に背後にいる客達は早くしろと言わんばかりに手に持つキャッシュカードや預金通帳の音を立てる。その最後尾に立つパン子は十円しか入っていない預金通帳を握り締めていた。茫然自失の蘭子は病人が如くフラフラと銀行を出て行く。

「お……お金が……お金が……」

 両目が完全に¥になる蘭子は今一度預金通帳に記される昨日の武道大会の賭けで買った入金額の桁を確認する。一つ二つ三つ……と桁を数えて行くと、その桁は何度数えても0が九個ある。それに頭の1をプラスした額は――。

「十億だ……」

 全財産であった十万円が十億に変化している事に改めて驚愕する。入院するメイサに賭けておいてと言われ、蘭子は竜史の勝利を信じる願掛けとして賭けた。何気ない気持ちで買ったチケットはまるでビギナーズラックの流れに乗り人格が変貌してしまうような額ににまで膨れ上がった。

 冷や汗が止まらない蘭子はこの事実をメイサが一番よく知っていて、あの女ならお金の事にうるさそうなイメージが悪魔のように浮かんできた為、超特急で月下病院に向かった。銀行から出てきたパン子はげっそりとした顔をしながら走り去る蘭子の後姿を見る。

「……はぁ……蘭子も昨日の試合の賭けに負けたのかな? やっぱ竜坊に賭けておくべきだった。審判の給与入ったら決勝では竜坊に全財産を賭けよ……」

 溜息をつきフラフラと歩くパン子は道を歩く猫を見てよだれを垂らした。





 月下山脈中腹の森の一角で赤い作務衣を着た一人の少年が天を仰ぎ倒れている。

 大汗をかいて息は絶え絶えで体力は限界を迎えていた。周囲の地面は大きな穴があいたり、一直線に大地が焼かれた跡などが無数にありこの少年がやった事が伺えた。ムクッと起き上がり昨日を回想する。

(……サンライトが暴走して黒い太陽が生まれた時、虚無は自分だけを守り会場を守る力を使わなければ勝てたはず。昨日は勝ったんじゃない……勝たされたんだ)

 ガスッ! と地面に拳を叩きつけて思う。激しい騒音が鳴り止んだからか、数匹の雀が自分の棲家を捜すように周囲を飛んで地面に降りる。そして顔を叩き、

「やれる事はやった。後は勝つだけだ。っても、自分の意思で太陽を生み出すほどのコントロールはまだ出来ない。試合ギリギリまで一人で頑張るしかないな」

「一人で頑張っても厳しいんじゃない?」

「? ――!?」

 気が付くと真後ろに昨日死闘を繰り広げたばかりの虚無隼人がいた。

 半分焼けてしまった長い紙はショートに整えられ、白くきらびやかな衣装は新調したのか元の通りである。唐突に突きつけられた右手は竜史の額の寸前まで近づいている。

(……殺るつもりか?)

 一瞬で昨日の緊張感が甦り、ほぼ使い果たしているサンライトのオーラを右手に集中しようとする。

 フフフ……と虚無は昨日と同じ殺気を竜史に向けている。

 一匹の雀が飛び立った刹那――。

「……お、お前等は白蓮三騎衆……」

 そこには第四試合で戦った白蓮三騎衆がいた。今までの対戦相手だった人間を呼んだのはメイサからの依頼だという。昨日の試合のように憎しみで覚醒させたまま戦うと自分だけじゃなく、この地球そのものが死ぬ。だから、今までの戦いの中で竜史と心と身体の深い係わり合いがあったこの二組が竜史のサンライトで太陽をコントロールし安定させる為に調教役として現れた。

「メイサの奴……これが最後の調教か。怪我をしてるとはいえ自分じゃなく他人に任せるなんてとんでもねードSだぜ」

 ムラムラッ……とメイサとの二ヶ月間に渡る調教の日々を思い返し微笑む。

 今までの敵が憎しみでない太陽を生み出す修行を手伝う事になった。

 早速、白蓮三騎衆は風雷戦牙陣を使い電撃を纏う竜巻を生み出す。

 懐から一枚のディスクを取り出した虚無は、

「貴方の淫乱調教物のAVコレクションは没収したわよ。決勝の前くらい下半身のエネルギーをサンライトに回しなさい。でないと死ぬ」

 その言葉で竜史は膝を付いて崩れ落ちた。

 手足は振るえ、目に涙を浮かべる。

「ふざけんじゃねぇ! それじゃあ俺は決勝前にストレスで死ぬぞ?」

「あんた……どーしょもないわ」

 虚無は心底この少年を軽蔑しつつも何とかしてやらねばと思った。

 そして互いの全力をかけた修行が始まる。

 すでにサンライトを使い果たしていた竜史のの目は血走り、正気を保てているのかはわからない。だが追い込んで、追い込んで、追い込む以外に短期間で強くなる術は無い。限界を引き出させながらも意識を保たせてサンライトのコントロールをものにしなければ決勝で勝つことは不可能だからである。

 ジワッ……と黒いオーラを発する竜史の肌は褐色になり、昨日と同じ黒い太陽を生み出した暴走状態と同じになる。

「……ヴアアアアアアアアッ!」

『――!?』

 その場の全員が凍り付く。虚無の脳裏にはデジャブのように燃やされた腕を思い出した。

「――下がりなさい! ダークサンライトが発動する!」

 それを聞いた白蓮三騎衆は一気に虚無の背後に後退する。

 正気を失う竜史は頭上に生み出された黒い太陽から両手を突き上げオーラを吸収する。

 一気に還元されていくオーラに虚無は昨日と同じ狂喜と絶望を感じた。

 しかし、殺意むき出しだった竜史のオーラがオレンジに変化しだし真上を見上げる虚無は驚く。

「この光は――」


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