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サンライト  作者: 鬼京雅
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死闘の終焉

 空に浮かぶ黒い太陽に大会の会場の人間は戦慄する。

 ギラギラと人間の闇を具現化したような闇の光に狂喜と畏怖を混ぜ合わせた面妖な顔付きで虚無は上空の邪悪を瞳孔を広げて見る。

「あれが世界を照らす伝説の太陽ならとんだ光だわ……全力を出さないと死ぬわね」

 竜史は仲間を失った悲しみや怒りを爆発させながら我を失う。

 黒い太陽の力を得て身体の負傷は全て回復し、激烈に虚無とぶつかり合う。

 それは剣技でも体術でもなく人間の根幹をなす野生の本能のぶつかり合い。野獣と野獣の生存をかけた戦い――。

『……』

 すでに武道大会の枠を超えた戦いに観客達も恐怖で身体が動かない。

 殴り――斬られ――蹴り――突き刺す――。

 お互いは自分の傷さえも快感と力を上げる麻薬でしかなく、相手の傷よりも自分の傷を喜ぶように笑い合う。

「それほどに仲間の死が許せないの? あの小娘の死は貴方のせいなのよ。単純に貴方が弱いのが悪い。この大会に参加する者は自分が死ぬ可能性をふまえてでるのはわかってるはずよ……熱い……熱いわああああーーーっ!」

 上空で真っ黒な太陽はひたすらに竜史にオーラを注ぎ込み、会場を駆け巡るあまりにもの熱流に観客は次々に倒れていく。真っ黒な闇そのものである竜史は叫ぶ。

「ヴアアアアアアアアアアアア――ッ!」

「飛んだ? なるほどね」

 上空に舞い上がる竜史は黒い太陽を背にして刀を振りかぶる。場外に出るというのは虚無のプライドが許さない為にその場から動く事はできない。究極的な真のサンライトスラッシュが武舞台に炸裂し、武舞台が一瞬にして灰燼と化し激震が走る。

「ひえ~! うわあっ!」

 女子トイレで用を足し終えた審判は突然の上からの振動に早く会場に戻らねばとペーパーに手を伸ばす。すると、真上から落ちてきた人間に押しつぶされ気絶した。




 シュウウウ……ッと黒い霧が晴れていきマグマが流れた後のようなこまかなデコボコが蠢いている地面の上に二人の人間がいた。

 武舞台に立つのは黒髪に赤い特攻服の少年。そして白い髪の半分を消失し、肌は焼けてきらびやかな衣服もズボンしか残っていない悪魔のオネエ。そのオネエは絶望を超えた瞳で天の黒い太陽を眺めていた。

「耐えた……わよ。髪も半分焼けて肌もボロボロで、美しさのかけらもないけど耐えた。ここまでになったのは久しぶり……」

 ギロリと虚無は竜史を見る。

 今の一撃でほぼ全ての体力を失う竜史はまた太陽の力を得ようと天に京雅をかざす。

 疲労困憊、慢心相違の二人は互いを見つめ荒い呼吸を繰り返す。

 残るグラビティを右拳に集める虚無と黒い太陽からオーラを刃に収束させる竜史。

『……』

 睨みあう二人の間にあるのは相手を屠る一心のみ。

 二人の男の興奮が高まるに連れて会場の興奮も一気に高まっていき――。

「竜史っ! あんたの求める太陽はこんな暗いの? そんなんじゃ負けるわよ!」

 ふと、竜史の黒に染まる心に一筋の白い絵の具がバシャッ! とまかれた。

 それは竜史の求めていた暖かい光であり、太陽そのものだった。

 その黒く染まる瞳に茶髪のサイドポニーの見慣れた少女の姿が映る。

「――!? 何だこれは……蘭……子?」

 死んだはずの蘭子が場外にパン子と共におり、暴走状態の竜史は意識を取り戻す。

「黒い太陽は出てるし、やけに日焼けしわね竜史。ガン黒はあんたに似合わないわよ。お父さんも悲しむわ」

 ポイッと蘭子は竜史に借りていたペンダントを投げる。それを受け取ると、ペンダントがカパッと開いて家族の写真が現れる。驚く竜史はそれに見入る。

「これは親父に母さんに俺……誰だこの黒髪の赤ん坊は? 俺の妹?」

 生きていた蘭子に投げられたペンダントの中身が開放され完全に目が覚める。父親に母親に自分。それにいないと思っていた妹もいる。黒い太陽が赤い太陽へと戻ったと同時に、竜史の心も安定を取り戻す。それを見た虚無は優しく微笑んだ。

「……いい暖かさね。楽しめそうだわ」

 黒い太陽を抑え込んだ力の消費で残る力も少ない虚無は体細胞をいじり消失した左腕を生み出した。更に体力が減り咳き込む。次第に黒い太陽は赤い太陽に変化していき竜史の髪がオレンジ色に染まる。その竜史は時が止まるように今だペンダントの写真を見ていた。

(親父はこういった時の為にこのペンダントを渡したのか……助かった。憎しみに囚われこの世界を燃やす所だった)

 その瞬間、一つの殺気が竜史のオレンジの髪を揺らす。

「まだ試合中よ。私とのデートを楽しんでちょうだい」

「……そうだったな。とっとと終わらせるか。男とデートなんてしたくなんからな!」

 混沌を極めた準決勝の最終幕が切って落とされた――。




「とうとう完成したぜ。白蓮三騎衆の三身一体攻撃からヒントを得て、この前のヘルズドラゴンZ戦で失敗したこの技がな」

「……何? 刀を旋回させて炎を生み出してる?」

「サンライトボルテクス」

 サアァァ……と竜史の頭上で回転する刀は炎を纏い、竜巻のように広がって行く。やがて竜史の姿が渦の中に消え、その炎の竜巻を貫通させる勢いのグラビィティナイフを投げる。パチッ! と火花が弾けナイフは消滅した。

「あーら、やるじゃない。暴走して引き出した力を上手く使えてるわねぇ……根性比べといこうじゃないの」

 真っ黒な重力のオーラを展開した虚無は長い白髪をゴムでひとまとめにし、相撲の四股を踏んで両手を前に差し出す。サンライトボルテクスは武舞台の床岩を削りながら周囲に広がっていき虚無と激突した。バババババッ! と必死の形相の虚無はこの炎の渦をかき消そうと力技で攻める。だが、中々その竜巻は勢いを弱めない。先の暴走で体力の大半を失っている虚無はもう竜史と互角の力しか残っていない。会場の全てはこの戦いの勝者がどちらかわからない為に興奮し、ゲストルームにいる各企業の社長達は青ざめた顔をしていた。

「ぐうううっ! オネエの底力はこんなもんじゃ……!」

 衰えを知らぬ炎の竜巻に冷や汗を浮かべる虚無は、

(この竜巻をかき消せる力はもうないわね……何か他の方法で竜巻を……竜巻?)

 ふと、何か考えが浮かんだ虚無は突如背後に後退し、ボロボロになる両手にもう一度グラビィティを纏い上空へ飛んだ。その瞳は炎の竜巻の中に潜む竜史を見つける。

「――その技は台風と同じ。頭上から責められたら一発で終わりよ!」

「欠点は長所にもなるんだぜ! サンライトドリル!」

 頭上の悪夢に対し、竜史は展開していたサンライトボルテクスを自分に収束させ真上に鋭利な炎のドリルを生み出した。虚無のグラビィティナックルとサンライトドリルがオレンジとブラックの火花を散らす。それをVIP席より見つめるヒカルは驚き、光史朗は狂喜した。二人の全力の一撃は突風となって会場内を駆け巡り審判は風圧で場外を転がり蘭子に助けられる。

「……完全に覚醒した。これは楽しみな決勝になるなヒカル。楽しみにしてるぞ」

「は、はい。お父様!」

 久しぶりの父親の自分を期待する言葉にヒカルは喜びVIPルームを後にする光史朗を見送る。

 オーラの粒子が舞う武舞台は二人の男が立ち尽くしている。

 一人はもう立っているのも限界な黒髪の少年。

 もう一人は拳を振り上げる白髪の男。両者は数秒見つめあい――。

「参ったわ」

「? 参った……」

 拳を上空にかざしたまま竜史にそう言った。

 それを聞いた審判は武舞台によじ登り虚無の降参を認め、竜史の勝利を宣言した。場外で見守っていた蘭子は安堵し、ぺたりと地面に座り込む。

 会場の女子生徒達は物凄い激闘をした二人を称え、竜史に対する憎しみはすでになくなっていた。すでに自分達が置かれる状況の全ては月下グループが元凶であると確信する生徒達はこのままサンライトが月下に利用されたら世界は月下の家畜に成り下がると思い竜史を応援した。祝福の歓声に気持ちが安らぐ竜史は目の前の男を見据える。

「いいのか? 虚無?」

 その竜史の熱い眼差しに虚無は頷き、

「そこまで理解してれば結構よ。決勝戦、負けたら童貞いただくわよ!」

「わ、わかった! ぜ、絶対に! 絶対に勝つ! 勝つぞ!」

 焦る竜史は全身全霊で否定する。フフフと笑う虚無はほっぺにキスをして去っていく。

(太陽は見たかったけどブラックじゃない。決勝に期待してるわよ)

 そして虚無は会場から姿を消す。

 やがてまばゆい太陽が消えていき、まあるい満月が姿を現した。

 仲間に囲まれている竜史をゲストルームから見つめるヒカルは左の拳を窓ガラスにたたきつける。

 一ヶ月に渡る長い武道大会もとうとう終わりを迎え決勝のカードは決定した。

 太陽竜史VS月下ヒカル――。

 それぞれの夜を過ごし、三日後に控える決勝戦を頭に描いて眠りについた。


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