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サンライト  作者: 鬼京雅
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四幕~黒い光~

 とうとう月下武道大会は準決勝まで来た。

 準決勝Aブロックの組み合わせは太陽竜史VS虚無隼人。

 Bブロックは月下響姫VS仮面騎士――。

 ここからは今までとは一段も二段も上の戦いのレベルになる。ここまでギリギリで勝ち上がってきた竜史にとっては正念場になる戦いであった。しかし竜史は次の戦いを楽しみにしていた。

 この大会に参加する理由が強制的とはいえ、花火屋の息子である竜史は祭り事が好きなのである。花火では裏方だが、今は表の舞台役者。圧倒的実力差のある準決勝開始前に父親である陽史朗が死んだ崖にまで来ていた。

「久しぶりだな親父……ってここは墓じゃねぇけど勘弁してくれ」

 崖の先端付近に立つ竜史は独り言を言い風が流れ行く。その瞳は闇が永遠に続いていく遠くの方角をじっと眺めている。

「色々とあったけど準決勝までこれた。仲間も出来たし、人間として成長できたと思う。今日の戦いはブックメーカーだと俺の負けが十割近いが、負けるつもりは無い。信じてくれる仲間がいるからな。復讐という気持ちだけじゃなくて勝ちたいんだ。自分自身に」

 やってやれ竜史……と陽史朗が言ってくれているような気がして微笑む。と、背後に魔獣のような気配が濃厚な殺意を堂々と向けている存在がいた。

(殺気? ――誰だ?)

 しかし、周囲には一匹の黒猫しかいない。

 最近ホテルに現れなくなった白猫のシロックに似ているが、色が違う為に竜史は試合前の緊張が呼ぶ感覚だろうと思い大きく息を吐いた。

「親父、行ってくるぜ。母さんと一緒に見守っていてくれ」

 陽史朗の遺品であるペンダントを握りしめ、一人の少年は赤い特攻服の裾をはためかせ威風堂々の姿で月下武道大会会場へ向かった。





 丸い満月が月下武道会場を悠然と照らしている――。

 超満員の会場内は試合に敗れた敗者も、今まで傍観しかしてこなかった人間達も準決勝のカードからは最高の試合が見られると思い声援を送る。サンライトの能力は存在しない太陽を生み出す事の出来る稀有な力であり、虚無隼人は日本中にその力と科学力が知れ渡る悪魔のオネエである。

 誰もがこの試合において二ヶ月前に現れた太陽を拝む事が出来ると信じ、そして虚無の力はその太陽さえも凌駕するのか? という疑問や憶測が観客のボルテージを高めて行く。武舞台に立つ竜史は赤い特攻服の襟を立て、顔を両手で叩く。そして手の平に唾を吐きメイサの父親の形見である京雅の目釘を湿らせ刀の柄が戦闘中に抜けないようにする。メインモニターを見上げ、真っ黒な画面を見つめて思う。

(遅いな……もう試合開始時間だぞ。なのに虚無もパン子も現れない。何かのトラブルか……?)

 すると竜史の耳にだけでは無く会場全体に一人の男の声が響く。

 その声はやや枯れた渋い声で誰もが聞いた事のある重圧のある音。

 日本を影ながら支配する月下グループの社長・月下光史朗の声だった。

 光史朗の話で会場はどよめき、静まり返る。

「……どうやら虚無が来てないようだ。我々も虚無の居場所を探しているが、まだ足取りがつかめていない。よって大会委員長の私、月下光史朗の命により月下ヒカルと仮面騎士の試合を開催する」

『――!』

 その言葉に会場はどよめき、ヒカルと仮面騎士は互いを見た。観客はBブロックの試合も月下の娘と謎の仮面騎士はどちらが強いのかと疑問に思っていたから試合が前後してもあまり問題ではなかった。竜史は虚無の居場所を想像した。

(おそらく虚無ラボラトリーにいる。そして、そこで何かがあった……それ以外に考えられない。この試合はあいつも楽しみにしていた試合だからな)

 そして竜史はヒカルと仮面騎士を見た。武舞台場外にいる響姫は観客席入口にいる仮面騎士を見据える。スタタッと光史朗の話を聞いたパン子がポニーテールにシュシュの制服を着た装いで現れ、会場の興奮が更に高まる中、瞳を笑わせるヒカルは言う。

「……という父上の提案だ。受けるか? 仮面騎士よ?」

「受けるかどうかの選択肢は無いだろう。それが月下のやり方だ。そしてそれが月下の敗因となる」

「まるで月下に恨みを持つような口調だな。素性を隠し大会に参加して月下グループに打撃を与えるつもりか?」

「打撃? 打撃など手ぬるい。月下グループは壊滅させる!」

「ほう、面白い」

 言った途端、仮面騎士は武舞台まで飛んだ。同時に、互いの刃が激突する。試合開始に慌てふためくパン子は新たに場外に設営された審判席で試合開始を宣言した。その光景を見下す の煙草の紫煙が宙に拡散した。




 その最中、虚無ラボラトリー最下層では虚無隼人が丹精を込めて生み出したキメラ・ヘルズドラゴンZが竜史から受けた傷が完治せずに治療カプセルの中で暴れていた。カプセル内に何種類かの鎮静液を注入し、暴走を止めようとするがあまり効き目が無い。

「多少は効いてるけど、完全ではないわね。太陽竜史のサンライトスラッシュのダメージはキメラにとって天敵のようね。試合にも間に合わないし、最悪だわ」

 虚無が予定されていた準決勝に来れなかったのはこのヘルズドラゴンZを安定させる為に動けないからであった。光税を得る為の商売道具であるこのキメラを失うわけにはいかず、月下光史朗は虚無と竜史の試合の延期をし、ヒカルと仮面騎士の試合を繰り上げた。すると、虚無の背後に金髪の長い髪を揺らすヒカルににている少女が現れた。

「ご機嫌麗しゅう、虚無隼人」

「貴女、まさか白蓮真希? キメラに呑み込まれ月下学園で死んだはずじゃ……」

「死ぬ寸前に近くにいた猫を取り込んで助かったの。その後、人間はバレると不味いからノラドッグを食料にしてここまで回復した。学園の生徒がノラドッグ狩をしてたから食べても問題にならなくて良かったわ」

「その生命力……カッパライダーのキメラ人体実験は貴女に完全に引き継がれたようね。今度貴女のデータを取るから」

「気が向いたらお願いするわ。どうやら貴方と竜史の試合は明日に延期になったわよ。だからヘルズドラゴンの調整に集中して構わないらしいわよ」

「そう、良かった。サンライトは私が陵辱して嬲り殺さなきゃならないからねぇ……フフフ」

 まるで竜史を人間とも思っていない虚無は必ず殺すという怒りが見え隠れしながらカプセル内のヘルズドラゴンを見据える。やがて暴れたのに疲れたのか眠りだした。

「これで一安心。一度眠れば傷は必ず回復する。後はほおっておけばいいわ。これで一月は面倒見なくていいわ。さーて、私も試合の見学に行こうかしら」

「行くなら会場じゃなくVIPに行きなさいよ。じゃなきゃ観客は混乱するだろうから」

「貴女に言われなくてもわかってるわよ。あー、殺したい」

 そうつぶやき、虚無はラボラトリーを後にする。

 それを見送る真希はれおぉ……と蛇のように長く先のわれた舌先を出し、

「殺したいのは私の方よ。食べたい……食べたいいいーーーっ!」

 ヘルズドラゴンZのカプセルに抱きつく真希は必死に叫んだ。

 虚無ラボラトリーで飼われている魔獣は目の前の一体以外、全て死んでいた。獣のような呻き声を上げる真希の声がラボラトリー内に響いた。




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