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サンライト  作者: 鬼京雅
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虚無ラボラトリー

 虚無が試合会場に現れず試合が無くなった為、竜史は武道会場を抜け出し虚無ラボラトリーがある森の周辺まで歩いて来ていた。試合観戦をしない竜史が向かう先はここしかない。自分との試合を楽しみにしていた虚無が試合に来られないほどの自体が起こっているからである――。

「……この前侵入した穴は塞がれてるけど、内部はほとんど清掃されてないな。流石に虚無一人じゃあ研究だけで手一杯か」

 前回のラボでの戦いを思い出しながら竜史は気配を消さずに歩く。

 まるで気が付いてほしいかのように、虚無を誘っているかのように堂々と周囲を見て回る。そして途中で仮面騎士が現れた事を思い出すと、足に般若の仮面がぶつかる。

「この般若の仮面は仮面騎士の仮面……そういえばあの時、仮面騎士は自分の仮面を落としてた」

 クンクンと鋭い嗅覚でこの般若の仮面の裏の匂いを嗅ぐ。すると口の部分に唾液の匂いが残っており、それはやけにキャラメルの匂いがした。

(……濃厚なキャラメルの中にかすかな塩分の匂い。これは……これはまさか仮面騎士は……!)

 瞬間、一つの殺気が竜史の肌をくすぐる。

 この殺気には覚えがある。

 ほんの一時間前に父親が死んだ崖で受けた殺気と全く同じ陰鬱とした不快な殺気だからである。薄暗い通路の先にいる影の外側の輪郭を見据え言う。

「……隠れても無駄だぞ真希。お前の匂いは完璧に俺の鼻が記憶している。前よりも醜悪な悪女の匂いになったからバレバレだ」

「お褒めの言葉ありがとう太陽竜史。今度は匂い対策もしないといけないわね。貴方の飼っていた猫の匂いでもしたかしら?」

「……最近シロックを見ないと思ったらお前に吸収されてたか」

 ギリッと歯を噛み締め竜史はシロックの姿を思い出す。

「殺しはしたくないが、お前は生かしてはおけない。ここで完全に消滅させる」

 ヒュン! と仮面を投げつけ真希はそれを弾く。すると、竜史のサンライトスラッシュが容赦なく叩き込まれる。半身がドロドロに溶ける身体に苦痛を感じながら真希は再生していく。その光景をただ竜史は見つめる。

「パワーアップしたようには思えないな。まだ回復するにはエサが足りないのか?」

「そうね……今は五割くらいかしら。まだまだ進化するわよ。いずれ貴方も響姫さんも吸収してあげるわ」

「期待してるぜ。そんな機会があればな」

 そして二人の間に転がる般若の面を指差し、

「仮面騎士の正体を教えてあげようか?」

「……今まで仮面騎士の試合のたびにいなかった異常な強さを持つ人間が一人いるのを知っている。おそらく正体はそいつだろ」

「意外に聡いのね。二回戦で戦った時とは大違い」

「この三ヶ月は俺の人生を変えた三ヶ月だ。お前ごときに語られる筋合いは無い」

「その黒さ……結構好きよ。大切なものを壊したら、貴方は面白い事になりそうね」

 アハハハハハハッ! と狂喜の笑みを浮かべ嗤う。

 怒りが沸点に達している竜史は意外にも冷静でいられた。

 このキメラの能力を持つ女には何を話しても通じないのは今までの戦いで証明されている。すでに人間を超えて獣である存在に対して出来る事はこの地球から葬り去る事だけである。スッと京雅を下段に構える竜史は、

「言い残す事はあるか? 次の一撃で完全に焼き尽くす」

「言い残す事ね……なら、明日に戦う虚無の話をしてあげる。月下と虚無の関係性をね」

 虚無隼人の祖先である虚無学人はロストサンライトが起きた百年前の瞬間、キメラの開発に成功した。太陽の消失により世界恐慌が起こる中、戦乱状態の中で上手く立ち回った月下グループの開祖はキメラを生み出した虚無学人を受け入れ、磁場により鎖国された日本を支配する計画に出る。そして更に強いキメラを生み出し光税の徴収を磐石なものにする為、その為のラボラトリーが広大な月下山脈の外れの地下に作られた。

 それと同時期に恐慌により親を失った孤児の中に月の加護を宿したルナティックの少女が現れ、月とキメラという二つの切り札を得た月下グループは親を無くした孤児や、食い扶持に溢れた家族から金で人身取引をして人材育成に手をかける。その内訳は今の月下学園の基礎と同じ家の相続権の無い次女、三女が集り鍛えられた。そして月下グループは男が生まれにくい世界環境の中で女を中心にした勢力として日本の全てを建て直し、今の支配体制が築かれた――。

「ロストサンライトで男が生まれずらくなったからといって、月下は男が生まれた家系からは男を買わなかったのか?」

「そうよ。男は今の世界では貴重な次世代を繋ぐ種。男を強制的に金で買わなくても、一人の女として教育した月下の女の子共を産ませれば結果的に月下との関係性が否応なく生まれ、その男は月下に吸収される。そこで有り余る女に子種を孕ませていけば男も潤い、月下も次世代の兵隊が生まれ潤うのよ」

 それを知った竜史は月下グループではなく、自分の太陽をますます早く出現させないとならない事を思い知る。この百年はサンライトの能力を持つ者が現れなかったが、それは自分という運命の偶然は必然だと感じた。今のこの歪んだ世界の秩序は、サンライトを極め太陽を生み出して変えるしか人類の先が無いのである。

「……遺言は聞いた。早く寝たいんだ。終わるぞ」

「終わらないわよ。全ては始まるの。始まらせるの。この私、マキメラである白蓮真希がね」

「マキメラ……か。すでに相手にならん。ノラドッグ程度じゃ、いいエサにならなかったようだ。わざわざ俺の前に現れなければ逃げられたものを」

「お楽しみは……」

「寝言は寝て言え」

 ブオオオオッ! と真希は全快のサンライトスラッシュで燃え尽きた。

 そしてヘルズドラゴンZの存在を確認する。

(これがメイサの父親……ひどい事をするもんだ。虚無隼人。奴は必ず俺が倒す)

 大会終了まではここから出られない程の暗示をかけている為に動いても暴れてもこのラボからは出る事は無い。大会の終了後に太陽の光で葬ってやろうと考え竜史はラボを後にする。そして、終了したはずの準決勝の行方は壮絶な展開を迎えていた。



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